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 システム開発中止で、今年3月期決算に50億円の特別損失を計上した東京ガス。同社は今年4月、IT部門改革に踏み切った。システム構築プロジェクトの利用部門への分権が進みすぎたとの反省から、IT部門を本部へ格上げすると同時にCIOを設置し、ITガバナンスを強化する。

 東京ガスは4月、従来のIT部門である「情報通信部」を廃止し、「IT本部」へと格上げした。IT本部は、「ホームサービス本部」や「エネルギー営業本部」などの利用部門と同格。部員数112人を維持し、全社の情報化戦略の立案や、システムの構築、活用促進などを一手に引き受ける。

 旧来の情報通信部は、「ビジネスサービス本部」傘下の1部門で、基幹である契約管理システム「CIS」の開発・保守・運用が主な業務だった。「情報化戦略の立案は、企画本部が担っており、IT部門が全社の情報化をコントロールする役目や発言権を持っていたわけではなかった」(東京ガスの山上伸IT本部 IT活用推進部長)。

 今後、IT本部は戦略立案に加え、「利用部門のサービス満足度」や「ITSS(ITスキル標準)に基づく人材育成計画の達成度」など、新たな評価指標を導入(表)。各指標で数値目標を明確し、部門強化を進めていく。

表 東京ガスが4月から実施するIT部門の主な強化策
表 東京ガスが4月から実施するIT部門の主な強化策

 同時に、同社として初めてCIO(最高情報責任者)を設置した。初代CIOであるIT本部長には、営業部門出身の鏑木正常務執行役員が就任。専任のCIOを置き、社内での発言力を高める。
 現時点における、IT本部の最大の課題は、システムの企画力、プロジェクトマネジメント力の強化だ。これを実現するため、IT本部がシステム構築プロジェクトの案件すべてを掌握し、企画、要件定義、開発、テストといった各段階で、作業内容や進捗状況を逐一チェックするルールを導入する。

 2002年から東京ガスは、システム構築スピードを高めるため、“分権化”と称して、システム企画・開発といった作業を利用部門に任せる体制を敷いた。その結果、「IT部門がプロジェクトに責任を負わないケースが増え、システムのQCD(品質・コスト・デリバリ)が全体的に低下してきた」(山上部長)。 50億円の特別損失という形で終わったシステムの開発中止も、過度に進んだ分権化と無関係ではない。

 外部のITベンダーに頼らず、IT本部主導でシステムを構築する力をつけるため、システム子会社2社の位置付けも見直した。東京ガスのシステム開発・保守や外販事業を手がける「ティージー情報ネットワーク(TGアイネット、420人)」と、東京ガス向けのシステム運用を担当する「ティージー・アイティーサービス(67人)」の2社がそれ。今後は原則として東京ガス・グループの情報化支援に専念させる。

 「TGアイネットの外販事業の売上高比率は約30%で中途半端。今後も外販事業は継続するが、外部の仕事で稼ぐための強化はさせない。グループ支援に向けたITスキルの向上に注力してもらう」(山上部長)。来春には2社を統合する計画だ。