PR

 青森市が、昨年10月に破綻した住民記録システムの開発を、再スタートさせた。第三セクターによるマルチベンダー方式をあきらめ、現行システムを手がけた富士通を実質的な開発ベンダーとする。地場IT産業育成という当初の狙いは果たせなかった。

 青森市は、住民記録システムの開発を今年10月に完了する。富士通が、自社製のWindows版パッケージ・ソフトを用いて開発を手がける。新たに数億円の開発コストが生じる。

 住民記録システムは、住所や氏名といった住民の基本情報を管理し、住民票発行や印鑑登録などの業務で利用する市の基幹システムの一つだ。富士通は、住民記録システムを含む現行の基幹システムの開発と運用を手がけてきた。現行システムはメインフレームで動作している。

 実は青森市は基幹システム再構築プロジェクトの第一弾として、青森市は2005年4月に住民記録システムを刷新する予定だったが、成功しなかった(図)。4度の延期を繰り返した末に一度も利用することなく廃棄したのである。

図 青森市の住民記録システムの開発経緯
図 青森市の住民記録システムの開発経緯

 住民記録システムの開発は、青森市と国、青森県が共同で出資する第3セクターのソフトアカデミーあおもりが中心となって進めた。だが、元請けであるソフトアカデミーに、複数のベンダーをまとめてプロジェクトを進める力がなかった。

 青森市が開発をソフトアカデミーに任せたのは、同社と基幹系システム全体の開発と保守・運用をアウトソーシングする契約を、2004年11月に結んでいたからだ。青森市はシステムの開発をソフトアカデミーに任せ、利用料を支払う。住民記録システムの開発が破綻したことで、ソフトアカデミーは数億円の投資がムダになり、経営危機に陥った。

 一度、開発が破綻したにもかかわらず、青森市は現在も、ソフトアカデミーとの契約を継続している。富士通も青森市ではなく、ソフトアカデミーとの間でシステム開発の契約を結ぶ。
 これについて青森市は、「市の基幹システムには、住民記録、介護保険、税情報、福祉施策、財務会計、人事給与の六つのサブシステムがあり、ソフトアカデミーとの契約は、これらすべてを対象としている。すでに介護保険と税情報のシステムの開発が進んでいることから、契約の解除は困難と判断した」と説明する。

 プロジェクトは再スタートを切ったものの、住民記録システム構築の失敗に伴う支出は青森市にとって大きな誤算だった。同市は、廃棄した住民記録システム構築のためのコンサルティング費用1億6275万円をソフトアカデミーに支払ったうえ、経営危機に陥った同社を救うため、3億7000万円の緊急融資を実施せざるを得なくなった。

 大手ベンダー依存から脱却し、地場産業を育成するという構想自体は間違ってはいない。だが、自らの能力を超えた方法で改革を進めても、ベンダーからの自立が難しいことを、青森市の事例は示している。