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 日産自動車が5カ年計画で取り組んでいる情報化の方針が本誌の取材でわかった。IT投資の最適化に向け、日・米・欧の3極にある情報システムの標準化やアウトソーシング契約の見直しなどに着手する。それに向け、IT部門と利用部門の関係強化に乗り出す。

 日産自動車の中期情報化計画の名称は「BEST」。この4月からの5年間に取り組む、4大テーマの頭文字をとったものだ。「B」が利用部門との関係強化を図るBusiness Alignment、「E」は情報システムをグローバルに最適化するためのEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)活動、「S」はITベンダーとの関係を見直すSelective Sourcing、そして「T」は、ハード/ソフト製品や技術の標準化/簡素化を目指すTechnology simplificationだ(図)

図 日産自動車が2006年4月から取り組んでいる中期情報化計画「BEST」の概要
図 日産自動車が2006年4月から取り組んでいる中期情報化計画「BEST」の概要
日米欧での情報システムの標準化に向け、IT部門の主導権を取り戻す

 BESTの狙いを、日産のIT部門であるグローバル情報システム本部の宮沢光政IS資源統括部アシスタントマネージャーは、「経営に役立つ情報システムを、グローバルに最適な形で素早く開発し、かつ運用コストを可能な限り安くすることにある」と話す。

 そこで日産はEA活動に本格的に取り組み、業務アプリケーションやデータ、ハード/ソフト選定などに関する社内標準ルールを策定する。例えばソフトの場合、製品名を指定するだけでなく、可能な限りバージョンまでも統一する。10人強のEA推進専門部隊も編成した。

 日・米の運用・保守業務を対象に米IBMと1999年に結んだアウトソーシング契約も、抜本的に見直す。すでに米国では今春から、運用・保守の一部を自ら実施する体制に切り替えている。「当社の経営状況が変わったこともあり、もう一度最適なパートナを探すのが得策と考えた」(宮沢アシスタントマネージャー)とするものの、その背景には、IBMへの依存度が高まり、IT部門の弱体化が進みつつあることに対する危機感がある。

 日産が情報化戦略BESTを推進する裏側には、ITコストの高止まりがある。宮沢アシスタントマネージャーによれば、「正確な数値を調べている段階だが、情報化支出における既存システムの運用・保守費の比率が以前に比べ上がっている」という。

 同社は2000年から、独SAP製ERPパッケージを導入し、全世界共通の基幹系システムを構築してきた。例えば、04年3月に稼働させたグローバル部品購買システム「GTOP21」である。だが、自社開発システムが残るなど標準化を徹底できなかったことから、運用・保守費用を計画通りに抑制できていない模様だ。

 利用部門に対するコストの説明責任を果たさなければならないとの理由もある。企業体質強化に向けた「バリューアップ」計画に全社で取り組む中では、「利用部門が負担するITコストについて、理解が得にくい場面が増えている」(宮沢アシスタントマネージャー)。現在は、システム関連支出の内容や名称を洗い出し、再定義に取り組んでいる最中で、今後はIT投資案件に優先順位を付けるためのルールを導入する。