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特殊なドットパターンが印刷された作業報告書にデジタルペンで作業内容を記入する
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 業務用クリーニング機器を販売する住商アイナックス(東京・品川区)が、電子日報システムを活用し、効果を上げている。

 2004年に、NIコンサルティング(東京・港区)のSFA(セールスフォース・オートメーション)ツールである「顧客創造日報」をベースに、営業担当者向けの営業支援システムを導入。2007年に入ってからは、これを拡張して、導入済みクリーニング機器の保守担当者が使う日報システムも稼働させた。

 住商アイナックスのシステムの最大の特徴は、デジタルペンの活用である。住商アイナックスの保守担当者は、1日数件のクリーニング機器設置先を訪問し、保守作業を行う。従来は紙の作業報告書を作成・保管していた。

 「当初導入した営業支援システムは、全国で動き回る営業担当者の日報をシステム上で把握できるなど効果が大きかったため、保守担当者向けの日報も作りたいと考えた。ただし、紙を完全に無くすのは難しかった」(総務経理部の中尾幸蔵・副部長)。内部統制の観点から、作業報告書は売り上げの証拠として訪問先の顧客から署名や承認印をもらって保管する必要がある。


デジタルペンで記入した文字を自動認識で電子化し、日報として保管する。NIコンサルティングの「顧客創造日報」をベースに開発
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 そこで、住商アイナックスはデジタルペンと特殊な作業報告書用紙を使って作業報告を電子化し、日報代わりにする方法を採用した。同社の保守担当者は、訪問先で保守作業をする時に、作業報告書に作業時間や対象機種のコード、「ヒーター溶接修理」「ルブリケータ交換」といった作業内容をデジタルペンで記入する。

 デジタルペンは日立マクセル製の「DP-201」で、「アノト方式」と呼ばれる技術を採用している。普通のボールペンとして紙に文字を書けるほか、芯先に小型のカメラが付いており、作業報告書の専用紙(大日本印刷製)に印刷された特殊なドットパターンを読み取って保存する。

 保守担当者は、事務所に戻ると、デジタルペンをパソコンに接続。手書きした記入内容を自動認識して、データとしてシステムに取り込む。漢字を誤認識することもあるが、数字などはほぼ確実に自動認識できる。顧客名の文字を誤認識した場合は、顧客マスターと照合して自動的に修正する。

 作業報告書には通し番号が付いており、1枚ごとに異なるドットパターンが印刷されている。このため、2枚目の作業報告書に記入した後で1枚目の作業報告書に書き忘れた内容を追記するような場合でも、特別な操作は必要ない。

 住商アイナックスは1本3万円弱のデジタルペンを約60本導入した。バックエンドも含めた投資額は3000万円程度。作業報告書の価格は一般的な伝票の約6倍という。それでも、「保守担当者の行動がデータ化されるメリットは大きい」(中尾副部長)。経理などにつながる事務作業を省略できるようになったうえ、営業担当者が保守状況を随時参照して、「修理を繰り返すよりもそろそろ買い換えたほうがコストを下げられる」といった提案をしやすくなった。故障のパターンや原因を分析して製品の改良に生かすことも検討している。