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関西では鍋には欠かせない具材であるマロニー。その商品力を背景に、40年間もの長い期間にわたり単品経営を続けてきた。創立50周年を機に情報システムの導入をはじめとした業務改革を実行し、経営情報の可視化を進めた。冬場の需要だけに頼る現状から脱却しようと取り組んでいる。

 鍋に入れる具材は地方によって特色がある。関西を中心に西日本の鍋には、「マロニー」というはるさめを入れることが多い。じゃがいものでんぷんが原料で、「まろやかに煮える」ことから名づけられたといわれている。看板商品が社名であるマロニー(大阪・吹田市)は、マロニー関連商品が全社売り上げの95%を占める屋台骨となっている。「薄味の鍋に入れれば薄味に、濃い鍋であれば濃い味にといったように各家庭の味に染まる。素材でありながら主張しない」と、40年以上も売れ続けている秘けつを河内幸枝社長は語る。

●マロニーの概要
●マロニーの概要

 一方で経営的にはロングセラーに頼るがゆえの、課題を抱えていた。冬場の需要頼みの「一本足打法」になっていたことだ。保存が効く乾物であるため、3月から生産を開始して冬場の需要期まで作りだめして備えるほどだ。

 そのため、冬季の気温が売り上げを大きく左右する。冷え込みがきつい冬は鍋需要が高まるため売り上げが伸び、暖冬であれば売り上げが落ち込み在庫が膨らんでしまう。いつの間にか「売れなかったら気候のせい」にする風土になっていた。

 加えて、長寿商品を単品で展開してきたため、社員に挑戦心が削がれていた。新しい商品を開発しなくても売れる商品があるために、いつしか守りに入っていた。経営の視点でも、経営情報を即座に把握できるといった、企業としての仕組みが整備できていなかった。

 しかし、河内社長は数字にうるさかった。河内社長は40歳の時に父親が創業したマロニーに入社するまで専業主婦だった。そのため会社を継ぐために入社してからは、会社の実情を知ろうと、手帳に借入金や売り上げなど会社のありとあらゆる情報を書き留めてきた。今でも続けており30年分持ち歩いている。「書き留めることで異常な数字を見つけられる」と河内社長は話す。このように精ちな情報が即座に集められて活用できる企業への変革が必要だと河内社長は考えていた。

本社に隣接する大阪工場の「生マロニー」の製造ライン。右上は2月に発売した焼マロニーや坦々麺味のマロニー
本社に隣接する大阪工場の「生マロニー」の製造ライン。右上は2月に発売した焼マロニーや坦々麺味のマロニー

投資を5000万円に圧縮

 マロニーの前身である吉村商店の創業から50周年を迎えた2000年から、情報システムを活用した業務改革をITコーディネータの協力を仰ぎながら進めた。河内社長はプロジェクト発足に当たり、全社員を前にシステム再構築だけが目的ではないことを話した。現状維持にこだわる気持ちを変える意識改革であることを強調した。2002年9月に「MAPICS」と呼ぶ生産管理システムと、物流系の統合システムをそれぞれ稼働。営業・生産・物流の各部門の壁を越えて情報共有できる体制になった。

 具体的には、取引先5000社から受注情報が入ると、統合システムに入力し物流センターへ発送指示を出す。1カ月分の受注情報をまとめて、MAPICSへ送信。その情報と過去3年分の情報を基に、年間を通じて平準化を進められるようにした。製造手法や売れ方が他社とは大きく異なるため、パッケージ製品を使わなかった。システム部門で詳細なRFP(提案依頼書)を書くなどして、投資額を5000万円に抑えた。

 MAPICS導入による生産部門の効果として、原材料調達の可視化が進んだ。単価は事前に取引先と決めているので、所要量が分かればおおよその費用を事前につかめる。従来は請求書が届くまで費用がつかめなかった。月末の棚卸しも「10分もあればできる」(情報システム課の西野克日佐係長)ほど、可視化が進んだ。

 さらに、2005年9月には統合システムを進化させ、営業支援システム「STARS」を導入。営業拠点や商品別など細かい単位で、財務・業績情報(BS/PL)を把握できるようになった。これまで基幹システムからの情報は、売り上げの結果でしかなかったが、改善点を見つけられる体制になった。

 詳細に掘り下げて検索できることで、売り上げの要因が詳細に分かる。2005年1月にクレジットカード会社からマロニーの営業部長に転職してきた上野昌樹氏は「必要な情報が何もなく、指示するにもどうしようもない状態だった。STARSによって、的確な指示ができるようになった」と話す。例えば、昨年度全体の売り上げは前年比4%増だった。これまでなら好調だと喜んで終わった。STARSを導入することで、売り上げを掘り下げると、東日本は好調だったが西日本はここ3年間は足踏み状態であることが分かった。営業部門の強化ポイントが見えるようになった。

●2000年から構築してきたマロニーのシステム
●2000年から構築してきたマロニーのシステム