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AV(音響・映像)製品の購入前の問い合わせを担当するお客様センターで、稼働率を10ポイント向上、2次対応する正社員を12人から10人に削減した。120のKPI(重要業績評価指標)によるデータの分析と改善に取り組む。このマネジメントの仕組み作りや、定着のために、「COPC-2000」認証を取得。同コールセンター認証の審査を毎年受けることで改善活動の定着を図っている。

 ソニーマーケティングは、1997年4月に設立されたソニー100%出資の子会社で、ソニー製品のマーケティングと販売を担当している。同社が神奈川県藤沢市に拠点を持つコールセンターの「お客様ご相談センター」は約80席規模のセンター。ソニーのAV製品全般についての購入前の問い合わせに対応している。

ソニーのAV製品の購入前問い合わせに対応する神奈川・藤沢のお客様ご相談センター(上)。主力製品のスゴ録(左)
ソニーのAV製品の購入前問い合わせに対応する神奈川・藤沢のお客様ご相談センター(上)。主力製品のスゴ録(左)

 同センターは、63年にソニー本社の「インフォメーションセンター」として設立されて以来、コストセンターとして位置づけられていた。だが、2000年に本社からソニーマーケティングに移管されてからは徐々に「利益や売り上げに貢献するプロフィットセンター」を目指すという前向きな目標が意識されるようになっていた。

 ただし、同センターには悩みがあった。1980年代までは、電話対応を正社員が行っていたが、90年代からは1次オペレーターは徐々に派遣社員になり、99年からはオペレーターやスーパーバイザーの確保と業務管理は専門業者に業務委託する形態へと外注化した。

 その結果、前向きな目標を持っても、業務改善のノウハウを再構築することから着手しなければならなかった。カスタマーリレーション&サービス本部CR&サービス企画部の池田成章担当部長によれば、当時は「お客様応対の結果を大雑把にしか見ていない」「業績指標の集計は手作業で、結果が出るのは翌日」「業績指標から問題を発見できたとしても解決のノウハウは業務委託先にしか残らない」といった状況だったという。

認証取得に合わせて業務改革

 そこで、同センターが目をつけたのが、「COPC-2000」という国際認証制度だ。2004年3月に認証を取得した。COPC-2000はマルコム・ボルドリッジ賞の基準とフレームワークをベースに、コールセンター業務に特化して策定された品質保証規格。この認証は通常、アウトソーシング業者がサービス品質を証明する目的で取得するのだが、ソニーマーケティングのように、自社の業務改善を目的として取得したケースは世界初だという。

 COPC-2000の認定要件をテコに、定量データに基づくPDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルを回すマネジメントを導入する狙いがあった。例えば「計画」のレビュー要件には「計画に対するパフォーマンス分析を年2回行う」といった項目があるし、「プロセス」の要件には「業務委託先との間で、COPC-2000規格で要求される測定指標を特定する」「業者のパフォーマンスを四半期ごとに分析する」「年に1回、スタッフのスキルと知識を再検証する」といった規定がある。

●COPC-2000の認証取得をテコに業務指標を分析し改善するサイクルを導入
●COPC-2000の認証取得をテコに業務指標を分析し改善するサイクルを導入
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 COPC認証は1年に1回、審査を受けないと継続することができない。そして、業務指標については、目標値の達成度合いと、向上トレンドにあるかどうかの2点から判定される。常にPDCAを回して改善し続けないと、認証を維持することができないという厳しい仕組みである。

120のKPIを導入

 2003年からCOPC取得の活動を開始したが、当初は合格水準を100点とすると「44点しかなかった」(カスタマーリレーション&サービス本部Telマーケティング部コンタクトクオリティー推進課の堀内貴子統括課長)という。

 例えば、顧客満足度は、2003年当時は調査していなかった。「実施していた時期もあったが、調査手法に疑問があって休止していた。認証を機に、お客さんの期待に応えられているのか、教育研修とどう結びつけるかといった観点から再検討した」(堀内統括課長)。現在は、電話対応が終わってから30~60分後に電話をかけて満足度を調べている。回線の混雑度や回答時間など、従来から調査していた指標もあったが、より細分化した。製品カテゴリー別や、インバウンドとコールバック別に測定する、あるいは製品担当グループ別に取るなどで問題点を特定しやすいようにした。

コストと品質の同時向上を図る

 KPIを設定し定期的に改善策を検討することで、コストとサービス品質の指標を同時に向上させていった。例えばコスト面では、通話時間をオペレーター用画面へのログイン時間で割った稼働率は2003年度の70%から2006年度は80%に上がった。同社では、コール数や人件費の詳細な推移を公表していないが、仮にコール数が同じだとすれば、単純計算ではオペレーターを12%減らせた勘定になる。

●数値改善例
図●数値改善例
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 この向上は「30分間隔でコール量を予測して予測精度を上げること」というCOPC-2000のレビュー要件に取り組んだ結果だ。時間帯分布に合わせて、「マーケッター」と呼ぶ1次オペレーターのシフトの種類を10数種類作ったという。「スタッフの疲労を考慮するとこの数字はむやみに高くしてよいものではないが、米COPC社の代理店からは70%では低過ぎる、80%台が標準的な数字だといわれていた」(堀内統括課長)

 さらに、1次オペレーターの「自己完了率」を2003年度の91%から2006年度は97%に上げたのに伴い、正社員で対応する2次要員数を12人から10人へと17%減らした。

Telマーケティング部の韮澤統括課長(左)と堀内統括課長(右)、およびCR&サービス企画部の池田担当部長(中央)
Telマーケティング部の韮澤統括課長(左)と堀内統括課長(右)、およびCR&サービス企画部の池田担当部長(中央)

 自己完了率を上げるため、「質の向上を兼ねて、評価の工夫と採用時の研修の強化に取り組んだ」(Telマーケティング部カスタマーインフォメーションセンター統括課長の韮澤賢治氏)。

 2003年以来、オペレーター全員を対象に1カ月に1度、3コールずつコーチ役の正社員が対応を聞いて評価を付ける。コーチ役はソニーの技術部門経験者が務め、3コールのうち2コールは録音を聞き、1コールは傍らでリアルタイムにやり取りを聞くことになっている。基本項目は「好感度」「マナー度」「共感度」「業務遂行度」「ミロQ(ミロキュー)度」「ログ精度」の7つ。利用客の質問の理解力や商品サービス知識を判定するのが業務遂行度である。ミロQ度は利用客に商品購入意欲を喚起できたかどうか、ログ精度は電話内容を的確にパソコンに入力したかどうかを示す。こうして毎月、4段階評価で下位の評価が付いた項目は、個々のオペレーターにフィードバックして「お客さんが言おうとしたのはこういうことで、その時はこう伝えましょう」といった指導を行った。

 「パフォーマンス分析を年2回行う」といったCOPC-2000の要件に従った結果、隠れていた問題発見もあった。

見過ごしていた問題を発見

コールセンターに張り出された、満足度調査で得られた利用客からの声。評価や研修の工夫によりコストだけでなく質も向上した
コールセンターに張り出された、満足度調査で得られた利用客からの声。評価や研修の工夫によりコストだけでなく質も向上した

 その代表例が、コールバックの顧客満足度の低さだった。2003年10月に測定したところ、折り返し電話を受けた利用客の満足度はわずか58%だった。顧客満足度の定義は5段階評価で上位1~2段階の評価が占める率としている。

 さらに、折り返し電話を約束した利用客から「まだですか」と催促電話がかかる率は0.05%あった。そこで、同社は2003年9月に管理体制を工夫。折り返し電話を約束した時点で、「大至急」「30分ほどで1度連絡」「時刻指定」「特に時間を問われない」の4種類に分けて、緊急度をオペレーターがシステムに記録するようにした。そしてスーパーバイザーが、コールバック待ちリストを監視して、約束時間に迫ったものについてオペレーターに電話の指示を出すことにした。

 これだけで、翌年2004年9月の調査では、コールバックの満足度を85%に上げることができた。