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日本化薬の平松恒治・経営戦略本部経営企画部参事
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 火薬や抗癌剤、染料、農薬、デジタル家電部材、エアバック用点火・ガス発生装置など多様な製品の製造・販売を手がける日本化薬は、1年間の試行期間を経てこの6月から、クロス・ファンクショナル・チーム(CFT、部門横断型チーム)に会社の様々な課題を解決させる「プロジェクト制度」の本格運用をスタートさせた。「部門間の壁を破って、市場の変化や顧客の要望にできるだけ素早く対応できる集団に会社を変えることが大きな狙いだ」(日本化薬の平松恒治・経営戦略本部経営企画部参事)

 このCFTは、新年度の開始月である6月から始まった中期事業計画で掲げた事業目標を達成するために乗り越えるべき課題を解決する「Aプロジェクト」と、それ以外の課題を解決する「Bプロジェクト」に分類される。現在チーム編成を詰めているところだが、Aプロジェクトが20チーム程度、Bプロジェクトが130チーム程度になる見通し。つまり、CFTの総数はおよそ150にもなる。

 Aプロジェクトは新事業の立ち上げ、新市場の開拓など創造的なものが多い。例えば「色素増感太陽電池の事業化」がそうだ。また、「スパニジン(免疫抑制剤)のEU承認取得と欧州での展開」というAプロジェクトもある。これは、欧州医薬品審査庁(EMEA)に申請中の新製品の承認を取得し、欧州での事業展開をスタートさせるというもの。

 これに対してBプロジェクトには、例えば「インクジェットやDVD接着剤、UVシール材などを扱う機能化学品事業本部のコストダウンプロジェクト」がある。 重点品目のコストダウンを従来型の工場主導から、本社主導で研究、製造、営業一体となって進めるのだ。

 日本化薬の社員数は約1800人。約150のCFTのいずれかに参加する人が延べ1300人を超す。つまり単純計算では、実に3分の2の社員がCFT活動に取り組むわけだ。

 CFTのメンバーに選定された社員は、通常業務との兼務になる。このため、一見すると多くの社員の仕事量が倍になりそうだが、実際は違う。CFTが取り組む課題は、「プロジェクト制度」がなかったとしても、然るべき部署の然るべき社員が中心になって取り組むべき課題ばかりだからだ。制度という枠組みをはめることによって、1つの課題に対する各部の担当者を明確にし、部門間の連携をスムースにして、課題解決の確度を高めようとしている。

人事制度と連携させ、リーダーがメンバーを評価

 実は日本化薬は数年前から、製造部門だけでなく全社的に業務改善活動「小集団活動」も実施してきている。これまでは、特定の1部門内に閉じた業務改善の取り組みだけでなく、複数部門が協力して取り組む業務改善も、この制度を活用してきた。今年度からは後者は「プロジェクト制度」を適用する。

 「小集団活動」では、コスト削減や生産性向上や人材育成、組織力強化などに大きな成果を出したと判断されれば、毎年秋に開催する全社集会の場で表彰され、報奨金をもらえる。

 これに対して「プロジェクト制度」の場合、その活動結果は各CFTのリーダーやメンバーの人事評価制度と連携している。目標管理制度で使う個人の評価シートの中に、プロジェクト活動に関する記述も書き込み、半期ごとに進ちょく度合いを評価されるのである。

 「プロジェクト制度」における各CFTのチームリーダーは、上司による任命か、本人の立候補(上司の承認は必要)によって決まる。リーダーの多くは40歳前後の課長クラスの人材である。メンバーは、リーダーが直属の上司と相談して選ぶ。

 CFT活動におけるリーダーの活躍ぶりを評価するのは直属の上司だが、メンバーを評価するのはリーダーの役割である。「リーダーの行動だけなら直属の上司が把握できるが、各メンバーのCFTへの貢献度はリーダーしか把握できない。詳細はいま検討しているところだが、リーダーによるメンバーの評価はごく簡単な仕組みにするつもり」(平松参事)

 「プロジェクト制度」にはもう1つ大きな特徴がある。プロジェクトをスタートさせる前に、リーダーがそのプロジェクトのスケジュール、メンバー構成、内容、成果目標などを書く登録票を提出。島田紘一郎社長と専務、経営企画部が一緒になって150におよぶCFTの進ちょく審査を3カ月ごとに実施するのだ。そこには、会社が本気でこの制度を定着させようとしている意気込みを示したり、社員の目標達成力を高める狙いがある。審査の結果、例えば見通しが立たないプロジェクトを中止にしたり、重複感の強いプロジェクトを統合したり、最適な部署の社員にリーダーを変更したりする。

 今回の「プロジェクト制度」を導入したきっかけは、島田社長が自動車メーカーのエアバック担当者と会合をした際、まだ40歳前後の担当者が大きな裁量権を持ってスピーディーに仕事を進めている点に感銘を受けたことにある。また、研究所の所長から「あまりにたくさんの種類の製品を手がけるようになったので、上司は部下たちがどんな研究をしているか把握しきれなくなってきているのではないか」という問題提議もあったという。さらにこの制度には、異なる分野の研究を融合して新しい製品を生み出したいという狙いもある。

 日本化薬の2007年5月期の決算は、売上高1500億円、経常利益150億円で、増収増益の見通し。