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「想像力が刺激される」と利用者には好評

 ユビキタス・アートツアーの申し込みは,ツアーカウンターでの当日受付のほか,インターネットや電話,ツアーカウンターでの事前予約も行える。ユビキタス・コミュニケータをレンタルする際は,貸出料金1000円(内訳は貸出料500円,保証金500円)を支払うとともに,身分証明書を提示する必要がある。貸し出し時間の上限は2時間。端末を返却する際に保証金の500円は返金される。

写真7●天井に埋め込まれた「uコードマーカ」
写真7●天井に埋め込まれた「uコードマーカ」
中央の黒い円形のもの「uコードマーカ」。これは赤外線タイプ。
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 現在,ユビキタス・コミュニケータの在庫は50台。利用希望者が多いため,ほとんどの端末が終日フルに稼働している状況だ。利用者からは「想像力が刺激され,アート鑑賞の楽しみが広がった」など好意的な感想が多く寄せられており,評判は上々だという。

 屋内外の天井や街灯など約500カ所に設置されるuコードマーカは,赤外線通信対応と,無線LAN通信対応の2種類が存在する(写真7)。一方のユビキタス・コミュニケータは,端末の上部と下部に1つずつ赤外線受光部を備え,さらに端末を首から提げるネックストラップ部分に無線LAN通信対応の受信装置を装備している(写真8)。これにより,uコードマーカから,赤外線通信や無線LANを介して発信されるID情報を,端末側で自動的に受信できる仕組みである。

写真8●赤外線と無線LANの双方を装備
写真8●赤外線と無線LANの双方を装備
本体手前側の黒い部分が赤外線受光部。写真奥(縦に持ったときの上部)にも備える。手前のストラップに付いている台形の部分が無線LANのデバイス。
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 2種類の通信方式を採用したのは,ナビゲーションや情報提供の精度を高めるため。「赤外線を受信可能な範囲はuコードマーカから半径3m程度。一方,無線LANの場合は半径20~30m程度にもなる。双方の各通信方式の特徴を活かして,曲がり角など局所的なナビゲーションを要する個所には赤外線通信対応のuコードマーカを設置し,大きなアート作品の周りなど広範囲に情報を発信したい場合は無線LAN対応のuコードマーカを設置した」(YRPユビキタス・ネットワーキング研究所 ユビキタス事業1部 部長の山田浩之氏)。通信方式の使い分けにより,的確な情報を利用者に届けられるわけだ。

 ユビキタス・コミュニケータの情報表示画面では,見たいコンテンツにたどりやつきやすいように「概要」「詳細」「作家」といったカテゴリー別の表示タブが用意されている。カテゴリーを選択するとページが切り替わり,各カテゴリーのコンテンツが一覧表示される。端末がサポートしている言語は,日本語,英語,フランス語,中国語,韓国語の5カ国語で,端末の設定で利用者が言語を選択できるようになっている。

“街のインフラ”として販促や身障者サポートなどの展開も

 端末はフル充電で約2時間利用できる。貸出時間はその制約もあって2時間に設定してあり,貸出途中でバッテリー残量がなくなるといったトラブルはないという。

 端末が搭載するメモリー容量は本体128Mバイト,さらにSDカードスロットを備えており,メモリー容量を増強することができる。ユビキタス・アートツアーの各コンテンツは,SDカードに収めており,uコードマーカから発信されるuコードを受信した後,それに対応するコンテンツをSDカードからデータを読み込んで表示する仕組みである。

 なお,現時点では利用していないが,サーバーに蓄積した動的なコンテンツを無線LAN経由で端末に送り,最新情報を表示させるシステムを構築することも可能という。「施設の混雑状況などリアルタイム性の高い情報を提供するケースでは,サーバー型システムが有効」(YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の山田氏)。目的や状況に応じて,将来的にはサーバー型システムを導入することも視野に入れている。

 今回,東京ミッドタウンマネジメントでは,ユビキタス技術を応用したシステムを構築するために,およそ2億円の開発費用を投じたという。ただし,「ユビキタス・アートツアーの端末貸出料金で投資コストをすべて回収するつもりはない。今回構築したシステム自体を東京ミッドタウンという街の情報インフラと位置づけている」(東京ミッドタウンマネジメントの吉田氏)。ユビキタス・アートツアーを手始めに,将来にわたって新たなサービス展開を図りながら,東京ミッドタウンのイメージを高めるという側面も含んだ“コスト回収”を進める方針である。

 具体的には,「店舗や施設の情報を配信したり,高齢者や身体の不自由な方をサポートするサービスの提供を一つの方向として考えている。整備したインフラを活用して,実際にどのようなサービスを提供していくかが今後の課題」(東京ミッドタウンマネジメントの吉田氏)。ユビキタス・アートツアーの実績を踏まえた上で,新たな“ジャパン・バリュー”創出に向けて,活用の可能性を模索していく考えだ。

中村実里=ライター