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トレビーノ販売部の酒井伊幸部長と「トレビーノ マイスター」
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 東レが今年1月中旬に発売した家庭用浄水器「トレビーノ・アクアマイスター」の売れ行きが好調だ。6月に入り、売り上げが伸び始めて「初年度1万台」という目標の達成も視野に入ってきた。8万8000円という同社では最も高い製品が、消費者の気持ちをつかんでいる背景にはサイコグラフィック(心理学的)属性に注目したマーケティングがあった。

 アクアマイスターの開発プロジェクトが始まったのは2004年の冒頭。比較的安価な蛇口直結型の浄水器ではシェアトップであった東レとしては、据え置き型と呼ばれる高級機市場への進出を考えていた。「ハイエンドのフラッグシップ的な商品を作りたかった。従来は機能や使い勝手でライバル企業と争っていたが、改めてお客様を見つめ直すことにした」(酒井伊幸トレビーノ販売部部長)。このとき、同販売部は社内のマーケティング企画室からウォータースタジオ(東京・渋谷区)を紹介される。同社は「エモーショナル・プログラム」と呼ばれる消費者が持つブランドイメージや価値観を理解する手法で様々な企業のヒット商品作りを手助けしてきた。同プログラムを用いれば、あらゆる商品やサービスが持つイメージ「保守的/革新的」と「精神年齢」という2軸でマップ上に位置を表すことができる。

 プロジェクトメンバーは、ウォータースタジオが抱えるモニターのうち、水に関心を持つ1000人に対して意識調査を行い、6つのクラスターに分類した。そのうち10.3%を占める「情報通のこだわり派」と呼ばれる層を新製品のメインターゲットに定めた。新製品に関心が高く、デザインにもこだわる、オピニオンリーダーの資質を備えた層だという。エモーショナル・プログラムを通じて、彼らに共通する価値観や好きなブランドなどを確認しながら新商品のブランドイメージを膨らませていった。

 「商品開発の過程が楽しかった。好きなブランドから顧客のイメージが具体的に思い浮かぶし、そのイメージをプロジェクトのメンバーで共有できたので戦略のぶれも起きにくかった」(酒井部長)。こうして「シンクトップウォータープラント」という商品コンセプトを固めて、デザインにも反映させた。新潟県の燕三条地方の職人に表面の仕上げを依頼するなど外観にこだわった。高級感を保つために販路はあえて絞っている。「一時は『トレビーノ』という大衆化したブランド名を引っ込めることも考えた」(酒井部長)ほど、こだわり派というターゲット層を意識した。

 値崩れの恐れがあるホームセンターや家電量販店を避けて、東急ハンズや百貨店、通販を中心に販売した。「ゆくゆくはウェブで直販もやりたい。それにふさわしい商品だ」と酒井部長は話す。技術力のある企業ほど新製品の発表時には、性能や技術を顧客に押し付けがちだ。「どんな製品がどんなに顧客に喜ばれるのか」という商品開発の原点に立ち返ることが高級機種のヒットにつながった。