PR
オンワードの主力ブランド「23区」の店舗
オンワードの主力ブランド「23区」の店舗

 アパレル大手のオンワード樫山が2007年春からサプライチェーン改革に乗り出した。組織改革と工場政策の見直しの2本立てで、衣服の素材を調達してから店頭に商品を並べるまでのリードタイム短縮に取り組んでいる。顧客が「今まさに着たい」と思う商品をタイミングよく店頭に取りそろえることが狙いだ。こうすることで、あらゆる商品群において値引きのない定価での販売率(プロパー消化率)を同社の「合格点」ともいえる60%以上確保できるようにする。

 この3月には手始めに、これまで29のブランド別に分かれていた事業本部を、主力ブランドや販売チャネルなどの特性に合わせて13の事業本部(商品企画部門)に集約したうえで、各事業本部にそれぞれの生産機能を移管した。これまでは生産効率の向上を狙って生産業務を生産本部に一本化していたが、約20年ぶりに事業本部ごとに生産業務を分けた。5~8月にかけて、事業本部単位でオフィスのフロアも同じにし、9月から始まる2007年下期に本格的に新しい事業本部が動き出す。

 これからは「23区」や「組曲」といったオンワードの基幹ブランドごとに「社内カンパニー」に近い組織体を構成し、商品企画から生産までを一気通貫で実施。リードタイムを短くする。商品開発から生産までの関係者が常に一堂に会することで社内のコミュニケーション密度を高める「大部屋開発」に相当するものだ。

 新たに事業本部に合流した生産担当者は、同社の主力チャネルである百貨店の繁忙日である土・日曜日に商品企画担当者やデザイナーと一緒になって店舗回りをするなどして売れ筋を実感し、ものづくりの体制変更に役立てる。こうして、土日の販売実績を基に、月・火曜日に供給量を修正していく「52週MD(マーチャンダイジング)」の精度を生産まで含めて上げていく。

国内の協力工場とのパイプ再構築が鍵

 ものづくり改革で鍵を握るのは、国内の協力工場との関係強化である。オンワードはほかのアパレル企業と同様に、現在は生産の約70%を中国を中心とした海外に移している。当然、生産コストは国内よりも東南アジアなどの海外のほうが安いが、「海外生産は国内生産に比べて、店頭に商品が並ぶまでのリードタイムが約2倍長い」(田中英信・執行役員経営企画室長)。これまでの実績では、海外生産のリードタイムを40日とすると、国内生産は20日といった具合だ。

 それでも生産コストの引き下げを優先して、オンワードは海外生産を推し進めてきたが、「どんなに製造原価が安くても、顧客が欲しいと思う瞬間に店頭に商品が並んでいなければ意味がないという反省があった」(田中執行役員)。そこで新しい事業本部の発足と同時に、改めてリードタイムが短い国内の協力工場との関係強化を掲げ、商品によっては国内工場を積極的に活用していく方向に舵を切り直す。「国内回帰といった格好のいい話ではないが、結果的に国内の生産比率が上昇することになるかもしれない。それでプロパー消化率が80%を超えるようなら、十分コストを吸収できる可能性がある」(同)。

 現在オンワードが検討しているのは、リードタイムが短い国内工場の強みと、安価な大量生産を得意とする海外工場の強みを掛け合わせた工場制策の抜本的な改革だ。ここで一番の優先事項になるのは、顧客に「この店舗に入ってみよう」と思ってもらえるだけの「旬」な店頭ディスプレイが可能な商品供給体制を整えられるかどうかである。

 商品在庫のあるなしにかかわらず、まずは顧客に店舗に一歩足を踏み入れてもらえなければ、商売は始まらない。逆に顧客が入店してくれさえすれば、仮に該当商品の在庫がなくても、代わりの商品を薦めるといった接客も可能になる。

 肝心なのは、仮に数量は少なくても、顧客の目を引く「次の商品」を店頭に素早く並べられるかどうかである。ただし、同社の最大ブランド「23区」の場合、全国約300カ所に店舗があるため、各店舗に単品を1着届けるだけでも300着を用意できなければならない。そこでこの分だけは国内工場で2~3週間で手早く作って、いち早く店舗に届ける。そして店頭で顧客の反応を見るために、ディスプレイする。あるいは、売り上げが大きく、トレンドをつかみやすい都心の店舗にだけは先に、数に限りがある国内生産分の商品を流して様子を見るというやり方もあり得る。

 そうしながら、海外工場では売れ筋商品をいつでも大量生産できる準備を進めておき、時間差で大量供給していくというのがオンワードのこれからの考え方だ。このシナリオを実践するには、生産能力や許容できるコストに限りがある国内の協力工場との日ごろからのパイプ作りが欠かせない。そこがオンワードの今期の課題である。