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写真1●ファイザーの町田裕一CITソリューション&エンジニアリング部システムサポート課担当課長
写真1●ファイザーの町田裕一CITソリューション&エンジニアリング部システムサポート課担当課長

製薬最大手のファイザーは2007年1月,国内のデータ・センター内にあるサーバーを統合した。仮想化技術を使い,サーバー統合を予定する220 台のサーバーのうち120台を12台に集約。データ・センター内のスペースを減らしたほか,サーバー増加で発生していた運用管理コストを大幅に抑えた。

 「仮想化技術に対する関連部署の不安を取り除くことには苦労したが,当初の予想以上に効果が高く,大きなトラブルもなくほっとしている」。サーバー関連の現場責任者であるファイザーの町田裕一CITソリューション&エンジニアリング部システムサポート課担当課長は,胸をなでおろす(写真1)。

 サーバーの仮想化は,1台の物理的なサーバーの中に複数の仮想的なサーバーを作り出す技術である。複数の物理的なサーバーを運用するのと同じように,一つひとつの仮想サーバーは独立して動作する。

 一般に,サーバー仮想化の利用目的は三つある。(1)物理的なサーバーを減らす「サーバー統合」,(2)CPUやメモリーなどのリソースを負荷に応じて割り当てられる「システムの負荷調整」,(3)最新のサーバーでもサポート切れOSを動かせる「古いOSの延命」──である。ファイザーが重視したのは,(1)と(2)。特にサーバー統合は,同社が自社システムの基盤に仮想化技術を取り込むきっかけとなった。

 同社は数年前から支社・支店内の部門サーバーを極力減らし,データ・センターへの一極集中に努めてきたが,サーバーの総台数は増える一方だった(図1)。データセンター内のサーバー数はWindowsだけでも260台を超え,サーバーを置く空きスペースは常に不足気味。電力消費に伴うコスト増もうなぎのぼりとなっていた。障害時にはその要因の特定も困難になり,運用・保守にかかるコストも見過ごせなくなってきたという。物理的にサーバーを減らすことで,サーバー機の維持費や運用コストを削減できると見たファイザーは2005年夏,仮想化技術を使ったサーバー統合に着手した。


図1●ファイザーが抱えていた二つの課題
図1●ファイザーが抱えていた二つの課題
特に,サーバー数の増加によって発生する問題に悩まされていた。

移行対象はNT 4.0サーバーが中心

 移行時に利用可能だった仮想化ソフトとしては,米マイクロソフトの「Virtual Server 2005」,米ヴイエムウェアの「VMware ESX Server」,オープンソースの「Xen」などがあった。これらの中からファイザーが選んだのは「VMware ESX Server」だった。選定に当たった町田担当課長は,「一足先に同社の中央研究所が小規模のVMwareを導入していたので,様子や使い勝手は理解していた。評価の際に,VMwareがファイザー・グループのスタンダード製品として位置付けられたことが決定打となった」と選定理由を説明する。設計や構築は,VMware販売元のネットワールドが担当した。

 サーバー統合を進めるといっても,一気にすべてのサーバーを仮想環境に移行させるのは現実的でない。そこで現在フル稼働している最新の4CPU搭載のサーバー機などは移行対象から外し,比較的古い220台を移行させることにした(図2)。その主な対象となったのは,Windows NT4.0やOracle8i for Windowsを搭載したサーバーである。「一般に,仮想化は古いOSを延命させるという手段にも用いられるが,当社はそう考えていない。このタイミングでサポート切れの製品を新版にバージョンアップし古い製品を撲滅するほうが障害要因の減少などメリットが大きい」(町田担当課長)と判断した。

図2●ファイザーのデータ・センターの主な構成
図2●ファイザーのデータ・センターの主な構成
データ・センター内のサーバー数は2006年は約260台に上っていた。比較的古い220台をサーバー統合することにし,これまでに120台のサーバーを12台に集約した。
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 サーバー統合に際して,ネットワークのリプレースはほとんど実施していない。データ・センター内のスイッチで一部100Mビット/秒で接続していたところを,ギガビット・イーサに変更した程度にとどまっている。

OSの種類別に2種類の移行を実施

 物理サーバーを仮想サーバーに移行するに当たっては,移行元のサーバーOSの種類によって2種類の方法を使い分けた(図3)。

図3●ファイザーはサーバーの移行に2種類の方法を使い分けた
図3●ファイザーはサーバーの移行に2種類の方法を使い分けた
移行元OSがWindows 2003/2000の場合には「P2V Assistant」で移行。NT 4.0の場合は手動でデータ移行を行った。
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 まず,移行元サーバーが現行のWindows Server 2003やWindows 2000 Serverを使っている場合は,ヴイエムウェアの移行支援ツール「P2V Assistant」(現行製品はVMware Converter)を使用した。この方法は,移行元と移行先のサーバーのほかに別途専用のサーバーを用意する必要がある。それでも移行元の環境をそのままイメージ・データとして吸い上げ,仮想サーバーに移せるため,移行完了にかかる時間は短く済む。

 一方,移行元がNT 4.0の場合は,OSイメージを作成して手動でデータを移行した。具体的には,移行先となるWindows 2003/2000を新規にインストールし,Windows Updateなどでセキュリティ・パッチを当ててからOSイメージを作成。そして仮想サーバー上にコピーして,個々でデータ移行やアプリケーション設定を行った。

 両者を単純に比較すると,移行時間が短いP2V Assistantのほうが便利に見えるが,実はそう単純ではない。

 P2V Assistantに移行方法において,イメージ・データを吸い上げる際に移行元サーバーの起動に使うブート・ディスクは,Linuxがベースとなっている。このため,移行元サーバーが特殊なドライバを必要とするケースでは利用できないことがある。ファイザーもこの問題を避けるために,「イメージ・データの吸い上げには汎用バックアップ・ソフトを使った」(町田担当課長)。

 また移行時間においても,必ずしもP2V Assistantのほうが有利に働くとは限らない。同じOSイメージを大量に展開する場合には,OSイメージ作成のほうがトータルで短くなる。