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 提携病院から血液などの臨床検査を受託する,医療関連企業であるサンリツ。同社は2007年1月に,NTTレゾナントのテレビ会議システム「WarpVision」を使い,遠隔で血液を病理診断できるシステムを構築した(写真1)。導入によって臨床検査にかかる時間を大幅に短縮したほか,慢性的に長時間労働が続いていた臨床検査技師の労働環境も改善した。

疲弊した現場を遠隔診断で解消

 今回のシステムを導入したきっかけについて同社の朝比奈講一常務取締役検査・品質保証担当(写真2)は,「過酷な現場の業務環境を改善しようとしたため」と説明する。

写真1●NTTレゾナントのテレビ会議システム「WarpVision」を使い遠隔で病理診断  
写真1●NTTレゾナントのテレビ会議システム「WarpVision」を使い遠隔で病理診断
1000倍の倍率で血液を拡大し,遠隔地の臨床検査技師に映像を伝送する。遠隔地の映像を見ながらスキルを持った本社の臨床検査技師が音声で指示を出し,病気かどうかを判断する。640×480ドットの MPEG2動画(利用帯域は8Mビット/秒,30fps)を利用している。
 
写真2●左からサンリツの杉田義弘検査管理グループ・グループリーダー,朝比奈講一常務取締役検査・品質保証担当,吉田隆臨床検査部長
写真2●左からサンリツの杉田義弘検査管理グループ・グループリーダー,朝比奈講一常務取締役検査・品質保証担当,吉田隆臨床検査部長

 同社は,千葉県八千代市の本社のほか,埼玉県草加市や栃木県宇都宮市など4カ所に職員が3~4名の拠点(ラボラトリー)がある。それぞれの拠点は,付近の提携病院から血液の検査業務を委託されている。

 同社が抱えていた問題は二つあった。一つは,「拠点の臨床検査技師では,詳しい血液の病気の判別が付かないケースが少なくなかった」(朝比奈常務取締役)こと。これまでは,拠点で判別が付かない血液検体は本社に搬送し,本社にいるスキルを持った臨床検査技師が改めて検査をしていたという。本社に検体が届くのは20~23時過ぎとなるため,検査技師の長時間残業が日常化。さらには一部のスキルを持った検査技師に業務が集中していた。

 もう一つは,病気の判断が遅れるという医療人としてのもどかしさがあったことである。「病気をできるだけ早く発見して患者を救いたいというのが医療に携わる者の倫理観。ところが本社に搬送される検体を待たなければ検査を始められないため,結果的に判断に一晩かかっていた」(朝比奈常務)。

 これらの問題を解決するために,同社では2005年12月から遠隔診断システムの検討を進めていた(図1)。

図1●遠隔で血液を診断できるシステムを導入することで,業務上の数々の課題を解消
図1●遠隔で血液を診断できるシステムを導入することで,業務上の数々の課題を解消

1000倍の血液像を扱うシステムを

 患者の組織細胞や体液の顕微鏡映像を,ネットワーク経由で遠隔地に伝送して診断するシステムは「テレパソロジー」と呼ばれ,さまざまなベンダーが実用化している。サンリツはいくつかのベンダーに問い合わせてみたが,どこも「対応は難しい」との回答だったという。これは,サンリツが血液を検査対象としていることと深く関係している。通常のテレパソロジーが扱う細胞像に比べ,血液検査で求められる画像の細かさが格段に違うからである。一般的な細胞を検査対象とする場合,100倍から200倍の拡大像が扱えれば十分だが,血液を対象にする際は約1000倍の拡大倍率が求められる。

 さらにサンリツのケースでは「動画で映像を送受信できることも必須条件だった」(杉田義弘検査管理グループ・ グループリーダー)。遠隔診断であっても,顕微鏡をその場で覗いているようなリアルな質感を求めていたからである。

 こうした条件を満たすシステムを求める中,杉田グループリーダーはある日インターネットの情報からNTTレゾナントが提供するテレビ会議システム WarpVisionを知る。同社に問い合わせた結果「1000倍に拡大した血液像にも対応できる」との返答を得たため,システム構築をスタートさせた。

高品質テレビ会議システムを応用

 WarpVisionは,もともとパソコンをクライアントとするテレビ会議システムである。最大640×480ドットの解像度で30フレーム/秒の動画映像(符号化技術はMPEG2,利用帯域は8Mビット/秒)を送受信できるという高い映像品質が特徴である。今回のサンリツのシステムでは1000倍に拡大した血液像を高画質で送るために,最高画質を利用している。

 システムの全体像は次のようになる。各拠点にある顕微鏡に3CCDビデオカメラを接続する。ここで取り込んだ検査対象となる血液像を WarpVisionを使って本社に送り,本社の検査技師の手元にあるパソコンに映す。拠点の顕微鏡の倍率などを調整する場合は,本社から声で拠点の担当者に指示内容を伝えている。こうすることで,拠点の検査対象を本社から遠隔診断できるようにした。

 システム導入に伴いネットワークも新設した(図2)。動画を扱うことによる,ネットワークの帯域不足を懸念したためだ。WAN部分にはNTT東日本のエントリーVPN「フレッツ・グループアクセス」を採用。各拠点のアクセス回線は,Bフレッツのベーシックタイプ(100Mビット/秒)を導入した。

図2●サンリツがWarpVision導入のために新設したネットワーク
NTT東日本のエントリーVPN「フレッツ・グループアクセス」使って,4カ所のラボラトリーと本社をつないだ。アクセス回線はBフレッツを採用。

「顕微鏡と違和感のない操作感」

 このようにして構築を進めた遠隔診断システムであるが,臨床検査を担当する検査技師の間には不安があったという。「顕微鏡を見ている時は,フォーカスを当てる位置を変えることで,頭の中で血液細胞を3次元の立体でとらえている。パソコンに映像が表示されるとそれが平面化されるため,顕微鏡と異なる感覚になるのではないか」(同社で臨床検査を統括する吉田隆臨床検査部長)という不安だ。しかし実際にシステムに触れてみると,「映像の焦点の合わせ具合が動画で伝わってくるので,顕微鏡と同じ感覚で血液像を“立体”でとらえられる。顕微鏡と違和感のない感覚で操作できた」(吉田検査部長)という。

人材研修やメッセージ配信にも活用

 同社では2007年1月以降,本格的にシステムを使い始めている。「検体の到着を待たなくて済むようになったので,残業時間が大幅に減った」(朝比奈常務取締役)と,既にはっきりしたシステム導入効果が現れている。これに加え,本社のスキルを持った検査技師が,各拠点の検査技師を指導する場面での活用にも期待を寄せる。

 同社は今回のシステムを社長の朝礼メッセージの配信にも活用している。「離れた拠点では,社長の声を聞いたことがない社員も多かった。社内の活性化のために,社長のありのままのメッセージを伝えたかった。こうした面からも医療の現場を変えていきたい」(朝比奈常務取締役)。