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東北6県と新潟県に電力を供給する東北電力は,本店と支店,営業所など計122拠点のLANを有線LANから無線LANに移行した。導入した米シスコシステムズ製の無線LANアクセス・ポイント(AP)の台数は約2800台。無線LANに接続するノート・パソコンの数は実に約1万3000台に上る。

 「以前は打ち合わせのたびに,紙の資料を印刷して準備する手間がかかっていた。最近はその手間が省けるようになった」。東北電力情報通信部通信ネットワーク技術グループの金子裕一副長(写真1中央)は,無線LAN導入の効果をこう説明する。

写真1●東北電力の無線LAN構築プロジェクトを推進した情報通信部情報プラットフォームグループの熊谷勝也氏(左),同通信ネットワーク技術グループの金子裕一副長(中央),通研電気工業技術本部システム開発グループの佐藤篤氏(右)
写真1●東北電力の無線LAN構築プロジェクトを推進した情報通信部情報プラットフォームグループの熊谷勝也氏(左),同通信ネットワーク技術グループの金子裕一副長(中央),通研電気工業技術本部システム開発グループの佐藤篤氏(右)

人事異動時の工事件数が減る

 同社は2007年2月までに,仙台市の本店や各県庁所在地にある支店,営業所など全122拠点の有線LANを無線LANに移行した。

 無線LANの導入により,冒頭の業務改善だけでなく,工事の手間なども削減できた。金子副長らがそれを確認したのは,7月1日付で行われた約3000人規模の定期人事異動のときだった。これまでは,人事異動があるたびに,移動した端末を有線LANに接続したり,場合によってはオフィスのレイアウトを変更して,有線LANの配線変更工事をしなければならなかった。それが,無線LANを全社的に導入したことによって,従業員は異動先にノート・パソコンを持っていくだけで即座に業務に取りかかれるようになった。配線変更工事の件数も,「これまで50件以上あったが,7月の異動では10件にまで減った」(金子副長)。

 同社がこうした無線LANの効果を得られたのは,122拠点すべての電波環境調査(サイト・サーベイ)をおろそかにしなかったからだ。以下で同社のネットワーク構成,無線LAN機器選定,サイト・サーベイの作業を見ていこう。

MPLS網で本支店とセンターを接続

 東北電力は,業務システムのサーバー群を設置した電算センターと,本店および7カ所の支店間をMPLS網で接続する(図1)。MPLS網を構築するためのコア・ルーターは米ジュニパーネットワークスの「M40e」を導入。コア・ルーターを介して,各拠点間は1Gビット/秒の自営の光ファイバ網で結んでいる。

図1●東北電力が導入した無線LANシステムのネットワーク構成
図1●東北電力が導入した無線LANシステムのネットワーク構成
米シスコシステムズ製のアクセス・ポイントやスイッチを導入し,計122事業所で無線LAN環境を整備した。コア・ルーターは米ジュニパーネットワークスの「M40e」を導入した。
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写真2●無線LANシステムで使用しているセンター・スイッチが入っているラック
写真2●無線LANシステムで使用しているセンター・スイッチが入っているラック

 支店と営業所や技術センター,発電所などとの間は,同社の子会社である東北インテリジェント通信の広域イーサネット・サービスである「高速イーサネット専用サービス」で接続。伝送速度は100Mビット/秒である。

 こうしたWANに支えられているのが本支店・営業所などに敷設した無線LANだ。APにはシスコ製の「Cisco Aironet 1231G」と「Cisco Aironet 1242AG」を採用。合計で約2800台を各所に設置した。

 APはシスコ製のPoE対応スイッチ「Cisco Catalyst 3750」から電源供給を受ける。PoE対応スイッチは,マシン・ルームに設置したシスコ製センター・スイッチ「Cisco Catalyst 6500シリーズ」につなぐ(写真2)。センター・スイッチは冗長構成を取っており,ここからルーターを経由して電算センター内の業務システムなどに接続する。

干渉回避を考えて802.11aを選択

 東北電力は,従業員がオフィス内で自由に端末を持ち運び,省資源化を兼ねて紙の印刷や配布の手間を省くといったワークスタイルを目指していた。その実現手段として,同社は有線LANから無線LANへの移行を2004年から検討し始めた。

 同社は無線LAN APの機器選定にあたり,複数のキーワードを設けて検討した。(1)無線LANの規格,(2)APの管理方式,(3)ローミング方式,(4)セキュリティ──などである。

 無線LANの規格は,5GHz帯を使うIEEE 802.11aと2.4GHz帯のIEEE 802.11b/11gを検討し,同社は802.11aを採用した。その理由は,2005年5月の電波法施行規則の改正によって802.11aのチャネル数が4から8に増加したため。他の機器との電波干渉を回避しやすくなると判断した。もう一つは「無線LANはデータ通信だけの用途を考えていた」(金子副長)からだ。当時はIEEE 802.11bを使う無線IP電話の事例が出始めた時期だった。同社は無線LANをVoIP用に使うつもりはなかったため,802.11aの採用を決めた。