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 富士通は、同社が今年から着手した子供向けの企業広報活動に、具体的な顧客像を設定して関係者間で共有する「ペルソナ」手法を活用していく方針であることを明らかにした。

 ペルソナとは、商品やサービスを開発する際に、あたかも実在の人物であるかのように具体的に設定する架空の顧客像のこと。名前や年齢、住所はもとより、価値観や考え方を表すエピソードや発言を盛り込んだりすることで、どのような顧客をターゲットにするのか、関係者間でイメージがブレないようにするのが同手法の狙いだ。ペルソナのプロフィールには顔写真を張り付けたりすることもある。

小学生向けの広報活動で利用者像を明確化

富士通デザインWEBソリューションデザイン部の吉川嘉修氏(左)と情報アーキテクト・杉村昌彦氏(右)。吉川氏が手にしているのは近日中に公開予定の「富士通キッ
ズ コンテンツ 作成ハンドブック ペルソナ編」、杉村氏が持つのは5月に配布した
同ハンドブック第1弾。
富士通デザインWEBソリューションデザイン部の吉川嘉修氏(左)と情報アーキテク ト・杉村昌彦氏(右)。吉川氏が手にしているのは近日中に公開予定の「富士通キッズ コンテンツ 作成ハンドブック ペルソナ編」、杉村氏が持つのは5月に配布した同ハンドブック第1弾。
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 富士通のコーポレートブランド室は昨年春から、小学生向けの企業広報活動を検討開始した。「子供たちの理数離れについてコンピュータ・メーカーとして何かできないかと考えていた。ウェブサイトを通じて、子供たちにものづくりや技術の楽しさを伝えていく。こうした活動はCSR(企業の社会的責任)の一部だと考えている」(コーポレートブランド室の高橋宏祐担当部長)という。

 そこで、どんな子供をイメージして情報発信するべきなのか、調査開始した。教育関連企業へのヒアリング、子供の生活実態調査報告書の閲覧、小学校の先生や小学生の子供を持つ社員へのインタビューなどだ。

 商品開発などにおけるペルソナの作成では、過去のマーケティング情報などを参考にすることも多い。だが、子供向けの広報活動は同社にとってもあまり例のないものだけに、違うやり方でペルソナを作った。まず文献資料などを参考に簡易なペルソナを作り、そのペルソナをインタビュー先の教員や保護者、識者などに「こんな生徒いるでしょうか」と見せて回った。そうして意見を聞きながら徐々に人物像を具体化していった。

 ペルソナ作成を担当した富士通デザイン(神奈川県川崎市)WEBソリューションデザイン部情報アーキテクトの杉村昌彦氏は「ペルソナを作り、さらに修正のため情報を収集していく作業そのものが、利用者への理解や情熱を深める上で重要なプロセスだった」と振り返る。

 ペルソナを具体化する作業を進めつつ、まずは今年3月に「富士通キッズ:夢をかたちに」という小学生向けのサイトを公開した。

続いて5月には富士通グループ会社を対象に「富士通キッズ コンテンツ作成ハンドブック」を社内配布した。これは、「飽きないようにイラストやアニメーションを効果的に利用する」「短い段落で簡潔に見せ、ページのスクロールを減らす」「小学校高学年までに習得した常用漢字以外は平仮名に」など、子供向けのウェブサイトを構築する際の心得をまとめたもの。さらに今年8月にはサイトに連動する形でパソコンの組み立て教室などのイベントを開いたりもした。

想定する利用者像を3人分設定

 こうした一連の活動においても、ペルソナを意識したとは言うものの、まだペルソナは完成に至っていなかった。その完成版が早ければ10月中にも「富士通キッズ コンテンツ作成ハンドブック ペルソナ編」として富士通グループのイントラネット上で公開される見通しだ。

 完成版ペルソナは「10歳の小学生の女の子」「32歳の担任の先生」「38歳の女児の母親」の3人分になる予定。名前や性格、価値観、趣味のほか、写真も添付する。ウェブサイトの直接の利用者は小学生だが、先生や母親のペルソナも作成したのは、同サイトを使った授業を企画する教師も利用者として想定すべきで、子供のインターネット利用には保護者の理解も得る必要があると考えたためだ。

 ペルソナのプロフィールの記述項目は、3人それぞれ異なっている。例えば、女の子については、学校に通う時間や、習い事に通う時間など、1週間分の生活スケジュールを作成した。あるいは、教師のペルソナについては、パソコンを利用した授業の下調べから授業当日までの作業の流れを記した。

 ただし、せっかくペルソナが作られても徹底的に活用されない懸念がある。ペルソナの制作過程に参加していない社員にはペルソナに対する信頼がないからだ。そこで、ペルソナが今後グループ内でキッズサイトを作る社員から信頼を得られるように、利用した情報源を明示した。3人のペルソナは多くの文献やインタビュー結果を基に構築されている。プロフィールの記述にところどころ下線が引かれて、番号が振られており、ハンドブックの巻末に番号順に出典が記されている。「ペルソナは1人の人間に見えるけれども、マーケティング資料を人間の形に集約したもの」と富士通デザインWEBソリューションデザイン部の吉川嘉修氏は話す。

 ペルソナ作成を担当したスタッフは、今年8月に分社化された富士通デザインに所属している。今回の子供向け広報活動でペルソナ作成の成果を確認できれば、今後、同社の商品開発においてもペルソナを積極的に作成し活用するようになるのかもしれない。

■変更履歴
吉川嘉修氏の所属・肩書きを、当初、富士通総合デザインセンターWebデザイン推進室としていましたが、富士通デザインWEBソリューションデザイン部に変更しました。 [2007/10/23 15:00]