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 ソフトバンクテレコムは,柔軟かつコストを抑えたシステム基盤を構築するため,ストレージの仮想化を進めている。多種多様なストレージ装置の全体最適化や運用管理方法の標準化などにより,ストレージ装置の導入コストや運用管理コストを大幅に削減できた。2007年8月からは,ストレージ仮想化コントローラを利用した遠隔サイトへのデータ・バックアップも順次導入していく。BCP(事業継続計画)対策の一環である。

 同社は,ストレージを仮想化するに当たり日本IBMの「SANボリューム・コントローラー(SVC)」という仮想化コントローラを導入した。SVCは,マルチベンダーのストレージ群を仮想的に統合し,共通したインタフェースでアクセスできるようにする装置である。業務システムが稼働しているサーバーは,SANに接続したSVCを経由してストレージにアクセスする。

余っているのに,他システムから使えず

 ソフトバンクテレコムがストレージの仮想化に乗り出したきっかけは,通信事業のデータ量が急増しているにもかかわらず,ストレージ・システムが複雑で非効率だったからである。複雑さの原因は,多種多様なストレージ装置を利用していることによる。主要なストレージ装置だけで3メーカーの製品を導入しており,そのほかの中・小規模のストレージ装置を含めると,もっと多くのメーカーの製品を導入している。

 これらはすべてSANで接続されているが,ストレージ装置の内部構造や管理方法,操作がメーカーごとに異なっている。このため,「ストレージ装置ごとに別々の運用担当者が付いていた」(情報システム本部ITオペレーション統括部システム基盤部の細田靖部長)。

 ストレージ装置間で,利用率の差も大きかった。例えばある業務システムのストレージで1テラバイト余っていても,それを別のシステムからは利用しにくかった。ストレージの管理方法・操作が異なっていたり,ドライバが違っていたりするためだ。その結果,業務システムとストレージ装置が密接にひも付けられ,ストレージ装置が業務システム別に“縦割り”になっていた。

 「部分最適にはなっていたが,これからは全体最適を目指したかった」(細田部長)というソフトバンクテレコムは,解決策としてストレージの仮想化を選んだ。そのメリットは主に3つある。

 1つは,仮想化コントローラがストレージ装置のメーカーの違いを吸収してくれるため,データの属性に合わせて格納場所を最適化できるようになったことだ。以前は1台の高速・大規模なストレージ装置に,本番データのほか,2世代分のバックアップ・データ,システム改修時に使う検証データなどを一緒に格納することが多かった(図1)。ストレージ装置の高速コピー機能を利用して,本番データを短時間でバックアップしたりする必要があるからだ。この高速コピー機能は,1きょう体内でしか実行できないものだった。

図1●データの保管コストを最適化するストレージ仮想化のイメージ
図1●データの保管コストを最適化するストレージ仮想化のイメージ
サーバー側にはストレージ装置の物理構成を隠ぺいし,バックアップ・データや検証用データを低速・廉価なストレージ装置に移した。異種ストレージ装置間でも高速コピー機能が使える。
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 しかし,本番データの2~3倍にもなるバックアップや検証用のデータを高速ストレージに格納すると,明らかに不経済だった。「1万5000回転/分のハードディスク・ドライブ(HDD)を搭載した高速ストレージは,1テラバイト当たり数百万円の導入コストがかかる。これに比べ,7500回転/分のHDDを搭載した廉価なストレージ装置は,1テラバイト当たり数十万円」(情報システム本部ITオペレーション統括部システム基盤部の神尾英人担当課長)。ストレージ装置にかかるコストが1桁違う。

 そこでソフトバンクテレコムは,バックアップや検証用のデータを低速・廉価なストレージ装置に移し,コストを大幅に抑えた。ストレージ装置間の高速コピーには,SVCのFlashCopy機能を利用する。FlashCopyは,異なるメーカーのストレージ装置間でも,見かけ上は数秒でコピー処理が完了する。

ストレージ追加時のデータ移行も容易

 ストレージの仮想化による2つめのメリットは,さまざまなメーカーのストレージ装置を統一した操作で運用できるようになったこと。「運用管理方法などが標準化されたため,ストレージ装置のメーカーを気にすることなく,誰もが運用管理できるようになった」(神尾担当課長)。3つめは,ストレージ装置のメーカーを問わず,業務システムからすべての仮想化ストレージ・リソースにアクセスできるため,必要なストレージ・リソースを簡単にやりくりできることだ。

 SVCには,業務システムを止めずに仮想環境下のデータを移動させる機能もあるため,「最新型のストレージ装置を導入した際は,基幹系システムのデータをそこに移している。それまで使っていたストレージ装置は,高速バックアップ用や別の業務システム用として使いまわしている」(神尾担当課長)という。

 この8月からは,仮想化コントローラの遠隔コピー機能を使って,リモート・サイトにバックアップ・データを格納し始めた。神奈川県にあるデータセンターの本番データをコピーして,千葉県にあるリモート・サイトに送っている。データ転送量は毎日2テラバイトに上る。従来はテープにバックアップして外部に保管していたが,そのオペレータ・コストを下げるために,バックアップ先をリモート・サイトのディスク・ストレージに変更した。