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 オリックスは2006年10月,「フレックスオフィス」と呼ぶ制度を定めた。セキュリティ対策を施したリモート・アクセス環境を用意し,社員が場所を問わずに業務に取り組めるようにした。

 制度ができてから約1年が経過し,利用する社員の数は着実に増えている。開始当初は約100人だった利用者数は,2007年7月に500人を突破した。

女性が働きやすい環境を整える

 フレックスオフィスを検討したきっかけは,女性社員が働きやすい職場環境を考えるプロジェクト・チームの発足。2005年4月のことである。全社員の4割を女性が占めることから,女性が仕事を続けやすい環境を整備する必要があると判断したのである。

写真1●オリックス 人事・総務本部オフィス企画担当の星野悦雄部長(写真右)と松本薫課長代理
写真1●オリックス 人事・総務本部オフィス企画担当の星野悦雄部長(写真右)と松本薫課長代理

 プロジェクト・チームが検討を進める過程で,「オフィス空間のフレックス化」というアイデアが浮上した。フレックス・タイム制度によって働く時間帯に柔軟性ができたように,業務に取り組む場所に柔軟性を持たせようという発想である。「保育園に預けた子供を迎えた後,必要であれば自宅でも業務をこなせる環境を整えようと考えた」(人事・総務本部オフィス企画担当の松本薫課長代理,写真1左)。

 2005年10月から,子供を抱える女性社員らをモニターとしてノート・パソコンを貸与し,外出先や自宅で業務をしたいときに使ってもらうことにした。さらに11月には,男女を問わず利用できる形態に改め,70人のモニターを公募した。3カ月ほど運用した後,2006年3月にフレックスオフィスを正式に稼働させる準備に入った。


利用アプリは制限せず安全策を徹底

 フレックスオフィスを本格的に運用するには,安全なリモート・アクセス手段が欠かせない。オリックスはインテグレータ5社に提案を募った。

 提案依頼書で求めたポイントは大きく二つある。(1)高レベルの安全性を実現することと,(2)全面的なアウトソーシングに応じてもらえることである。

 (1)の安全性については,ユーザー認証はもちろん,Windowsのパッチ・ファイル,ウイルス対策ソフトのパターン・ファイルの更新などを自動的に実行する検疫ネットワークの整備を要望した。「フレックスオフィスの目的は,自席と同じ業務環境の提供。外部からアクセスするときも,利用できるアプリケーションを制限したくない。その分,社内ネットワークへの接続に当たっては,セキュリティ対策を徹底したかった」(人事・総務本部オフィス企画担当の星野悦雄部長,写真1右)。

 (2)のアウトソーシングについては,VPN装置やパソコンなどの設備をオリックスが資産として持たずに済むことや,インフラの運用を委託できることを要望に盛り込んだ。

 5社の提案を検討した結果,富士通の案を採用した。パソコンの操作説明などのヘルプデスク機能まで委託できる点や,自社ブランドのパソコンを販売していることなどを評価した。

3種類の“オフィス”を設ける

 富士通案を採用したオリックスは,3種類の“オフィス”を設けた。外出先からの利用を想定したモバイル・オフィス,在宅勤務用のホーム・オフィス,主要事業所に共用端末を用意するサテライト・オフィスである(図1)。

図1●オリックスが「フレックスオフィス」向けに整備したネットワーク
図1●オリックスが「フレックスオフィス」向けに整備したネットワーク
モバイル・オフィス,ホーム・オフィス向けに,SSL-VPNを使ったリモート・アクセス環境と検疫システムを整備した。運用やサポートは富士通に全面的に委託している。このほか,オリックスの主要事業所に共用端末とネットワークを用意してサテライト・オフィスを整備した。
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 モバイル・オフィスとホーム・オフィスは社外から社内に接続する。これらはまず,検疫ネットワークに接続してセキュリティ診断を受ける。パッチ・ファイルなどをすべて適用してから,富士通のセンターに設置してあるVPN装置へ接続。ユーザー認証を経て社内ネットワークにつながる。

写真2●社員が利用する専用クライアント・ソフトの画面
写真2●社員が利用する専用クライアント・ソフトの画面

 検疫ネットワークは,米国の事業者のサービスを採用した。「採用したサービスは他の企業と検疫用サーバーを共用するタイプなので割安だ。しかも各クライアントのセキュリティの状態をサーバー側で管理できるなど,機能面も優れている」(富士通 システムサポート事業本部LCMサービス統括部LCMサービス部の秋山健二氏)。

 社員に貸与するパソコンには専用のクライアント・ソフトが導入されている(写真2)。社外から社内に接続する際は,このソフトから「接続タイプ」を選び,接続ボタンを押すだけで済む。検疫サーバーへの接続などの一連の手順は,ソフトが自動的に実行する。

 VPNの実現手法にはSSL-VPNを採用した。ただし,一般的なSSL-VPNでは,利用できるプロトコルやアプリケーションに制限が付くことがある。そこでオリックスはIPsec同様のトンネル・モードを使い,社内ネットワークと同等のアプリケーション使用環境を実現した。

 これらのネットワークの構築・運用には,富士通のネットワーク・サービス「FENICS」とアウトソーシング・サービスである「Mobile-LCM」,「PC-LCM」サービスを活用している。