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 JCBが来年の北京オリンピックを前に中国におけるクレジットカード事業を加速させている。

 同社は1980年代に中国に進出して加盟店開拓を進めてきたが、外国人向けホテルなど一部の加盟店で使えるにとどまっていた。2000年代になって中国国内でのクレジット事業の規制緩和やインフラ整備が進んだ。経済成長も相まって、急成長への体制を整えつつある。

 中国では2002年に国策として、「銀聯」という決済ネットワークが整備された。銀聯に接続した決済端末は、百貨店やスーパーだけではなく、ファストフード店などにまで広く普及している。基本的にこの端末があれば、JCB、VISA、Masterなど主要国際ブランドのクレジットカードがすべて使える。こうした背景から国際クレジットカードの普及が加速。銀聯の発表によると今年半ばまでに累計発行枚数が4500万枚に達し、毎年1000万枚以上のペースで増えている。

 JCBは2005年から中国でのカード発行を始め、現在の会員数は100万人超。発行枚数のシェアは、先行したVISAとMasterが9割以上を占め、JCBはまだ数%にとどまっている。JCB上海拠点の和田浩一郎・首席代表は、「多少出遅れたが、引き続き市場の拡大が見込める。他のブランドもJCBも使える店の数が対等という環境で勝負ができる。シェアの目標は設定せず、独自の戦略を推進していく」と話す。

 独自の戦略とは、日本で長年かけて浸透が進んだ、対象顧客層を絞った提携カードの推進である。日本では女性向けの「JCB LINDA」などを発行しているが、中国でも「コスモポリタン」などファッション誌と提携したカードを発行。「ハローキティ」ファン向けのカード、上海の高級百貨店「久光」や、湖南省に進出する日本のスーパー「平和堂」との提携カードもある。「中国市場はスピードが速い。2005年当初は(JCBブランドだけの)一般カードを発行したが、今はもう提携カードが主流になっている」(和田氏)

 JCBは日本では自社でクレジットカードを発行しているが、中国の法規制では、現地の銀行以外はカードを発行できない。そこでJCBは中国銀行など5つの銀行と提携し、これらの銀行がJCBブランドのカードを発行している。

JCBが中国で発行するカード   JCBが中国で発行するカード。全てに「銀聯」マークと現地の銀行名が入る。中国風の衣装を着た「ハローキティ」のカードや、平和堂との提携カードなどバリエーションは多彩
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決済情報は即時に携帯電話に通知

JCB上海拠点の和田浩一郎・首席代表
JCB上海拠点の和田浩一郎・首席代表

 中国のクレジットカードには、日本にはない特徴がある。例えば、クレジット決済の金額や利用場所などの明細情報を、利用と同時に携帯電話にメール通知する仕組みだ。クレジット伝票にサインをしている間にメールが届く。こうしたサービスは日本では珍しいが、中国ではJCBも含め、多くのクレジットカードで標準サービスになっている。

 情報システムの整備が進んでいることもあるが、補償制度の違いが大きい。「日本のクレジットカードでは60日間程度さかのぼって不正利用分を補償してくれるので、月次の利用明細を確認すればそれで十分。中国のクレジットカードでは補償は1~2日以内に自己責任で申告しないといけないので、即時通知のニーズがある」(和田氏)。中国では会員が自分の利用分を「不正利用」と主張して補償を求めるケースも少なくないようで、これを防ぐため「性悪説」に立った仕組みになっているわけだ。

 一方で、スキミングなど本来の意味での不正利用は、「与信枠が限られていることもあって、中国ではまだ少ない」(同)。中国政府は、カードの与信枠を最大5万元(約75万円)に規制している。実際には、かなりの収入があっても1万元(約15万円)程度の利用限度額のカードが発行されることが多い。日本など他国に比べ、カード犯罪の「メリット」が限られるというわけだ。

 中国と同様、近年急速にクレジットカードが普及した韓国では、カードの使い過ぎが社会問題になっている。与信枠規制の背景には、「中国政府は韓国などの失敗から学んでおり、かなり保守的に、健全なクレジット産業の発展を目指している」(同)という事情があるようだ。