PR

 サントリーが社員に「お客様第一」を徹底するための「VOC(ボイス・オブ・カスタマー=顧客の声)」活動を強化している。

 主幹部門のお客様コミュニケーション部が中心になって展開しているのが、社内における「お客様視点プロジェクト」。このプロジェクトは、サントリーの主要拠点や研究所などの社員を対象とした社内研修「お客様視点気づき講座」と、顧客からの問い合わせやクレームの電話を受けるコールセンターであるお客様センターでの1日体験実習「お客様視点体感プログラム」の大きく2つから構成されている。

 2007年2月には、顧客の声を蓄積して全社で共有するための新システム「NEO HarmoniCS(ネオハーモニクス)」も稼働させており、VOC活動が加速している。サントリーはそれまで、独自に顧客の声の共有システムを開発してきたが、電話や電子メールで寄せられる顧客の声の一元化や検索レスポンスの向上を狙って、前システムの稼働からわずか3年で新システムに切り替えた。このことからも、VOC活動にかけるサントリーの本気さがうかがえる。新システムは東芝ソリューション(東京都港区)のパッケージソフト「CT-SQUARE」を使って開発している。

電話応対の体験実習に希望者が殺到

 2007年7~8月に実施したお客様視点気づき講座では、お客様センターに寄せられている顧客の声を90分かけて社員に実例で紹介。特に2007年は、中国産の食材に対する顧客の不信感の高まりから、サントリーに対しても中国産の原材料を使う烏龍茶への問い合わせが数多く寄せられていることが説明された。

 これに対し、お客様コミュニケーション部は素早く対応し、サントリーの烏龍茶が安全であることをホームページに明記したことなども社員に説明した。こうした顧客の生の声の活用を社員に伝えることで、商品開発や営業などの担当者にも日ごろから顧客の視点に立って行動することの大切さを訴える。

 お客様視点気づき講座での合言葉は「100-1=0」であり、これは「たった1人の社員の間違った行動でサントリー全体(100)が否定され、これまで築き上げてきた顧客からの信頼が一瞬にしてゼロになり得る」(亀田敦・お客様コミュニケーション部マーケティングサポートセンター課長)ことを意味している。

 こうしたお客様視点気づき講座の開催は、サントリー社員の顧客に対する意識を大きく変え始めているようだ。その証拠に、お客様コミュニケーション部が一般社員向けに実施しているお客様センターでの電話応対体験であるお客様視点体感プログラムへの参加希望者が、ここにきて急増している。2005年に部課長を対象に始まったこの体験プログラムを、お客様コミュニケーション部は2006年から一般社員にも解放しているが、昨年は募集定員と同数ほどの参加希望者しか表れなかった。だが2007年は、社内で「キャンセル待ち」が出るほど関心が高まっているという。これまでに合計で約60人がプログラムを体験済みだ。

 お客様センターでの体験実習では、実際にその時間帯にかかってきた電話に出てもらうため、お客様コミュニケーション部も一度に最大で6人の体験者までしか受け入れられない状態だ。まず午前中に座学の講義を受けて電話応対のいろはを学び、午後に10件ほどの電話に出てもらう。

 サントリーのお客様センターにかかってくる電話の件数は1日に400件(年間12万件)ほどで、「そのうちの約15%がクレームなどの当社へのご指摘だ」(亀田課長)。残りの85%は「どこで商品が買えるのか?」といった問い合わせである。プログラム体験者が電話に出る場合、確率的に言えば、10本のうち1~2本は顧客からのクレームであることも考えられるが、そうした電話であっても顧客と受話器越しに直接向き合うことで、「お客様の心を知ってもらう」(同)。

 一般社員にとって、顧客からの電話に出ることは勇気のいることでもあるが、自ら志願した社員たちの体験後のアンケートでは「やってみてよかった」との意見が大勢を占めているという。亀田課長によれば、「体験者はお客様コミュニケーション部が社内で定期的に発信しているVOCのレポートの読み込みが深くなる」という印象を受けているという。

一般社員が「お客様センター」の電話を実際に受けるコールセンターでの1日体験実習「お客様視点体感プログラム」の様子   一般社員が「お客様センター」の電話を実際に受けるコールセンターでの1日体験実習「お客様視点体感プログラム」の様子
[画像のクリックで拡大表示]

 サントリーは通常、お客様センターで受けた顧客からの電話の内容は逐一、ネオハーモニクスに入力しており、登録直後からリアルタイムで社員が閲覧できるようにもしている。しかも、受け付けた顧客の声を無駄にしないため、商品開発部門や包材部門、営業部門などの各部門とお客様コミュニケーション部が定例で開く「VOC会議」で、その後の対応策とその実行度合いを確認し合っている。お客様視点プロジェクトの浸透によって、全社員がVOCを起点にしてPDCAサイクルを回し続けることで「顧客対応品質」を上げていく。