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電源や情報コンセントにも配慮

 顧客サービスの質を高めるための配慮はこれだけにとどまらない(図3)。客室にはN902iLのほかに,メイン・ルームやベッド・ルーム,バス・ルームに固定電話が複数台備え付けてあるが,それらにもこだわった。「デザインから操作性,ホテルのバックエンド・システムとの連携まで含めて当社の研究開発部門が独自開発したもの」(アイザック氏)だという。電話機には,携帯電話の電話帳を転送できる「Bluetooth」ボタンやSkypeOutで外線を発信する「VoIP Phone」ボタンまで付いている

図3●客室の主な設備
図3●客室の主な設備
すべての客室(314室)に,NTTドコモのFOMA/無線LANデュアル端末「N902iL」のほか,ファクシミリ/プリンタの複合機,インターネット・ラジオを配備した。情報コンセントや電源コンセント,テレビの入力ポートなどにも細かい配慮を施してある。
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 このほか,ファクシミリ/プリンタの複合機,インターネット・ラジオも全室に配備した。メイン・ルームにあるテレビには,パソコンを接続するためのVGA入力端子,CF(compact flash)やSD(super density)向けのメモリー・カード・スロットまで付いている。電源コンセントに関しては,海外からの宿泊客を想定して200Vの電源も用意するという徹底ぶりだ。

 ネットワークは全客室にエッジ・スイッチと無線LANのアクセス・ポイント(AP)があり,宿泊客は有線/無線の両方でインターネットに接続できる。音声はIP化しているが,自社開発の固定電話機とファクシミリはアナログ回線専用となっている。このため,VoIP(voice over IP)アダプタ経由でエッジ・スイッチに接続している。有線LAN経由の通話は同時最大2通話,無線LAN経由のN902iLを含めて同時最大3通話が可能である。この3つのチャネルは呼制御サーバー側でグループ化してあり,呼び出しの際は客室にあるすべての電話機が鳴る

 ギガビット・イーサネットを利用したバックボーンはデータ系(インターネット接続)と音声系に分かれる。エッジ部分は音声とデータのトラフィックが混在するが,LANスイッチの優先制御機能や無線LANアクセス・ポイントのCAC機能で音質を確保した。

無線LANは99.9%のカバー率を要求

 ネットワーク構築で最も苦労したのは無線LANの部分。アイザック氏がNECに要求した条件は「客室だけでなく,廊下や階段,エレベータ,地下の駐車場までホテル館内の99.9%を無線LANのエリアにすること」。さらに,すべての無線LANのAPはホテル内の景観を損ねないように壁の内側に隠すビルトインが前提となった。

 そこでNECは,APの設置場所を随時変更できるように配線を増やすことにした。図面段階でシミュレーションした設置場所とは別に「配線を2倍程度用意した」(実際のネットワーク構築を担当したNECエンジニアリング 第一システムソリューション事業部コーポレートソリューション部の日座和成氏)。電波干渉や信号強度で問題が発生した場合はケーブルの点検口を開けてAPを移動できるようにした。

 実際,この効果は大きかったという。APの設置は建設会社やケーブルの敷設会社と打ち合わせを繰り返して万全の体制で望んだが,工事が始まって現場に行くとシミュレーションと違う結果が出ることが少なくなかった。「チャネルの干渉はほとんど問題なかったが,信号強度の微調整に苦労した。フロア構成が一般オフィスに比べて複雑で,電波が極端に減衰することがあった。歩き方によってはハンドオーバーがうまくいかなくなることもあり,何度も歩き回って検証した」(日座氏)。

 最終的に導入したAPは約450台。これは想定の範囲内で,「途中から追加したAPはどうしても電波が届かない階段など10台以下で済んだ」(日座氏)。なお,99.9%のエリア・カバー率を実現するため,無線LANのAPは館内の各エレベータのカゴの上にまで設置してあるという。

ここがポイント

目的:顧客満足度の向上

機器:NTTドコモの「N902iL」

導入時期:2007年9月

効果:宿泊客の利便性を高めると共に,従業員の顧客対応の迅速化を実現

●ホテル・プロフィール
開業: 2007年9月1日
従業員数: 約550人
客室数: 314室
施設: 地上24階,地下4階
敷地面積: 4343.62m²

●ネットワーク・プロフィール
無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)を導入。アクセス・ポイントの総数は約450台。ギガビット・イーサネットを利用したIPネットワークに音声とデータを統合している。