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 積水化学工業は2007年8月,同社グループの従業員約2万人が利用するメール環境を刷新した。老朽化したハードウエアのリプレースを機にメールボックスを保持するHDDの容量を従来の10倍に増やしたほか,これまで使っていたWebメールのユーザー・インタフェースを一新した。開発は,NTTデータとの合併会社であるNTTデータセキスイシステムズと共同で実施した。

 今回刷新したメール・システムは,現行システム同様,すべてオープンソース・ソフトウエアを採用した。SMTPサーバーはプラグインなどの拡張性が高い「qpsmtpd」。IMAP(internet message access protocol)サーバーは「Courier-IMAP」。Webメールのアプリケーション・サーバーは「Apache」である。

開発では柔軟性と迅速性を重視

写真1●Webメール刷新の指揮を執った積水化学工業の原和哉コーポレート情報システムグループ担当部長
写真1●Webメール刷新の指揮を執った積水化学工業の原和哉コーポレート情報システムグループ担当部長

 積水化学工業がオープンソースにこだわった理由は,柔軟なシステムを迅速に開発できる点にある。

 積水化学グループは住宅販売からバケツ製造まで数十の事業を抱えており,エンドユーザーからの要求は多岐に渡る。「事業が異なる様々なエンドユーザーからの要求に応えるには,開発を迅速かつ柔軟に進められるオープンソースが最適」と,積水化学工業の原和哉コーポレート情報システムグループ担当部長は説明する(写真1)。

 積水化学はメールだけでなく,イントラネットのシステムでも,オープンソースの利用実績があった。同社のイントラネット・システム「Smile」(スマイル)はオープンソースを全面採用。その結果,他社のシステムでは見られないユニークなシステムに仕上がっている(写真2)。

写真2●積水化学工業のイントラネット・システム「Smile」の画面
写真2●積水化学工業のイントラネット・システム「Smile」の画面
Smileでは,オープンソースを組み合わせて,ポータル・サイトやグループウエアを構築した。
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 例えば,グループウエアとして提供されるスケジュール機能では,メンバー全員のスケジュール一覧表をプロジェクトごとに作成可能となっている。「そのプロジェクトをクリックするだけでメンバー全員の空きスケジュールを確認できる。社員は複数のプロジェクトに携わるため,ミーティングを開く際は大変重宝する」(原担当部長)。

 またスケジュールには,震災時など非常事態を考慮した機能が搭載されている。通常,詳細なスケジュール情報は非公開の設定が可能だが,非常事態の際には,システム管理者のボタン一つで,グループ2万人の居場所を一斉に公開できる。

 イントラネット・システムのSmileでは,ほかにもユニークな機能を提供している。インターネットへの接続許可である。定期的に実施されるeラーニングに合格しなければ,インターネットへのアクセスが自動で拒否されるようになっている。また,インターネット閲覧に欠かせないウイルス対策ソフトやインベントリ・ソフトの有無も,Smile上から確認できる。

使い勝手を高めるためにAjax採用

 今回大幅に刷新したWebメールにも,Smileでのこだわりが受け継がれた(図1)。従来よりも大幅に使い勝手を高め,市販のグループウエアやGmailなどのフリー・メールにも劣らない出来に仕上げたという。

図1●2007年8月に刷新した積水化学工業のWebメール・システム
図1●2007年8月に刷新した積水化学工業のWebメール・システム
Ajaxを採用して使い勝手を高めた。ホワイトリスト/ブラックリスト機能や誤送信防止機能なども搭載し,かゆいところに手が届くシステムに仕上げている。
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 まず,エンドユーザーからの要望が最も多かったドラッグ・アンド・ドロップによるメールの振り分けをサポート。Ajax(asynchronous JavaScript+XML)の全面採用で実現した。

 通常,Ajaxの採用でWebサーバーの負荷は以前より高くなる。「以前の倍の8台のサーバーで負荷分散したため,レスポンス性能はこれまでとそれほど変わらない」(原担当部長)。

スパムのBL機能や誤送信防止も実装

 新システムでは,大量に送り付けられるスパム・メールにも対処した。それまでは,スパム・メールだけでメールボックスがいっぱいになることがあったからだ。

 具体的にはスパム対策アプライアンスをマカフィーの「SCM 3200」に切り替えてスパムの検知率を上げるとともに,Webメール上で設定できるブラックリスト/ホワイトリスト機能を追加。エンドユーザー自身の手で設定できるようにした。

 このほか,送信メールに社外ドメインのアカウントが含まれている場合にあて先のメール・アドレスを再表示する誤送信防止機能や,グループ内で働く外国人向けに英語版のメニューを用意した。

旧グループウエアが利用率向上阻む

 積水化学は,SmileでAjaxを採用した実績があったため,今回のメール・システムの刷新では大きなトラブルは発生しなかった。ただし,当初の計画に比べてシステムの利用率が低いという課題が残っている。

 利用率はシステムの種類によって異なる。「メールの利用率はほぼ100%だが,グループウエアは75%,ポータル・サイトにいたっては50%」(原担当部長)とフル活用と言えるまでには至っていない。各拠点が独自にNotes/Dominoなどのグループウエアを運営してきたことが,Smileで提供されるシステムの利用率向上の妨げになっていると見ている。

 そこで今後は,利用率向上に向けた改良を施していく。「イントラネットの画面を個人ごとに自由にレイアウト変更できるようにするなど,便利でありながらかつ楽しめるイントラネットに進化させていく」(原担当部長)ことで,利用率を高める考えである。

ここがポイント

目的:使い勝手に優れるメール環境の構築

機器:メール・システムにはオープンソースを,スパム対策ではマカフィー製品を採用

構築期間:2007年2月から6カ月

効果:ユーザーの利用率はほぼ100%

●会社・プロフィール
本社: 大阪市北区,東京都港区
拠点数: 約400(グループ全体)
売上高: 連結9261億6300万円(2007年3月期)
従業員数: 約2万人(グループ全体)

●ネットワーク・プロフィール
約400拠点の大半は,BフレッツとADSLで2重化し,中継拠点となる通信センターと接続。通信センターとデータセンターは,マルチキャリアの広域イーサネット。