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 東芝が1999年から取り組んできたシックスシグマをベースとする業務改善活動「MI(マネジメント・イノベーション)活動」が、新たなフェーズを迎えた。2005年の西田厚聰社長の就任以降、「アイキューブ」と呼ぶ業務革新活動を導入している。アイキューブとは「I(イノベーション)の3乗」を意味し、研究開発、設計製造、営業など複数の業務分野で、同時にイノベーションを起こし、新規事業開拓や次世代の基幹技術開発などを組織横断で迅速に立ち上げることを目指している。「MI活動をベースにしながら、同活動でやりきれなかった会社の本質的な課題を解決する活動と位置付けている」。両活動の推進事務局を務める奥住直明イノベーション推進本部イノベーション推進部長は話す。

 もともとMI活動は、米GEのシックスシグマをベースに開発した改善手法だ。顧客の声などを基に経営課題を抽出し、現場で解決できる範囲までドリルダウンして、独自の分析手法を使って徹底的にデータで定量成果を検証しながら、プロセス改善を行う。改善のコンサルタント役を務める「ブラックベルト」を社内で育成し、全グループで累計3万件を超えるプロジェクトを立ち上げて、課題解決に取り組んできた。

 特に、現在東芝の好業績をけん引するセミコンダクター社、電力システム社といった事業部門は、当初からMI活動に積極的に取り組んできた。「取り組み当初は、『MI活動で各現場では多大なコスト削減効果が得られたのに、会社全体の業績は赤字』といった矛盾に苦しんだ時期もあった」(奥住室長)が、事業戦略や財務目標との連携を強化することで、PDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルが全社に定着しつつある。

 例えばセミコンダクター社の主力半導体工場では、膨大なパラメータを調整しながら歩留まりの向上に日々取り組むが、数年前からこれらのデータ解析に米スポットファイヤ社のデータマイニングツール「DecisionSite」を導入して毎日の分析に駆使している。「毎朝の会議で、このツールを使って前日のプロセスの状態を分析し、どのような改善を行うべきかを討議している」(奥住室長)。この導入もMI活動の成果の1つであり、イノベーション推進部では、他の量産系の事業部でもこのツールを横展開していくことを検討している。

セミコンダクター社の主力半導体工場では、データマイニングツールを使って製造工程のデータ解析を行い、日々の歩留まり向上に取り組む
セミコンダクター社の主力半導体工場では、データマイニングツールを使って製造工程のデータ解析を行い、日々の歩留まり向上に取り組む
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「データドリブンで仕事を進めるMI活動の文化をさらに発展させていく」と話す奥住直明イノベーション推進本部イノベーション推進部長
「データドリブンで仕事を進めるMI活動の文化をさらに発展させていく」と話す奥住直明イノベーション推進本部イノベーション推進部長

 このように「データドリブンで動き、判断する」風土を醸成してきた強みをアイキューブ活動で発展させる。課題をブレークダウンして、現場に「解く」ことを課すMI活動に対し、アイキューブでは複数組織を横断するプロジェクトを組み、各カンパニーの副社長クラスがリーダーとして解決の責任を負う。従来よりも全社的な重要課題に取り組む志向を強め、マネジメント層のコミットメントを高める。「MI活動の反省として、課題をブレークダウンする過程で、部長が課長に、課長が主任へと課題を『丸投げ』してしまう傾向があったことが否めない。アイキューブではカンパニーの上級役員やコーポレートスタッフが課題を考え、古口榮男代表執行役副社長が委員長を務めるコーポレートの選考委員会で認知したうえでプロジェクトのオーナーを決めてスタートさせる。従来のMI活動では取り組めなかった大きな課題を解決すると同時に、全社的なプロジェクトとすることで、プロジェクトリーダーをはじめとしたマネジメント層の責任を明確にする狙いがある」と奥住室長は話す。

 取り組みの主体がマネジメント層になっても、「仮説を立てて実行し、データで検証する」というPDCAの繰り返しであることには変わりない。毎年表彰式を開き、優秀活動をたたえるという仕組みもMI活動を踏襲している。様々な改善活動の成果を指標化して評価するMI活動のノウハウを生かし、価値を定量的に表すことが難しかった「イノベーション」の評価指標作りにも取り組んでいく。