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 計装分野の機器の製造・販売,保守を手がける日本工装は,2007年7月から10月にかけて「WAN高速化装置」を導入した。導入した拠点は,東京都中央区の本社,インド南西部のケララ州パラカドにある事業所,そして中国江蘇省の無錫に設けた事業所の3拠点である。

 パラカドと無錫の拠点は,それぞれインターネットVPNで東京と接続している。ところが東京とパラカド,東京と無錫の間はいずれも,通信の遅延が大きいという問題があった。それを解消するのがWAN高速化装置を導入した狙いである。同社が採用したのは,米リバーベッドテクノロジーの「Steelhead」。各事業所に1台ずつ,計3台導入した。

一部業務のインド移管を計画

写真1●左から日本工装システム事業部の藤本幸樹氏,システム事業部開発課の八嶋克之氏,システム事業部の本島信一課長
写真1●左から日本工装システム事業部の藤本幸樹氏,システム事業部開発課の八嶋克之氏,システム事業部の本島信一課長

 Steelheadの導入は,一部業務を同社のインド事業所に移す計画が出てきたことに端を発する。2006年末に社長からシステム事業部に対して「ワークフローの一部作業をインドで実施して,コスト削減につなげてほしい」という指示が出されたのだ。具体的には,顧客に納める前に,仕様書などをまとめた文書の確認作業をインドで実施するものである。この話が出る以前,インドに事業所はあったものの日印間の通信ニーズはあまりなかった。そのため,同社は業務移行のプロジェクトを立ち上げて,通信状況の調査に乗り出した。

 パラカドの事業所には,ブロードバンド回線が引かれている。インド国営の通信事業者であるBSNLが提供しているADSLだ(図1)。伝送速度が下り最大2Mビット/秒と同256kビット/秒の2回線を導入しているが,「数Mバイトのデータを日本とやり取りするのに1時間かかる」(システム事業部開発課の八嶋克之氏,写真1)状態だった。また,時間がかかると途中で通信が切れてしまうことが多かった。送信中に通信が途切れ,後からデータを再送するケースもあったという。これでは業務の遂行に支障が出てしまう。


図1●日本工装の国際ネットワークの概要と課題
図1●日本工装の国際ネットワークの概要と課題
日本とインド,日本と中国をインターネット経由で結んでいるが,通信が遅かったり正常にデータの送信が完了しないケースがあった。
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図2●3拠点に1台ずつSteelheadアプライアンスを置き通信を高速化
図2●3拠点に1台ずつSteelheadアプライアンスを置き通信を高速化
対向で機器を設置し,その間の通信を最適化する。
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月額コスト増で帯域増強を断念

 通信状況の解消策として,プロジェクトは二つの解決策を検討した。一つは帯域を増やすこと,もう一つはWAN高速化装置を導入することだった。

 まずBSNLが提供する通信サービスの料金を調べたところ,パラカドの事業所に2Mビット/秒の専用線を引くと日本円で月額80万円かかるという。日本でも同速の専用線を借りる前提で試算すると,日印合計で月額160万円近くのコスト増になると判明。通信回線の月額コストがネックとなり,同社は帯域増強策を断念した。

 一方のWAN高速化装置は,初期費用は専用線より高かったが,運用コストは専用線より低かった。「極力運用コストがかからないようにする姿勢で選んだ」(システム事業部の本島信一課長)結果,同社はWAN高速化装置を導入する道を選んだ。

 同社が導入したSteelheadの購入価格は東京,パラカド,無錫の計3台で400万円台だった。保守料金は,3台合わせて年間100万円を切る程度だという。初期導入費用は専用線より高くつくが,月々の運用コストはSteelheadの方がかなり安上がりになる。

 同社はSteelheadをインターネットで調べて探し出した。そしてメーカーであるリバーベッドテクノロジーに,海外展開している販売代理店の紹介を依頼。紹介の中からネットマークスを選んだ。日本工装の八嶋氏は,ネットマークスを選んだ理由として,サポート体制を挙げる。「例えばテスト費用を取らずに,効果が確認できるまで機器を貸してくれた」という。

 ネットマークスは,地理的にインドに近いシンガポールに事業所を持っている。そこにSteelheadの予備機をストックしている点や,同社がインドのシステム・インテグレータ大手であるウィプロとパートナー契約を結んでいた点も評価した。

500Mバイトの送信,1時間が1分に

 日本工装は2007年4月,日印間よりもさらに遅延が大きく通信状況が悪かった日中間(東京と無錫)でSteelheadのテストを実施した。

 無錫の事業所には,現地の通信事業者であるチャイナ・テレコムが提供する100Mビット/秒のFTTHを導入していた。ブロードバンドが使える環境にはあるものの,インターネット・メールが届かずに戻ってきてしまう現象が頻繁にあった。メールが送信できなかった原因はいまだ不明である。

 同社は日中間でSteelheadの効果が確認できれば,日中間より遅延が少ない日印間でも効果が出るだろうと考え,まずは日中間でテストを実施した。Steelheadは,通信をする拠点に対向で置いて使う製品であるため,テスト機を東京と無錫に設置し,メールの送受信ができるかどうかを確認した。その結果,メールがきちんと届くようになったという。

 Steelheadは,本体のハードディスク内に送受信データをキャッシュする機能を備える。またTCP通信でコネクションを確立するまでの手順である3ウエイ・ハンドシェイクを最適化する機能がある。テストの結果,それらの効果が見られたと判断し,導入を決定した。Steelheadは,東京とパラカドの間は2007年8月,東京と無錫の間は同年10月に使用を開始した。

 導入後,東京と無錫で約500Mバイトのデータを送信したところ,1時間近くを要した。ところが再送すると,わずか1分で送信が終了した。また,通信の途切れにも効果があった。途切れたとしても,送信し終わった部分まではキャッシュされているため,再送時の通信が最適化され,短時間でデータを送ることができた。

 遅延解消に役立ったWAN高速化装置だが,日本工装では実際に使い始めてから,追加してほしい機能が出てきた。Steelheadが内蔵するハードディスクに蓄積されたキャッシュを別の機器にバックアップできるようにすることだ。現時点ではこの機能はなく,キャッシュがなくなると最初からため直すことになる。メーカー側も,キャッシュのバックアップ機能の追加を検討しているようだ。

ここがポイント

目的:遅延がもたらすデータ送受信環境の改善

機器:WAN高速化装置「Steelhead」を採用

構築期間:2007年4月~10月

効果:メールやファイルをスムーズに送受信できるようになり,業務効率が高まった

●会社・プロフィール
本社: 東京都中央区
拠点数: 27
売上高: 300億~350億円(グループ全体)
従業員数: 約200名

●ネットワーク・プロフィール
国内と中国およびインドの拠点をインターネットVPNで接続。アクセス回線には,ADSLやFTTHなどのブロードバンドを多用。海外拠点もブロードバンド化。