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写真1●左からヤマサ醤油 経理・総務本部情報システム管理室の仲川宏志室長,網谷佳久室長代理,佐々木泰明主任
写真1●左からヤマサ醤油 経理・総務本部情報システム管理室の仲川宏志室長,網谷佳久室長代理,佐々木泰明主任

 ヤマサ醤油は2007年12月,千葉県銚子市の本社内のLANを刷新した。敷地内に光ファイバを敷設するとともに,冗長化構成のリング型ネットワークを構築した。リング型を採用したのは,「障害が発生しても,止まらないネットワークにする」(ヤマサ醤油 経理・総務本部情報システム管理室の仲川宏志室長,写真1左)ためである。リング型を実現するため,同社はループ防止・冗長化機構である「EPSR」(Ethernet protected switched ring)機能を搭載したスイッチを導入した。


部門で異なる三つのLANが並存

 ヤマサ醤油の本社は,東京ドーム約5個分という広大な敷地に工場など100棟以上の施設が建ち並ぶ。同社はこれらの施設を結ぶLANを,約15年前から構築・運用してきた。当初は研究,製造,経理・総務の3部門がそれぞれ独立してLANを運用しており,使用する通信プロトコルも異なっていた。

 これら三つのLANは,全社的に利用するグループウエア導入を機に統合。さらに,グループウエア以外にも様々な業務アプリケーションをLAN上で利用するようになった。

 こうしたLANの利用が業務に不可欠になるにつれて,ネットワークの障害対応が課題として浮上した。前述のように同社は,もともと三つに分かれていたLANを統合しており,さらに端末数の増加に対応するため拡張を繰り返していた。

 LANの構成はバス型を採用していた。この方式では終端抵抗に接続した同軸ケーブルに機器をつなげていくことで,容易にLANを拡張できたものの,「ネットワークを網の目のように継ぎ足して拡張していたため,管理が困難になり限界に近づいていた」(経理・総務本部情報システム管理室の網谷佳久室長代理,写真1中)。

 例えば,ネットワークの障害が発生した場所を特定するだけでもひと苦労だった。障害個所を歩き回って点検し,見つけ出すのに半日かかることもあったという。

 そこでヤマサ醤油は,LAN刷新を契機にバス型からリング型への移行を決めた。網谷室長代理はリング型を,「障害が発生した際に,速やかにリカバリできる」と評価している。

障害検知から50ミリ秒以内に復旧

写真2●リング型ネットワークを構成するレイヤー3スイッチ「9924Ts」などが設置されているサーバー・ルーム
写真2●リング型ネットワークを構成するレイヤー3スイッチ「9924Ts」などが設置されているサーバー・ルーム

 新たに構築したLANは,EPSR対応のアライドテレシス製レイヤー3スイッチ「CentreCOM 9924Ts」(写真2)を採用。これらを光ファイバでリング状に結ぶ。7台の9924Tsのうち,1台をネットワークを制御する「マスター・ノード」に設定。残り6台は制御対象の「トランジット・ノード」とした。

 障害発生時に迂回経路へ移行する際には,マスター・ノードに設定した「プライマリ・ポート」と「セカンダリ・ポート」という二つのポートを使う。通常稼働時は,プライマリ・ポートから「Healthcheckメッセージ」と呼ぶパケットをセカンダリ・ポートに対して定期的に送信している。このメッセージをセカンダリ・ポートが受信できれば,正常に稼働していると判定する仕組みだ。


 このとき,セカンダリ・ポートは他のトランジット・ノード経由でデータを送受信しない「ブロッキング状態」になっている。ただし,マスター・ノードが障害発生を検知するとブロッキング状態を解除。セカンダリ・ポートを経由する迂回経路を作る(図1)。

図1●レイヤー3スイッチを使ったリング型のネットワーク構成
図1●レイヤー3スイッチを使ったリング型のネットワーク構成
障害が発生した際にも瞬時に迂回経路を設定できるので,エンドユーザーは通常時と同様に業務を継続できる。障害が2カ所で同時発生した場合には無線LANを使って迂回経路を確保する。
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 障害の検知には,二つの方法がある。一つは前述のHealthcheckメッセージを利用する方法。プライマリ・ポートが定期的に送信するメッセージをセカンダリ・ポートが一定回数で受信できなければ,障害が発生したと判定する。二つ目はトランジット・ノードが回線の障害を検知する方法。この場合はトランジット・ノードがマスター・ノードに障害を通知する。

 これら二つの障害検知によって,障害時は瞬時に迂回経路へ切り替わるという。ヤマサ醤油のLAN再構築を担当した日興通信 ネットワークソリューション事業部システムインテグレーション部の杉山和茂部長は「最短で50ミリ秒で切り替えられるので,ユーザーは何事もなかったかのようにネットワークを利用できる」と,そのメリットを説明する。

光ファイバの同時切断も考慮

 ネットワークを絶対に止めないために,同社は迂回経路を持つリング型ネットワークを構築しただけでなく,機器の故障に備え,スイッチなどの交換用予備機を常時在庫として持つ。

 これらの備えに加え,無線LANを活用したバックアップ体制も取っている。マスター・ノードの両側にあるトランジット・ノードとの接続が万が一同時に切断した場合,マスター・ノードが孤立してしまう。こうした事態に備えて,マスター・ノードとトランジット・ノード(プライマリ・ポート側)間の通信を無線によって継続できるように無線LAN機器を設置した。

 マスター・ノードの両側の光ファイバ回線が同時に切断される確率は極めて低いため,無線LAN機器の電源は通常オフになっている。光ファイバが同時に切断した場合には,アイビーシー製のネットワーク性能監視装置「BT-MonitorV2」で障害を検知し,メールでネットワーク管理者に通知。管理者が無線LANの電源をオンにして,無線でプライマリ・ポートの接続を復旧する仕組みだ。

ここがポイント

目的:障害発生時の業務継続

システム:レイヤー3スイッチによるリング型LAN

導入時期:2007年8月から12月

効果:障害が発生すると瞬時に迂回経路を確保。ネットワークの継続利用が可能に

●会社・プロフィール
本社: 千葉県銚子市
売上高: 482億円(2006年12月期)
従業員数: 850人(2006年12月末時点)

●ネットワーク・プロフィール
従来は3部門で別のLANを構築していたが統合。2007年にLANを刷新し,光ファイバ回線を敷設。現在は建物・施設を約20グループに分けてVLANを構築している。