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 創業110周年を迎えた重電メーカーの明電舎は,2007年に本社を移転した。それに伴い,抜本的なオフィス改革に乗り出した。再開発が進む東京・大崎の駅前に世界貿易センタービルディングと共同で新ビル「ThinkPark Tower」を建設。東京・箱崎の旧本社から移転した。新本社には,スタッフ部門や事業部の営業担当者など700~800人の社員が勤務する。

写真1●左から明電舎の日越孝仁経営企画部副部長,野口英明経営企画部IT企画課主任,明電ITシステムズITサービス事業部IT統制部IT技術課の吉本武志氏,同・福地智子氏
写真1●左から明電舎の日越孝仁経営企画部副部長,野口英明経営企画部IT企画課主任,明電ITシステムズITサービス事業部IT統制部IT技術課の吉本武志氏,同・福地智子氏
プロジェクトの取りまとめは明電舎経営企画部IT企画課の青木尚敏課長が担当した。

 オフィス改革のコンセプトは「10年,20年後でも効率的にオフィスが使えること」(明電舎経営企画部IT企画課の野口英明主任,写真1)。新オフィスには,IP電話機やビデオ会議など様々な最新のITシステムを取り入れ,オフィス・ワークを効率化できる工夫を凝らした。すべてのITシステムをIPネットワークに統合することで,低コストに構築しつつも今後の変更に柔軟に対応できるようにしている。

 本社の移転は2007年10月に完了し,システムの稼働を開始した。今後は本社と同様のITシステムを地方の事業所にも広げていく予定だ。計画は明電舎とシステム子会社の明電ITシステムズが主導し,ネットワーク・インテグレータのスターネットが構築を支援した。

プレゼンや印刷の場所を選ばない

 明電舎では,新本社のオフィス改革プロジェクトを「どこでもプロジェクト」と呼ぶ(図1)。具体的には,(1)社内のどこでもプレゼンテーションなどのための表示装置を利用できる,(2)社内のどこでもパソコンを利用できる,(3)どことでも会議ができる,(4)社内のどこでも印刷ができる──の4点を実現した。経営企画部の日越孝仁副部長は「旧本社時代に社員がストレスと感じていた事項を集約し,それを解決する目的でプロジェクトを実行した」と背景を説明する。

図1●社内のどこでも仕事ができる「どこでもプロジェクト」を推進
図1●社内のどこでも仕事ができる「どこでもプロジェクト」を推進

 (1)の表示装置とは液晶ディスプレイやプロジェクタのこと。会議室や役員室,打ち合わせスペース,執務フロアなど,あらゆる場所に表示装置を配備した。設置場所や規模によって,中型・大型の液晶ディスプレイ,プロジェクタを使い分けている。

 例えば会議室や役員室では,大型のプロジェクターを設置。主にプレゼンテーション用途にこれらの表示装置を使う。一方,執務フロアでは,中型のディスプレイを設置して,動画の配信に利用する。社員への周知を目的にした情報連絡のほか,経営幹部のメッセージも動画で配信する。社内版のデジタル・サイネージといった位置付けであり,紙の回覧板やポスターの代わりとなる。

無線LAN+認証システムを全国展開

 (2)のどこでもパソコンを使えるという点については,無線LANとノート・パソコンの導入で実現した。無線LANシステムには米シスコの「Cisco Aironet」シリーズのアクセス・ポイントと無線LANスイッチを採用。新本社の執務フロア全域をカバーした。ノート・パソコンは社内での移動が多いスタッフ部門を中心に導入。現在では約3割の社員がノート・パソコンに移行しているという。

 同社は積極的に他拠点への無線LAN導入を進める。出張時に持ち込んだノート・パソコンをそのまま他拠点でも使いたいというニーズは高く,導入効果がはっきりしているからだ。無線LANのSSIDWEPキーの設定は全拠点共通にして,エンドユーザーはどの拠点に行っても設定を意識せずにLANに接続できるようにする。

 無線LANのセキュリティは,日本ヒューレット・パッカードの認証システム「HP Quarantine System」を導入して守る。ネットワークへの接続時にパソコンのMACアドレスを参照して認証することで,登録済みのパソコンかどうかを判断。登録されていないパソコンは接続させないようにする。

 課題は,設計担当者のパソコンをノート型に置き換えられないことだ。CADなどを使うため,パソコンに高い処理性能が求められる。そのため,現在はデスクトップ型を利用せざるを得ないという。

ビデオ会議で出張交通費削減

 (3)の“どことでも会議”については,米ポリコムのビデオ会議システムの導入で,社員が異なる拠点にいても会議ができるようにした。今後は,ASP (application service provider)サービスのWeb会議システムを導入し,自席での会議も可能にする。

 日越副部長は「今回導入したシステムの中で,エンドユーザーからの評価はビデオ会議システムが最も高い」という。同社は北海道・釧路から沖縄まで全国に拠点や現場があり,それぞれにエンジニアが常駐している。以前は会議のたびに東京に出張しなければならなかったが,ビデオ会議の導入で出張回数は激減したという。「現場からは,もっとたくさん入れ,便利に使えるようにしてほしいといった要望も出ている」(日越副部長)。

 ビデオ会議導入の直接のメリットは,交通費が大幅に削減できたこと。「正確には計算していないが,かなりインパクトのあるコスト削減になりそうだ」(日越副部長)という。新幹線や飛行機を使う出張が激減したからだ。

 (4)の印刷については,入退室管理用のIC社員証と組み合わせることで実現した。ICカード・リーダーを備えた複合機を導入し,IC社員証をかざすとそこに印刷されるよう設定した。印刷物を取り出す複合機は,ユーザーが任意に選べる。例えば,30階の自席のパソコンで印刷を実行し,28階にある複合機から印刷物を取り出すことも可能だ。