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 税理士や会計士を会員組織化し,会員が求めるネットワーク・サービスを運営するTKC。会員は全国で約9500人に上り,TKCはその情報システム部門としてネットワーク構築などを受け持つ。同社は会員事務所のアクセス回線冗長化とモバイル環境での利便性向上を目的に,富士通のワイヤレス・ルーター「Si-R240B」と,KDDIの第3世代携帯電話(3G)のデータ通信カードを使ったサービス「mobile+3G」を導入した。ワイヤレス・ルーターとは,固定回線だけでなく3Gなどの無線データ通信技術をWAN側回線として使えるルーターのことである。

 2007年7月から2008年3月までに,約1000カ所の事務所がワイヤレス・ルーターと3Gカードを導入した。通常はノート・パソコンに3Gカードを挿入して利用し,ワイヤレス・ルーターはBフレッツなどの固定回線に接続している。だが固定回線がダウンすると,ノート・パソコンから3Gカードを抜いてワイヤレス・ルーターに挿入。3Gをバックアップ回線とすることで,事務所の業務を継続できる環境を構築した。

フレッツの障害で課題を痛感

 TKCが今回のシステムを採用したきっかけは,会員である税理士や会計士から,モバイル環境の強化とバックアップの必要性が望まれていたからだ。

写真1●TKC東日本統括センターネットワークシステムグループの岩崎宏之グループリーダ(左)と栃木本社社長室の金森直樹次長(右)
写真1●TKC東日本統括センターネットワークシステムグループの岩崎宏之グループリーダ(左)と栃木本社社長室の金森直樹次長(右)

 TKCはこれまでPHSのデータ通信カードを使ったリモート・アクセス環境を用意していたが,「遠方の顧問先に行くと(PHSが)つながらないという声が会員から寄せられていた」(栃木本社社長室の金森直樹次長,写真1)。最大128kビット/秒の速度にも不満があった。TKCでは会員向けにIP- VPNによる閉域網サービスを提供しており,事務所のサーバーにモバイル環境からリモート・アクセスできる。だがPHSの実効速度ではファイルの移動などに時間がかかるという会員の不満があった。

 事務所のアクセス回線にも課題があった。ほとんどの事務所がNTT東西のBフレッツもしくはフレッツ・ADSLを導入済みだったが,障害でダウンしたときのバックアップ回線を用意していなかった。これを痛感したのが2007年5月15日に発生したNTT東日本のフレッツ・サービスの大規模障害だった。会員の業務に大きな影響が出たのだ。

 ただこの時,PHSのデータ通信カードを導入している会員だけは業務を継続できた。ここからデータ通信カードを使って,固定アクセス回線を冗長化する構想が具体化した。データ通信カードはPHSよりも実効速度が高速な3Gに変更し,普段はノート・パソコンなどに挿して出先で利用。アクセス回線の障害時には3Gカードをバックアップに活用するという形だ。「バックアップ用の3Gカードをモバイル環境で有効活用できるメリットがある。NTT以外の回線でアクセス回線を冗長化できる点にも魅力を感じた」(東日本統括センターネットワークシステムグループの岩崎宏之グループリーダ)。

無線から有線に自動切り替え

 TKCが構築したシステムの核となるのが富士通のワイヤレス・ルーター「Si-R240B」である。本体のPCカード・スロットに3Gカードを挿入することで,3Gをアクセス回線として利用できる(図1)。「3Gカードをルーターに挿すだけで,バックアップ回線が利用可能になる。ネットワークに詳しくないユーザーでも利用しやすい点を評価した」(岩崎グループリーダ)。Bフレッツやフレッツ・ADSLなどが障害から復旧すると,自動的に3GからBフレッツなどへ切り替わる。

図1●ワイヤレス・ルーターを使って3G回線を固定回線のバックアップに使う
図1●ワイヤレス・ルーターを使って3G回線を固定回線のバックアップに使う
普段は出先での利用に使う3Gカードを,固定回線の障害時にはルーターに装着する。事業所のアクセス回線が無線の3Gデータ通信側に切り替えられるため,業務を続けられる。

 実際にワイヤレス・ルーターを導入した会員であるオギハラ税理士法人の荻原伸夫税理士は,固定回線のトラブルが起きた時にそのメリットを感じたという。「雷の影響で事務所のモデムが故障した。しかし3Gカードを挿すだけですぐに回線が復旧し,業務への影響を最小限にとどめられた」(荻原氏)。

パケット・シェアでコスト負担を抑える

 もっとも,今回のシステム導入に向けては別の課題もあった。一つはPHSから3Gへの変更によるコスト増だ。

 同社は富士通のIP-VPN「FENICSビジネスIPネットワークサービス」を採用し,会員に提供している。この閉域網への接続性を考え,富士通が提供するFENICSのオプションであるモバイル・データ通信サービス「mobile+3G」の導入を決めた。これはKDDI(au)の下り最大2.4M ビット/秒のCDMA 1X WINネットワークを使うサービスで,富士通が他のサービスと組み合わせて一括提供する。

 mobile+3Gの料金プランは,使い方次第で一部が従量課金になる。TKCは,1ユーザーID当たり月額8000円の基本料で無料パケットが120 万パケット(約150Mバイト)付くプランを採用。会員は,これをサポート込みで月額9500円で利用する。TKCが採用したプランは無料パケット分を超過すると1000パケットごとに15円の料金が発生する。「定額制ではないため,会員のコスト負担がどの程度になるのか不安だった」(金森次長)。そこで同社は導入前に半年かけて,会員が実際の業務でどの程度パケットを消費するのか調査した。「ほぼ150Mバイトの無料パケットの範囲内で収まるとの確証を得た」(同氏)。

 またmobile+3Gは,同一事務所で複数回線契約時に無料パケット分を複数ユーザー間でシェアできる(図2)。この点も同社にとっては安心だった。実際,システムを導入した会員の98%が,無料パケットの範囲内に収まっているという。

図2●パケット・シェアリングで無料パケットを有効活用
図2●パケット・シェアリングで無料パケットを有効活用
FENICSの3Gサービスが用意するパケット・シェアリング機能を活用。同一事業所内で複数のデータ通信カードを契約する場合,余った無料通信部分を事業所内で分け合える。

ここがポイント

目的:モバイル強化と固定回線のバックアップ

システム:富士通のワイヤレス・ルーター

導入時期:2007年7月から

効果:ネットワーク障害による業務停止のリスクを回避できた

●会社・プロフィール
本社: 栃木県宇都宮市
売上高: 504億2300万円(2007年9月期)
従業員数: 1973人(2007年10月現在)

●ネットワーク・プロフィール
TKC会員向けにネットワーク設備を提供。WANに富士通のIP-VPN「FENICSビジネスIPネットワークサービス」を用いて,センターとTKC会員の事務所を結んでいる。