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 第一生命保険は,2007年8月からIP電話システムの導入を進めている。2009年4月の完了時にはIP電話機の台数が約2万8000台にもなる非常に大規模なものだ。2008年2月には東京近郊の本社施設(本社ビル)20カ所に4000台のIP電話機を導入。4月には全国約100拠点の支社に合計 6000台の設置を完了した。また4月からは,支社の管轄となる約2000カ所の支部に計約1万8000台のIP電話機の導入を始めた。

5年で30億円の通話コスト削減

写真1●第一生命保険 IT企画部の永森克彦IT業務課長(左),第一生命情報システム 基盤システム第一部 オープン技術グループの田代修一上席アナリスト(中央)と瀧田大作コンサルタント(右)
写真1●第一生命保険 IT企画部の永森克彦IT業務課長(左),第一生命情報システム 基盤システム第一部 オープン技術グループの田代修一上席アナリスト(中央)と瀧田大作コンサルタント(右)

 同社がIP電話システムを新規導入する検討を始めたのは2006年のこと。直接のきっかけは,本社ビルの中で最も大きい日比谷ビルに設置しているPBXの保守期限が,2006年3月に切れたことだった。「それ以前からも,他のPBXなどの設備の老朽化が進み,何とかしなければならないと気にはしていた」と同社 IT企画部の永森克彦IT業務課長は説明する(写真1)。

 同社は,PBXを更新するのではなく,IP電話システムの導入を選択した。その理由の一つは通話コストの大幅な削減。内訳は,約2000拠点ある支部の内線化による通話料の削減と,電話回線の集約による基本料の削減である。

 日本全国に置かれた支社は約100拠点あり,一つの支社が管轄する支部は約20拠点ある。各支部は支社へ電話をかけることが多く,支部の外線発信の約 70%を占める。この部分をIP電話で内線化すれば,通話料を大幅に下げられる。また,全拠点の約1万回線の80%を削減できる

 「従来は基本料と通話料で毎年10億円程度かかっていた。これを4億円まで削れると見ている」(永森氏)。1年で6億円,5年で30億円削減できる計算になる。

浮かび上がった電話の使いにくさ

 IP電話導入のもう一つの理由は,PBXによる従来の電話の使い勝手を向上できる点である。

 「IP電話導入に当たり,全社的にヒアリングをしたところ,電話が不便だという声が上がってきた」(永森氏)。

 例えば,支社や支部の電話で勤務時間外に流す応答メッセージだ。

 支社では,PBXの機能を利用して,17時の終業時間から翌9時の始業までは,勤務時間外であることをアナウンスする応答メッセージに切り替える。 PBXの種類によっては,その作業は内勤の社員が手動で切り替える必要があった。永森氏らがヒアリングを進めると,「5時に切り替えるのを忘れて電話がかかってきてしまい,帰れないことがあった」とか,「勤務中になぜか電話が静かだなと思ったら,朝に切り替えるのを忘れていた」というトラブルが頻発していたことが分かった。

 PBXを導入していない支部では,NTT東西の「でんわばんサービス」を利用していた。しかし,このサービスは決まった音声だけをアナウンスする機能しかないため,支部名をアナウンスに入れることができなかった。

 さらに問題があった。PBXの設定がわずらわしかったために,本社や支社からの外線発信は原則非通知だった。非通知発信では相手に電話をとってもらえないことも多く,問題となっていた。

 第一生命保険はIP電話を導入することで,これらの問題を一気に解消しようと考えた。

異事業者の広域イーサを採用

 第一生命保険のIP電話システムは,本社(20拠点),支社(約100拠点),支部(約2000拠点)を束ねるWANとして,広域イーサネット・サービスを採用している(図1)。これは2005年のデータ系ネットワーク刷新のときに導入したものだ。

図1●第一生命保険のネットワーク構成図
図1●第一生命保険のネットワーク構成図
合計2万8000台ものIP電話機を導入する大規模なIP電話システムである。各拠点間をつなぐWANには,異なる通信事業者の広域イーサネットを使い,完全な2重化によって耐障害性を高めている。
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 第一生命保険のネットワーク構成の大きな特徴は,二つの広域イーサネットを利用し,完全な2重化を実現している点だ。NTTコミュニケーションズとKDDIのサービスを使うことで,冗長性を高めている。

 拠点間の接続方法にも特徴がある。一般的なのは最も大きなセンター拠点にレイヤー3スイッチを置き,そこに他の拠点を広域イーサネットを使ってつなぎ込むネットワーク構成だ。これに対して,第一生命保険では同社のレイヤー3スイッチを広域イーサネット事業者のハウジング拠点に置き,それを中心にスター状に全拠点を接続している。このような構成を採用したのは,「各拠点のトラフィックに大きな差がなかったので,広域イーサネット内に置いたスイッチを中心に構成した方が効率的」(基盤システム第一部 オープン技術グループの瀧田大作コンサルタント)と判断したためだ。

 IP電話の呼制御を実行するSIPサーバーは,同じハウジング拠点内に置き,レイヤー3スイッチにつないだ。SIPサーバーもNTTコミュニケーションズ側とKDDI側の両方に置き,2重化構成にしている。

 IP電話サービスにはNTTコミュニケーションズの「.Phone IP Centrex」を採用。同社の広域イーサネットのセンターに置いたSIPサーバーをプライマリとした。KDDI側の広域イーサネットのセンターに設置したSIPサーバーは,セカンダリとして使う。

 データ・パケットと同じ回線を流れる音声パケットは,帯域制御装置やレイヤー3スイッチのQoS(quality of service)機能を使って,優先制御を実施している