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 リコーは国内グループ会社650拠点を結ぶネットワークを,2006年3月から2008年3月にかけて全面刷新した。従来はグループ会社ごとにネットワークを構築していたが,全拠点が接続する単一のネットワークに切り替えた。刷新によって,ネットワークの運用コストを約8億円削減した。各拠点のアクセス回線の合計帯域は刷新前の2.4倍に増強。障害時のう回路を確保するなど災害対策も強化した。

ERPの導入で帯域増強が課題に

写真1●左からリコーテクノシステムズ ITマネージド本部EMS運用センター 坂田清明総括担当,同NS事業本部 三浦公義リーダー,リコー IT/S本部IT/S技術センター 安部佐知子リーダー,同センター 栗野隆正所長
写真1●左からリコーテクノシステムズ ITマネージド本部EMS運用センター 坂田清明総括担当,同NS事業本部 三浦公義リーダー,リコー IT/S本部IT/S技術センター 安部佐知子リーダー,同センター 栗野隆正所長

 リコーは1995年に各グループ会社をつなぐネットワークの運用を開始した。当初はフレーム・リレーの回線網だったが,2000年にはIP-VPN,2003年には広域イーサネットに切り替えるなど,定期的に再構築を進めてきた。

 2003年以降は,グループ会社ごとに別のネットワークを構築し,相互接続していた(図1左)。それぞれのグループ会社によって,求める仕様が異なっていたためである。例えば「販売関連会社では基幹ホストからの販売データを低速でもいいからコスト優先で流したい。一方,生産会社では大容量の図面データを流したいといった違いがあった」(IT/S本部IT/S技術センター ネットワークグループの 安部佐知子リーダー,写真1中右)。

図1●分散していたネットワーク運営を一本化
図1●分散していたネットワーク運営を一本化
従来は関連会社がそれぞれ別の会社にネットワークの構築・管理を委託していた。刷新後はネットワークの構築・管理を関連会社のリコーテクノロジーシステムズ(RTS)に一本化した。
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 そうした各グループの要望に合わせて,ネットワークの構築・拡張を繰り返してきたが,次第に問題が顕在化してきた。ネットワーク全体の通信コストが増加の一途をたどっていたのだ。1995年に15億円を切っていたリコー・グループの通信コストは,2004年に20億円を突破し,2005年では22億円。 2008年は28億円の見込みだった。各グループ会社で回線を統合するなど努力を重ねて「ビット単価は圧倒的に下がったが,ネットワーク全体のコスト上昇は止められなかった」(安部氏)。

 ネットワークの利用方法も従来とは大きく変化していた。リコー・グループでは,これまではホスト上で処理していた業務や販売システムを,2004年からはWebアプリケーション型のERPや,CRMに置き換えることを推進してきた。「データ量が多いWebアプリ型のERPやCRMへの移行が進み,どのグループ会社においても帯域の増強が必要となった」(IT/S本部 IT/S技術センター 栗野隆正所長,写真1右)。

 災害などで一部のネットワークが止まった場合,グループ間の通信が途絶える問題もあった。グループ間のネットワークは相互に通信はできたものの,例えば販売関連会社はシステムセンターをいったん介して物流関連会社のネットワークに接続する構成だった(図1参照)。そのため,回線トラブルによっては販売/関連会社や物流関連会社がネットワークごと孤立してしまう恐れがあり,例えば部品の受発注などができなくなる可能性があった。

移行期にネットワーク運用を移管

 問題点の抜本的な解決を目指し,リコーはネットワーク刷新へと踏み切った。主な目的は三つ。(1)ネットワーク全体のコスト削減,(2)帯域の増強,(3)災害対策の強化──である(図2)。

図2●重点項目ごとのネットワーク刷新による主な効果
図2●重点項目ごとのネットワーク刷新による主な効果

 (1)のコスト削減を実現するために,前提となったのは,システム管理業者の一本化である。従来はグループ会社によってA社,B社,C社と別々の業者に運用を委託していた。だが,グループ全体のネットワークにおける横断的な効率化を目指すためには,業者を一つにまとめる必要があった。そこでサービスやシステム構築業務を手がける関連会社リコーテクノシステムズ(RTS)に委託することを決めた。

 グループ会社ごとに分かれた旧ネットワークから,一つの新しいネットワークへと安全に乗り換えるには,事前に旧ネットワークのすべてを把握する必要があった。そこで移行期にはA社,B社,C社が構築したネットワークの運用業務をRTSが引き継ぎ,整合性の確認,運用プロセスの見直しといった作業を進めた。「新ネットワークの設計と,旧ネットワークの運用を同時に委託したため,移行期のトラブルはほぼ発生しなかった」(安部氏)。

 システムの運用を一本化したうえで,低コスト化のためにアクセス回線の見直しに取り掛かった。従来,関連会社ごとに別のネットワークを運用していたため,複数の関連会社が同じ建物に同居していた場合でも,複数のアクセス回線が引き込まれていた。これを拠点の利用状況に合わせて1本の回線に集約。この結果,拠点に引き込んでいた回線数をグループ全体で778本から約650本に削減できた。

 アクセス回線の帯域は10M,100M,1Gビット/秒の3種類に絞った。仕様を絞ったことでルーターなどの機器を一括購入できるようになり,コスト削減につながった。通信事業者の選定では,複数社にRFPを出し,コストのほか,全国網を構築できることを重視した。