PR

 朝日放送は,関西エリアでテレビ放送とラジオ放送を行うテレビ朝日系列の準キー局である。「探偵!ナイトスクープ」や「新婚さんいらっしゃい!」といった番組は朝日放送の制作だ。

 同局は2008年5月に大阪市北区から大阪市福島区の新社屋へ移転した。新社屋は,地下1階,地上16階建てのビルである。新社屋の建設に合わせて社内ネットワークも最新の設備へと切り替えた。

新ネットで放送環境の変化に対応

 放送局のシステムは放送環境の変化とともに,ネットワークの重要度が以前より増している。環境変化の具体例が,(1)映像のデジタル化・高解像度化,(2)携帯電話やインターネットなどを対象とした番組配信経路の多様化,である。

 番組の映像はいまやテープに記録するのではなく,コンピュータのファイルとして扱うことが多くなっている。画質は従来のSD(standard definition)からフルHD(high definition)へと高解像度化している。非圧縮のフルHDの映像は伝送に1.5Gビット/秒の帯域を要するため,放送局のネットワークは必然的に広帯域化する。

 さらに番組は放送波によって配信されるだけではなくなりつつある。通信と放送の融合と言われるように,インターネットを活用した新たなビジネスも模索されている。

 朝日放送の新社屋のネットワークは,これらの変化に対応できるインフラとしての要件が求められたという。

独立性の高い7系統のネットワーク

 新社屋のネットワークは,放送業務で使う「放送系」やコンピュータ・グラフィックスの制作部門で使う「ポスト・プロダクション系」,「IP電話」,「情報システム系」など,全部で7系統に分かれている(図1)。

図1●7系統ある朝日放送新社屋のネットワーク
図1●7系統ある朝日放送新社屋のネットワーク
それぞれ求められる信頼性などが異なる。各ネットワークは自己完結性が高い構成になっている。

写真1●朝日放送の吉田豊一技術局情報技術センター・システム技術担当部長
写真1●朝日放送の吉田豊一技術局情報技術センター・システム技術担当部長
 ネットワークを独立した7系統に分けた理由は,「各ネットワークやシステムのセキュリティ・ポリシーと監視体制がそれぞれまったく異なる」(朝日放送のネットワークを統括する吉田豊一技術局情報技術センター・システム技術担当部長,写真1)からである。

 例えば,「放送系」は最も高い信頼性が求められるミッション・クリティカルなネットワークである。放送系ネットワークの障害は,放送事故に直結する。そのため,インフラ自体の2重化はもちろんのこと,365日24時間体制での監視を実施している。

 一方,電子メールやWeb閲覧,社内システムの利用などに使う「情報システム系」ネットワークは,重要ではあるものの,放送系ほどミッション・クリティカルではない。監視は基本的には平日の昼間だけだ。

写真2●多数のケーブルがビル内を巡る
写真2●多数のケーブルがビル内を巡る 光ファイバは黄色のダクトに収納している。

 求められる信頼性などのレベルが異なるシステムを一つの大きなネットワークで運用しようとすると,監視体制やセキュリティ・ポリシーを最も要求の高いシステムに統一することになり,コストが高くつく。ネットワークをそれぞれ独立させれば,「運用体制やコストの最適化をそれぞれのネットワークで図れる」(吉田システム技術担当部長)というメリットがある。

 吉田システム技術担当部長は「これらの7系統のネットワークは物理的にも異なるケーブルを使っている。それぞれが独立しており,極力自己完結できる構成になっている」と説明する(写真2)。ケーブルはネットワークの系統ごとに色を変えて見た目にも分かりやすくしている。