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東邦チタニウムの新システム開発のリーダーを務めた浜津和弘氏と神奈川県茅ヶ崎市にある本社工場

 チタン製造大手の東邦チタニウムは、2008年5月までに稼働させた新しい生産管理システム「インゴット生産管理システム(IPS)」によって、生産・品質管理要員を増やすことなく、以前の2倍の生産量に対応しようとしている。

 チタンは軽くて耐久性が強いという特性を持ち、各種プラントやゴルフクラブなどに幅広く使われている。特に米ボーイングB787、仏エアバスA380など最新の航空機は、1機当たり100トン以上(従来機の約10倍)のチタンを使用するため需要が急拡大している。東邦チタニウムは神奈川県茅ヶ崎市の本社工場に加え、2008年4月に北九州市に工場を新設した。インゴット(精製済みの固まり)の生産能力を前期(2008年3月期)の9000トンから、今期は1万9000トンに倍増させる見込みだ。

 従来は在庫管理、品質管理などの作業ごとに個別のシステムが稼働したり、表計算ソフトを使って人手をかけて処理したりしており、全体を一元管理するシステムはなかった。プロジェクトリーダーを務めた浜津和弘・機能化学品製造部生産技術担当部長は「工場新設計画が持ち上がった時に、拠点が増えて業務が複雑化するため、人手に頼ったやり方のままでは難しいと考えた」と話す。

ERPは使わず、アジャイル開発を採用

東邦チタニウムのプロジェクトメンバー。業務本部情報システム部の庭野三郎氏、インゴット製造統括部茅ヶ崎工場の三戸武士氏、常務執行役員業務本部長の加古幸博氏、ウルシステムズの一橋範哉シニアコンサルタント(左上から時計回り順)

 東邦チタニウムはERP(統合基幹業務)パッケージの適用を含めて様々な選択肢を検討し、その中からシステム設計・構築を手がけるウルシステムズが推進する「アジャイル開発」という開発手法を採用した。システム化の範囲を絞り込んだ比較的小規模なシステム開発プロジェクトにおいて、利用者の要望や環境変化に柔軟に対応しやすい開発手法だ。

 東邦チタニウムはシステム化の範囲を「インゴットの生産管理」に限定。「あまり欲張らず、できる範囲を確実に作る方針を徹底した」(加古幸博・常務執行役員業務本部長)。1年弱の開発期間中に「原料受け入れ」「月次・週次生産計画」などの機能を随時追加。並行して開発済みのプログラムを試用しながら修正を加えた。2007年2月から1カ月おきに、9回の改良(イテレーション)を実施した。

 細かなノウハウが必要な「原料選定」などの業務はシステム化の範囲外と割り切った。一方で、製品に張り付けるラベルに出荷日や出荷先などの詳細情報を印刷する機能などはイテレーションの過程で現場から要望が出たため、途中で追加した。

 東邦チタニウムは5期連続増収増益という堅調な業績を上げており、繁忙状態が続いている。「社内は慢性的な人手不足で、要件定義に人手をかけられなかった。新工場は未稼働で要件を早期に固めて開発に入るわけにもいかず、アジャイル開発が適していると考えた」(浜津氏)

ベテランの計算ロジックを標準化

 ベテラン担当者の経験と勘で培ったノウハウをシステムに組み込むことも狙った。原料配合など専門的な業務では計算方法を詳細に調べ、製品ごとに成分の標準値や許容値、誤差発生時の調整方法などをシステムに組み込んだ。

 システム投資額は5億円前後とみられる。加古常務執行役員は「現状のフル稼働状態が続くなら生産計画はむしろ容易で、システム化しなくても何とかなる。チタンの需要には大きな波があるため、今後不調になった時にこそ真価を発揮するはず」と期待を寄せる。