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マーケティング・営業本部高校生営業部の田中成樹・高1営業セクションリーダー(中央)と受験営業セクションの古内美樹氏(左)と山川高弘氏。田中リーダーは「今の高校生は『忙しい、忙しい』と言うが、日記を見ていると本当に忙しそう。自分たちは高校生だったときの気持ちを忘れてしまっていたのかも」

 ベネッセコーポレーションは、中高生にブログ日記を書いてもらい、顧客層の世代が日々どのような悩みを持っているのかを調査して販促や商品開発につなげている。その成果もあり、2008年10月の「進研ゼミ高校講座」受講者数は、前年同月比1万人増の26万人となった。6.2%という増加率は小・中・高の講座を持つ進研ゼミでトップである。マーケティング・営業本部高校生営業部の田中成樹・高1営業セクションリーダーはブログによる消費者観察によって「市場や競合の動きより、お客様の声や様子を基に自社のサービスを見直そうという意識が高まった」と手応えをつかんでいる。

 顧客に教材を発送したり、ダイレクトメールによる販売促進をしたりと、ベネッセはじかに顧客と接している会社だ。顧客や資料請求をしてきた顧客予備軍の属性などは把握しており、顧客データベースを駆使した分析に取り組んでいる。加えて、顧客を集めたグループインタビューや1対1のデプスインタビューを通じた、個人の思いや価値観、嗜好に焦点を当てるといった定性的調査にも長年力を入れてきた。田中リーダーは「定量的なデータ分析だけに基づいた企画は経営会議でも認められない。顧客のリアルな声を重視する企業文化がある」と話す。

 しかし、インタビューや行動観察といった定性的な調査は、対象が中高生となると難しい。思春期の子どもたちは集まってもらっても容易に打ち解けようとしないし、一番知りたい受験前の苦労や悩みを聞きたくても、真っ最中の子どもには聞きにくい。ベネッセではこれまで受験生へのインタビュー調査を控えてきた。調査はどうしても晴れて高校生や大学生になってからで、「のどもと過ぎれば熱さ忘れる。その頃には『受験前の追い込みついて思い出してください』とせっつき、こちらが希望する答えに誘導してしまいかねない」(田中リーダー)。高校生営業部は中高生の日々感じている生の声をリアルタイムで吸い上げる仕組みを模索した。

日記形式のブログに自由に記入してもらう

 そこで、彼らが選んだのがブログによる日記を通じての行動観察だ。信頼するリサーチ会社を通じて顧客世代である中学3年生~高校2年生のモニター30人ほどを選び、2007年10月から2008年8月までインターネットのブログで日記を書いてもらった。高校生営業部の社員はそれぞれがモニターの“お兄さん”“お姉さん”役となり、更新される度にブログにコメントを残す。子ども同士はお互いの日記を見られないが、営業本部の社員はモニター全員の日記を閲覧できる。ブログは部外者には公開されない。

 モニターの中高生側にはコメントを残す社員らの名前や顔は分からないが、年齢や出身、趣味などは明かされている。当初、日記に書く題材には指定がなく、自由に書くことになっていた。「淡々と事実のみを書く子もいれば、私小説ばりのドラマチックな文章をつづる子もいて各自の個性が出ていて興味深かった」(田中リーダー)。自分が作ったお菓子の写真を掲載する生徒もいれば、学園祭など特定のテーマを日々熱心につづる子もいた。今年に入ってからは、学校での勉強や学習塾の様子、模擬試験などのお題を与えることもある。執筆のペースにも決まりは設けておらず、毎日から週1回程度まで様々だった。

 受験営業セクションの山川高弘氏は「定量データを読み解くベースは定性的なデータにある。模試の結果が返ってくる時期に学習意欲がわくと言われているが、具体的にどんな気持ちなのかは分からなかった。今は実態をつかめているので定量分析の切り口となる仮説を立てやすい」と話す。数カ月間、同じ社員が同じ生徒の日記にコメントを残すことで少しずつ信頼関係も生まれて、教材のヒントとなる質問もさりげなくできるようになったという。商品の開発や販促物の改善への本格的なフィードバックはこれからだ。

 2008年10月からは日記を執筆してくれる子どものモニターを一新して第2期をスタートさせた。現在は日記の内容が興味深い場合、閲覧した社員が部署全員に通知メールを出せる機能を取り入れた。ブログ日記の行動観察から得る“気づき”を部門全員で共有しようというわけだ。30代以上の社員にとって、携帯電話の普及率が9割を超える高校生の生活は未知の世界といえる。ベネッセの高校営業部では今後も地域や共学校・男子校・女子校など、異なるタイプの学校の生徒に日記を書いてもらい商品・サービスの向上を図っていくという。