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保証帯域は1Mビット/秒

 実際のところ,現状では光ファイバの性能をフルに生かしているわけではない。どの店舗もIP-VPN網の保証帯域を1Mビット/秒に設定してある。まだ光ファイバ化できていない店舗もあり,むやみに高速化しても均一なサービスを提供できないからだ。

 2008年8月時点で,ダーク・ファイバを引き込んだのは全体の約58%に当たる約7000店舗。ダーク・ファイバを調達できない約34%の地域では,NTT東西のメガデータネッツやビジネスイーサを状況に応じて使い分けている。

 残りの8%は,当面は光回線自体が提供されない地域として残る。このような拠点では,現在は代替手段としてDAを4回線束ねて(512kビット/秒)利用している。

 こうした店舗ごとの通信環境の違いを踏まえ,光回線を導入している店舗でも,IP-VPN網の保証帯域は1Mビット/秒に抑えた。佐藤取締役は,「DAの拠点が1~2%程度になったら新しいサービスも考えられるかもしれない。そのときには保証帯域を上げることを考える」という。

銀行ATMも共用する高信頼ネット

 全国規模で光ファイバの導入を検討する場合,一般にはBフレッツなどの,いわゆるFTTHサービスも選択肢に上るだろう。ダーク・ファイバを利用するとなると,店舗側のルーターはセブン-イレブンが自ら購入し,管理しなければならない。NTT東西にしても,周辺に他の見込みユーザーが少ない地域ではダーク・ファイバを卸価格で提供するよりは,付加価値を付けたフレッツ回線を優先的に販売しようとする。

 それでもダーク・ファイバ導入にこだわったのは,セブン銀行のATMを店舗内に設置し,同一のネットワークを使って運用しようと考えたからだ。

 ATM用のネットワークは,安全性の高い通信回線の確保が求められる。これに対し,フレッツ光シリーズの場合,中継部分の地域IP網を他のユーザーと共用することになる。これでは「金融ネットワークとして金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準に適合しない」(佐藤取締役)のだという。

 つまり同社の戦略上,店舗ネットワークの選択肢として,NTT東西のフレッツ光シリーズの採用は考えられなかった。銀行ATMも含めて回線の一本化を実現するため,あえて企業向けサービスとして提供されていなかったダーク・ファイバを選んだのである。

 この戦略を推し進めるために同社は,「NTT東西のマイライン申し込みをセブン-イレブンの店頭で受け付ける協力を申し出た」(佐藤取締役)。グループの販売力を背景に,ダーク・ファイバ提供への理解を得た格好だ。

 NTTコムとも,ダーク・ファイバの調達にインセンティブを持たせる契約を結んだ。「通信料金は,どの回線を使う場合でも一定額を支払う形にした」(佐藤取締役)という。こうすることで,DAやメガデータネッツよりも,調達コストの安いダーク・ファイバを積極的に導入してもらえるよう工夫した。

信頼性向上させシステム変更も

 今後の課題として佐藤取締役は,光回線の導入率アップと,ネットワークのさらなる信頼性向上を挙げる。

 構築したネットワークは,「99.999%(ファイブ・ナイン)以上の可用性を維持している」(佐藤取締役)。これは,1回線につき通信できない時間が年間5分間以内という高いレベルだ。ただ,この水準を1万2000回線分に乗じると,無視できないほど停止時間は長くなる。実際に「月間のレポートでは,2時間近く止まる事故が40~50店舗に生じている」(佐藤取締役)。光回線が不通になっても,バックアップのISDN回線に切り替わる仕組みのため,運用上ほとんど問題は生じない。それでも佐藤取締役が,ネットワークの信頼性向上に注目しているのは,「可用性の数値が,もうひとケタ上がればシステムの構成を大きく変更できるのではないか」(佐藤取締役)と見ているからだ。

 仮に99.9999%の可用性が実現すれば,1回線につき年間の停止時間は約30秒になる。グループ全体でも2時間前後の停止が月間4店舗程に抑えられる計算だ。「ここまでネットワークの品質が高まれば,ストア・コンピュータからサーバー機能を省きシン・クライアントに置き換えることも検討できる」と佐藤取締役はいう(図3)。

図3●店舗側回線の高速化・信頼性強化が次期システムの構成を左右する<br>アクセス回線をすべて光化し,ほとんど停止せずに使える信頼性が実現すれば,データ・センター側からすべてのデータを提供するシン・クライアント環境を検討する。メンテナンス費用の削減のほか,セキュリティの向上などが望める。
図3●店舗側回線の高速化・信頼性強化が次期システムの構成を左右する
アクセス回線をすべて光化し,ほとんど停止せずに使える信頼性が実現すれば,データ・センター側からすべてのデータを提供するシン・クライアント環境を検討する。メンテナンス費用の削減のほか,セキュリティの向上などが望める。
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