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ルーティングでWANを負荷分散

 ベネッセでは,社内ネットワークのLANとWANの両方ともに「EIGRP」と呼ぶルーティング・プロトコルを採用している。これは米シスコの独自プロトコルで,同社のルーターやレイヤー3スイッチに採用されている。これに対し,中・大規模ネットワークではIETF標準の「OSPF」というルーティング・プロトコルを使うのが一般的だ。

 同社がシスコ独自のEIGRPを採用したのは,OSPFと比較したときに有利な点が多かったから。特に決定的だったのは,ネットワーク構成に変更が生じたときの経路計算の収束がOSPFよりもEIGRPの方が早かった点。同社は社内にコール・センターを多数抱えており,電話のトラフィックが社内ネットワークに統合されている。そこで使っている電話機のコネクションのタイムアウト時間が短く,OSPFではコネクションが切れてしまう。

 WAN回線でのトラフィックを分散する手段としては,EIGRPの「メトリック」と呼ぶ値を使っている。これは回線ごとに設定する“重み付け”のための値で,ルーターはこの値が少ない経路を優先的に選ぶようになっている。例えば,拠点1から拠点2にアクセスする場合,メトリックの値を変えることで,サブネットAへのアクセスにはe-VLAN,サブネットBへのアクセスにはPowered Ethernetを経由するようにできる(図2)。このようにメトリックを利用して,冗長化と負荷分散を同時に実現している。

図2●拠点間をつなぐWAN回線の冗長化とトラフィック分散の考え方<br>アクセス回線,収容局,WAN回線の通信事業者の完全冗長化によって,高い信頼性を確保している。さらに,ルーティング・プロトコル(EIGRP:enhanced interior gateway routing protocol)の設定によってトラフィックが均等に各回線に流れるようにしている。メトリックの設定値は例として示したもので,実際の値ではない。
図2●拠点間をつなぐWAN回線の冗長化とトラフィック分散の考え方
アクセス回線,収容局,WAN回線の通信事業者の完全冗長化によって,高い信頼性を確保している。さらに,ルーティング・プロトコル(EIGRP:enhanced interior gateway routing protocol)の設定によってトラフィックが均等に各回線に流れるようにしている。メトリックの設定値は例として示したもので,実際の値ではない。
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首都圏はMANを利用

 多摩1ビルをはじめとした首都圏の主要拠点は,端末数が多くトラフィック量が大きいため,広域イーサネット・サービスよりも安価で広帯域なイーサネットMANサービスを採用した。同社は,ファイル・サーバーを含むすべてのサーバーをデータ・センターに集約している。このため,1Gビット/秒や100Mビット/秒といった帯域をできるだけ安く利用する必要があった。

 同社が採用したサービスは,京王電鉄グループの京王ITソリューションズの「エキスプレスイーササービス」。このサービスを使ったMANの構築は,2006年4月~2007年2月に構築した。コンペを開いて入札によって安い事業者を選んだ結果である。「かつてはNTTに“丸投げ”していたが,システム子会社のシンフォームが徐々に実力を付けてきたので,通信事業者や機器を入札で選定できるようになった。これが,かなりのコスト削減につながった」(樋口氏)。

4本のインターネット回線で負荷分散

 同社がインターネットを通じて公開している情報は膨大である。例えば,進研ゼミのWeb版「進研ゼミ中学講座+i」などのeラーニングである。こうした通信教育関連の会員だけでも月に約400万アクセスがあるという。このほかにも,数十万アクセスという単位のサイトがいくつかある。

 トラフィックの負荷を軽減するために,同社はインターネット接続回線を4本用意し,負荷分散を図っている。エネルギア・コミュニケーションズとソフトバンクテレコムでそれぞれ2回線ずつ,合わせて4回線を契約している。

 ここでも「アクティブ-アクティブ」の原則に従い,各回線に均等にトラフィックが流れるようにしている(図3)。負荷分散には「BGP」と呼ぶルーティング・プロトコルを利用している。

図3●インターネット接続回線でのトラフィック負荷分散の仕組み<br>ベネッセのサーバー群は,通信教育などのユーザーに向けて大量のトラフィックが流れている。それらを4本のインターネット接続回線に均等に配分するため,ルーティング・プロトコル「BGP」の「LOCAL_PREF」という属性情報を利用し,大手ISP(インターネット接続事業者)ごとに決まった経路が選ばれるようにしている。
図3●インターネット接続回線でのトラフィック負荷分散の仕組み
ベネッセのサーバー群は,通信教育などのユーザーに向けて大量のトラフィックが流れている。それらを4本のインターネット接続回線に均等に配分するため,ルーティング・プロトコル「BGP」の「LOCAL_PREF」という属性情報を利用し,大手ISP(インターネット接続事業者)ごとに決まった経路が選ばれるようにしている。
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 BGPには経路に“重み付け”するための属性情報がある。これは「LOCAL_PREF」というもので,この値が大きい経路を優先して選択するようになっている。同社では,4本の回線のトラフィックが均等になるように,この属性情報を設定している。具体的には,トラフィックの大部分が流れる大手ISPの経路を4本の回線のいずれかに割り当てている。