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受注データは多様かつ大容量

 同社はもともと,ATM(非同期転送モード)交換機を使った自営ATM網と,それ以前からのTDM(時分割多重)装置による専用線網を運用していた。音声とデータ通信の両方を統合した全社ネットワークである。

 ただ事業の多角化とともに,顧客から受け取るデータの種類が急増してきた。しかも,印刷データにしても仕様書・設計書データにしても,データは大容量になる。厳密な測定はしていないものの,「例えば情報コミュニケーション部門の主要拠点間でやり取りされるデータ量だけでも,月間数テラバイトに上る」(辺見匡 情報システム本部システム推進部部長)という。このため,拠点間を結ぶWANの帯域を増やす目的で,2004年ころから,それぞれの拠点に徐々に広域イーサネットを導入し始めた。

広域イーサを使った2層構造

 ネットワークを全国網とエリア網の2層構造にしたのは,拠点ごとにメリハリを付けてコストを極力抑えるためである。WANはもちろん,LANに関しても,ネットワーク停止の業務への影響度に合わせて構成を変えた。

 この際,各拠点のネットワーク構成やネットワーク機器の設定をモデル化し,社内標準として定義した。250拠点のネットワークは5~6種類のモデルに分類される。

 社内標準モデルを定義した目的は,拠点を追加する際に素早くネットワークを構築できるようにすることと,シンプルさを重視してネットワーク構築にかかわる無駄な手間とコストを省くこと。同社では新規分野への進出やM&Aは珍しくない。パターンを決めてあれば,拠点が増えた場合でもモデルに分類さえできればすぐにネットワークを構築できる。設計・構築に人手をかけずに済み,コストの節約にもなる。「ネットワーク機器などは,多少オーバースペックでも無理に社内標準スペックに当てはめるようにしている」(辺見部長)という。

 例えば全社ネットワークの肝となる中継拠点はすべてWANを2重化。アクセス回線の速度は100M~1Gビット/秒である。LANも米シスコ製のハイエンド・スイッチ「Catalyst 6500」シリーズを冗長構成で導入し,高速かつ堅固なバックボーンを構築している。

 中継拠点以外でも工場は重要な拠点である。このため,エリア網の広域イーサネットで中継拠点に接続すると同時に,もう1本ずつ安価なネットワークをバックアップ用に引き込んである。バックアップ用のネットワークはNTTPCコミュニケーションズの「ブロードバンドイーサ」で,NTT東西のBフレッツをアクセス回線に使っている。

 これに対して,エリア網を介して中継拠点に接続する営業拠点は,工場ほどの信頼性や高速性は必要ない。このため,LANもWANも冗長化せず,ルーターも「Cisco 1812J」など安価な機種を採用している。

PBX保守の限界でVoIPへ移行

 2009年に入ってからは内線電話を中心とする「新コミュニケーション・インフラ」の構築に着手した(図2)。最大の理由は,買い取ったPBX,TDM,ATM交換機が老朽化し,限界が近付いたこと。もちろん,専用線を使った自営網に比べて通信コストを下げられるという考えもあった。

図2●新コミュニケーション・インフラを構築中<br>IP-VPNを新規導入し,内線電話とテレビ電話の全社インフラを構築している。従来はATMやTDMによる自営網上でPBXを接続していた。テレビ会議は事業部門により別々に導入し,いずれも1対1の形式だった。内線は,将来的にPBXなしのIPセントレックスに移行予定。
図2●新コミュニケーション・インフラを構築中
IP-VPNを新規導入し,内線電話とテレビ電話の全社インフラを構築している。従来はATMやTDMによる自営網上でPBXを接続していた。テレビ会議は事業部門により別々に導入し,いずれも1対1の形式だった。内線は,将来的にPBXなしのIPセントレックスに移行予定。
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 同時に出張費の節約などを目的として,全社レベルで多地点接続可能なテレビ会議システムを相乗りさせることにした。従来は事業部門別に1対1接続のテレビ会議システムを導入していたが,社員の認知度は低く,実際にはあまり活用されていなかった。

 新コミュニケーション・インフラのバックボーンとして選んだのはNTTコムの「Arcstar IP-VPN」(図2)。既に広域イーサネットの導入は進んでいるものの,「企業利用ではIP-VPNが主流になりつつあると判断し,IP-VPNを選んだ」(辺見部長)。Arcstar IP-VPNを選んだのは,NTTコムがテレビ会議のASP(application service provider)型サービスなどをIP-VPNと併せて提供していたためである。

 内線電話網では,各拠点にルーターとVoIP(voice over IP)ゲートウエイを設置してPBX間を結ぶ。拠点内は従来通りの内線電話,拠点間はNTTコムの呼制御サーバーを使って電話をつなぐ構成である。年内には国内114拠点への展開を終え,その後,段階的にPBXを完全になくしたIPセントレックスに移行する計画である。