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 ジェイティービー(JTB)がインターネットでの旅行商品販売に本腰を入れる。個人旅行の売り上げに占めるネット経由の申し込み比率を、2010年3月期中に8.5%まで引き上げる目標を掲げた。2008年3月期の実績は5.6%、2009年3月期は同6.4%だった。目標達成に先立ち、2008年10月にはネット販売強化のための専門部署「Web戦略推進部」を発足させている。Web戦略推進部の鈴木章敬Web戦略担当マネージャーは「ネット専業の旅行会社とは違い、店舗を持つのが当社の強みだ。各地の地域事業会社や旅行商品を企画する仕入れ造成会社と協力しながら、ネット申し込み比率を上げていく」と話す。

 ネット比率を一層引き上げるには、国内ツアーのネット申し込みを強化する必要がある。というのも、ホテルや旅館の単純な宿泊予約や海外旅行ツアーの申し込みに比べて、国内ツアーはいまだに顧客がネットで申し込みをする比率が低いからだ。その原因は、店頭の旅行パンフレットに販売を依存してきたことや、ネット販売に向けたデータベースへの情報入力が遅れていたことが挙げられる。ネットでも国内ツアーを広く販売するには、商品を企画してパンフレットを制作する仕入れ造成会社が、2009年1月に刷新したJTBの予約・発券システム「TRIPS(トリップス)」にネット販売用に細かなツアー情報まで入力しなければならない。

 しかし、顧客が利用する交通機関や出発日などを自由に変更できる国内ツアーは、ほかの旅行商品よりもシステム面での入力作業が煩雑になる。鈴木マネージャーは「余分な人手はかけられないだろうが、とにかくデータベースへの登録を呼びかけている」と語る

ネットと店舗は敵同士ではなく味方と説く

 ネットの申し込み比率を引き上げるためのもう1つの鍵は、店舗との連携だ。現在でもネットで旅行を仮予約して最寄りの店舗で料金の支払いや旅行保険の申し込みをしたり、店舗で旅行プランの提案を受けてからネットで最終的な申し込みをしたりする顧客は大勢いる。商品選びから予約、決済までの「一部」だけをネットで実行する顧客が増えているのだ。JTBは今後、ネットと店舗を組み合わせた「クロスチャネル戦略」に活路を見いだそうとしており、その意味でもネットの充実度を上げていく必要がある。
 
 JTBがクロスチャネル戦略を掲げたのは2007年である。この戦略の難しさは、店舗の理解を得ることだ。JTBは2006年に持ち株会社に移行して約150社に分社化しているが、本社がネットに経営資源を集中投入すると、顧客が店舗に足を運ばなくなるのではないかという危機感が店舗運営の事業会社や各店舗に広がる。その「誤解」を払しょくできないとネットは進展しない。

 そこでJTBは、店舗とネットの両方が販売にかかわった場合の売り上げ配分を事前に決めておくことにした。ネットで仮予約したり決済したりした顧客でも、店舗で商品説明を受けた場合などは店舗側にも一定の売り上げが計上される仕組みにした。

 さらに、店舗運営の事業会社や各店舗にはネット利用者の実態調査の結果を見せて理解を求めた。Web戦略推進部の調べによると、ネットで旅行商品を選んだ後に決済などのために最寄りの店舗に足を運んだ顧客の70~80%は、それ以前にその店舗を利用したことがなかった、というものだ。

 つまり、ネットは店舗にとって競合する存在ではなく、新規顧客を店舗に連れてきてくれる頼もしい存在なのだと説いた。ネットで旅行商品を見つけて来店してくれた顧客に店頭では旅行のオプションや保険を紹介するなど、店舗でアップセルやクロスセルにつなげられれば、店舗にとってもビジネスチャンスが広がる。

 現在の不況や新型インフルエンザなどの逆風にさらされているJTBは、ネットと店舗の連携で現状打破の突破口を見いだそうとしている。