寝具製造卸を手がける西川産業(東京都中央区)の人事総務部が、同部門の社員を多能化して業務負荷を平準化する手法によって、残業時間の大幅削減に成功した。2008年8月から取り組み始めて、2009年1~6月に平均残業時間を前年同期比で半減させた。「繁忙期の人事給与関連の業務負荷を平準化したことが効果的だった」と同社人事総務部の荒川泰典営業人事課長は語る。
西川産業の人事総務部は長年にわたって、業務別の担当制で社員を配置してきた。その結果として専門化と属人化が進み、ある社員に業務負荷が集中しても、同僚が助けに回れなくなってしまった。これが残業時間の長時間化を招いていた。
その問題が特に大きかったのが給与計算の業務である。同社には様々な職種があり、それぞれ給与体系が異なる。正社員や、デザイナーなどの特殊技能を持つ契約社員、販売担当の契約社員、パートタイムの従業員などだ。しかも期中に契約社員が正社員に変更されることも多い。これらの対応で人事給与関連業務は複雑になっていた。
加えて10年以上前に導入した人事給与システムの操作が複雑で、専任のベテラン担当者以外には思うように操作できなくなっていた。長年にわたって人事制度の変更などに応じてつぎはぎで機能追加してきたためだ。操作マニュアルを整備したものの「マニュアルが数センチもの厚さになり、どこに何が書いてあるかを探すのが大変だった」(荒川課長)。結局、年末調整などの繁忙期でもほかの業務の担当者は手助けできず、担当者の残業時間が突出して長くなっていた。
課題を克服するために荒川課長は、社員を多能化して助け合える仕組みを部門内に導入しようと考えた。業務負荷を肩代わりすることで、残業時間を減らす狙いである。そのために人事給与システムの刷新に取り組んだ。
荒川課長は大きく3つのステップでシステムの見直しと活用を進めた。具体的には(1)人事給与システムを利用する業務をすべて洗い出す、(2)現在の業務に標準で対応でき、しかも操作が直感的で分かりやすい人事給与システムに刷新する、(3)ほかの業務の担当者にも人事給与システムの操作の一部を覚えてもらい多能化を進める――である。(1)と(2)は2006年から2007年8月にかけて実施し、クレオの人事給与パッケージ「ZeeM」シリーズを採用した。(3)については、人事給与関連業務の専任担当者がZeeMの操作に慣れてほかの担当者にも教えられるようになった2008年8月から開始した。
荒川課長の狙い通り、多能化による業務の平準化は、人事給与関連業務の残業時間を大幅に削減した。2008年12月の年末調整に伴う業務では、システムへの入力や入力データのチェック作業をほかの業務の担当者が代行。前年同月比で60%近い残業時間の削減効果が得られた。
しかもほぼ同じ時期に給与関連業務の担当者が異動し、現在の担当者は勤務経験が1年~1年半と経験が浅い社員ばかりになっている。それでも「ベテランが取り組んでいた時期よりも時間を短縮できている」と荒川課長は効果に満足している。