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 合成ゴム大手の日本ゼオンが、全社規模でのコスト削減運動「ZΣ(ゼットシグマ)」の取り組みを強化している。全社員にコスト削減につながる提案を奨励し、2009年3月期には3400件だった提案件数を、2010年3月期に5000件に引き上げる。既に4月からの約4カ月間で2500件以上の提案が上がっており、目標を達成できる勢いだ。同社はZΣ運動の成果を生かしつつ、2010年3月期に100億円の固定費削減を目指す。前年度の固定費は1000億円未満だったので、そのなかでの100億円は大きな割合と言える。

 ZΣ運動は、全社員からのコスト削減の提案をイントラネット上に集約し、活動の進ちょくを管理する仕組みを備えている。コスト削減効果が大きな施策やプロセスが優れている提案には、1件につき月額2000円または4000円の報奨金を2年間継続して提供するなど、社員の意欲を引き出すインセンティブも用意する。こうした体制によって1999年に活動を開始して以来、毎年20億~30億円規模のコスト削減効果を着実に上げてきた。2009年3月期にはさらに上積みして43億円の効果を上げた。

 ところが、こうした努力にもかかわらず、同社の2009年3月期の業績は売上高が前期比11%減の2688億円、営業利益が同88%減の29億円と急激に悪化した。2008年9月のリーマンショックの影響などにより、主要取引先の需要が減少したのが響いた。2010年3月期もすぐに売り上げ規模を回復させるのは難しく、固定費を従来以上に抑える必要があると判断し、ZΣ運動を強化することにした。

 このため今期のZΣ運動では、以前はさほど注意を向けてこなかったテーマについても、現場でアイデアを出し合っている。例えば、ある製造部門ではプラント設備の定期点検作業に要する時間を、安全性や品質を損なわずに減らす工夫ができないかを検討している。

 従来は設備をフル稼働させている前提で点検スケジュールを組んでいた。しかし現状のように7割程度の稼働体制であれば、複数の設備の稼働時間を調整することで点検作業を効率化でき、時間を節約できる。また、点検の頻度を減らすことも考えられる。こうした工夫により、点検作業に必要な部材や試料の購入費、外部に調査を依頼する費用などを節約できるほか、浮いた時間を現場作業者が別の改善活動に割り当てる副次的な効果も期待できる。定期点検や修理の作業に年間100億円強を投資してきた同社にとって、プラント設備の定期点検作業の改善は大きなコスト効果が見込める分野だ。

 一方で、コスト削減効果が数千~数万円といった地道な提案についても、今期はZΣ運動に積極的に取り込んでいる。これらの積み重ねによって、年間5000件の提案を集める狙いである。