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最短で600マイクロ秒の遅延を実現

 低遅延性について,東証はRFPで,APから売買システム手前までのデータ送受信にかかる遅延時間を常時2ミリ秒以下という条件を出した。「この要求はけた外れ。平均遅延を保証する通信事業者のSLAと比較しても高い水準だった」(日立の並木部長)。

 もともと,光ファイバ網で高速性を確保しているうえ,ルーター/スイッチにはアラクサラネットワークスが提供するASICベースの製品など高速な装置を採用したため,遅延時間を抑えやすい構成だった。それでも2ミリ秒というハードルは容易には超えられない。

 そこで,テストベッドでの実測を繰り返し,経由するネットワーク機器の段数を減らすなどの工夫を重ねて遅延時間を短縮した。もちろん,NTTコムによる光ファイバのルート最短化なども効いた。結果として,実測では「ネットワークにかなり負荷をかけた状態でも通常時で600マイクロ秒程度。最も遠い経路を通った場合でも900マイクロ秒程度」(並木部長)と,要求水準を大幅に超える遅延時間を達成した。

さらなる低遅延のニーズに応える

 高い水準と能力を持ったネットワークを稼働させた東証だが,証券会社の低遅延のニーズはとどまるところを知らないという。「ミリ秒の世界を超え,マイクロ,ナノのオーダーに突入しつつある」(吉田部長)。

 このニーズに応えるために東証が2009年5月に正式スタートしたのがコロケーション・サービスである。東証のセンター内に証券会社が取引用システムを設置して,売買の受発注を行う仕組みだ(図2)。「従来のようにAP経由で東証のセンターに接続する場合よりも機器のホップ数が減り,確実に通信の遅延時間が短縮される。多くの証券会社がコロケーションを採用したがっている」(坂本マネージャー)。既に10社以上が利用中という。

図2●WDM網を波長多重で活用し,証券会社向けコロケーション・サービスを提供<br>東証のセンター内に証券会社の取引用サーバーをコロケーションできるサービスだ。取引システムと同一サイト上で指示が出せるため,さらに低遅延の取引が可能になる。arrownetのWDM網の2波長目以降をレイヤー2コロケーション用ネットワークとして活用している。証券会社にとっては堅ろうなデータ・センターに取引システムを設置できるメリットもある。
図2●WDM網を波長多重で活用し,証券会社向けコロケーション・サービスを提供
東証のセンター内に証券会社の取引用サーバーをコロケーションできるサービスだ。取引システムと同一サイト上で指示が出せるため,さらに低遅延の取引が可能になる。arrownetのWDM網の2波長目以降をレイヤー2コロケーション用ネットワークとして活用している。証券会社にとっては堅ろうなデータ・センターに取引システムを設置できるメリットもある。
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 東証は,証券会社がコロケーションしているシステムをメンテナンスするためのネットワークに,AP経由での取引用とは別の波長を割り当てた。証券会社の社内ネットワークを東証のコロケーション・スペースまで延長するような形になることから,IPアドレスの自由度などを確保するためにレイヤー2で接続するようにした。

 結果として,新たに回線を引くことなく大容量のネットワークを新設した形になった。吉田部長は「arrownetの拡張性を早くも実証できた」と語る。コロケーション用サービスでは予想以上に大容量データが発生しており,「WDMの3波目に拡張することを検討中」(吉田部長)という。

 もちろん,この拡張性は取引トラフィックの増加にも効く。arrowheadが正式稼働すれば,既存システムの500倍ものトラフィックが流れるようになる見込み。さらに,証券取引のトラフィックは突然,爆発的に増えることがある。これを耐える容量を,波長を増やすだけで用意できる。

●企業情報

本社:東京都中央区
従業員数:818名(出向者を含む)

日本を代表する金融商品取引所。2010年1月に「arrowhead」と呼ぶ次世代システムの稼働を予定し,取引処理の高速化に対応する計画だ。それに伴って2009年7月に新たな基幹網「arrownet」を稼働させた。