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「開発手法の標準化など、制度や方法論を改革する一方で、社員の意識を変える必要性も感じた」と話す茅野倫生常務執行役員
「開発手法の標準化など、制度や方法論を改革する一方で、社員の意識を変える必要性も感じた」と話す茅野倫生常務執行役員
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与信システム開発部与信モニタリングチームでは週次で「振り返りミーティング」も実施。課題を洗い出して組織的な改善に取り組む。写真左端がリーダーを務める宮澤貴之部長代理。推進責任者を務める菅尚之次長(左から三番目)もミーティングに立ち会う
与信システム開発部与信モニタリングチームでは週次で「振り返りミーティング」も実施。課題を洗い出して組織的な改善に取り組む。写真左端がリーダーを務める宮澤貴之部長代理。推進責任者を務める菅尚之次長(左から三番目)もミーティングに立ち会う
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(左から)事務局を務める開発支援部の大沢剛氏、恩田美鈴氏、竹野内学次長、高橋康子氏
(左から)事務局を務める開発支援部の大沢剛氏、恩田美鈴氏、竹野内学次長、高橋康子氏
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 日本総合研究所(日本総研)で銀行向けのシステム開発を担当する第一開発部門は、2010年6月にプロジェクト・ファシリテーションを導入し、定着させつつある。650人の全部員が毎朝スタンディングミーティング(立って行う会議)を実施し、その日のタスクや時間割を共有している。これによって社員間のコミュニケーションを改善し、相互に助け合う行動を促す。組織の活性化に加え、業務改善を促進する効果も生まれている。導入に当たっては永和システムマネジメント(福井県)の支援を受けている。

 同部門の社員は、新卒入社した社員のほか、銀行からの転籍者、中途採用社員なども多く、やり取りに行き違いが発生することがあった。「若手とベテランをつなぐ30代の中堅社員層が少なく、コミュニケーションが難しくなっていた」と第一開発部門長を務める茅野倫生常務執行役員は話す。

 茅野常務らは、こうした課題の解決策を求めてトヨタ生産方式を導入したメーカーの製造現場を見学した。その時に、トラブルが発生すると直ちにランプで周囲に知らせる「見える化」の仕組みに興味を抱いた。そこでシステムの開発現場に向いた同様な手法を探し、永和システムマネジメントのプロジェクト・ファシリテーションに行き着いた。永和システムはアジャイル開発手法とトヨタ生産方式、ファシリテーションスキルの3つを融合させたプロジェクト・ファシリテーションを提唱している。

全員が一人ひとりの状況を共有

 2009年11月から第一開発部門の3分の1のチームで試行を始め、2010年6月に同部門内の全14部に拡大した。各部ごとに推進責任者を決め、部内に複数あるチームのリーダーと一緒に、コミュニケーションや業務改善の施策を導入している。開発支援部の竹野内学次長ら4人が事務局を務め、各部の推進責任者やチームリーダーへの教育、実践をサポートしている。また導入に先立っては、茅野常務が各部の部長や次長とランチミーティングを持ち、現場の意見を聞くなど、事業トップ自ら改善の意識づけも行ってきた。

 現在すべての部で実践されているのが、毎朝のスタンディングミーティングだ。その日やるべき仕事を個人ごとに列挙した「タスクボード」や時間割を書き出し、10~15分のミーティングで全員で読み合わせをする。その際に上司や同僚からアドバイスを仰ぎ、業務上の障害を早期に解決する。「従来は各人のタスクを共有するチームがあまり見受けられず、全員がチームの状況を確認できなかった。ホワイトボードなどの見える化ツールに書き出し、全員が直接確認する場を設けることで、情報共有を徹底するのに加え、コミュニケーションが活性化する効果も得られている」と開発支援部の竹野内次長は話す。

 さらに、課題をチームで共有し、組織的な改善に踏み込む例も出始めている。与信システム開発部の与信モニタリングチームでは、一週間の仕事を反省する「振り返りミーティング」を毎週開催。「リリース後の障害を減らす」などチームの目標を達成するための施策や課題を書き出す。これらを書き出した付せん紙を「K(キープ:良かったので次もやりたいこと」「P(プロブレム:問題だったので次はやめたいこと」「T(トライ:次にやってみたいこと)」に分類し、現状の課題や今後の施策を全員で整理している。「こうした取り組みから、業務用語集やリリース作業のチェックシートなど、作業効率を上げるツールが生まれている」と、同チームのリーダーを務める宮澤貴之部長代理は効果を語る。

 2009年11月から試行した同部門の3分の1の社員を対象に2010年3月、ファシリテーションの実行度を問うたところ、タスクボードや振り返り会議などが「定着した」とするチームは全体の77%、「身近な業務改善に活用している」のは54%、「大きい(組織的な)業務改善に活用している」のは28%だった。同部門全体の実施状況は2011年3月までに調査する予定。「現時点で、コミュニケーションの改善には効果が上がり、社員同士の会話も増えたと実感している。今後は改善マインドの醸成にもつなげたい」と茅野常務は期待をかけている。