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写真●主なプロジェクトメンバー。左から順に、ニッセイ情報テクノロジーの望月洋平氏、高倉禎氏、日立製作所の加藤雄一朗氏
写真●主なプロジェクトメンバー。左から順に、ニッセイ情報テクノロジーの望月洋平氏、高倉禎氏、日立製作所の加藤雄一朗氏
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 ニッセイ情報テクノロジーは大規模なシンクライアントシステムを構築し、2010年10月1日から利用を開始した。アプリケーションを仮想クライアントのサーバーに配信、それをシンクライアント(PC)に画面転送するものである。

 利用開始当初は、同社でシステム基盤の設計や構築を担当する約1000名のITエンジニアが、WebブラウザーやOfficeソフトウエア、決済システム、勤怠管理システム、グループウエア(Lotus Notes/Domino)など10種類ほどのアプリケーションを利用する。段階的に利用者を増やし、最終的には対象を全社員と協力会社の社員の計1万人に広げる計画である。

 採用したソフトウエアやハードウエアは、比較的新しいものが多い。例えば、仮想クライアントの構築ソフトは2010年春に登場したシトリックス・システムズ・ジャパンの「XenApp 6」、またサーバーハードウエアは2010年春に登場した日本IBMのブレードサーバー「IBM BladeCenter HX5」、そしてサーバーOSは2009年9月に登場したWindows Server 2008 R2である。前例のほとんどない組み合わせで、実際に構築してみないとどんな問題が起こるのか分からない状況下で、作業を進めた。

プライベートクラウドで一体運用

 同社は数年前から内部統制の強化や運用管理の負荷軽減を目的に、シンクライアントの採用を検討してきた。しかし、費用対効果が低いと判断し、導入を見送っていた。プロジェクトリーダーを務めた高倉禎氏(基盤ソリューション事業部 ジェネラルマネジャー 兼 インフライノベーション事業部 R&D推進ブロック チーフマネジャー)は、「数年前の試算では投資回収に5~6年かかっていた。当分は、効率化のソリューションにはなり得ないと見ていた」と説明する。

 ところが、仮想化技術の発展によって状況が大きく変わったという。「各種サーバーを集約したプライベートクラウド環境で仮想クライアントを支えるサーバーも一体的に運用することで、ハードウエア周りの構築および運用コストを大幅に削減できる見通しが立った」(高倉氏)のである。例えば、仮想クライアントのサーバーの処理負荷は、夜間など就業時間外は大きく下がる。そこで、1台のサーバーを昼間は仮想クライアントのサーバー、夜間はバッチサーバーとして使い回すことで、プライベートクラウドのリソース利用効率が高まり、結果的に仮想クライアントのサーバー費用として算出されるコストが減ると考えた。

 そうしたアイデアが実際のコスト削減にどの程度結び付くか確かめるため、高倉氏は2009年暮れに、プライベートクラウド環境を拡充してデスクトップクラウドとしての役割も持たせる実験的な取り組みの実施を経営陣に提案した。すると、「限定的な取り組みにとどめず、全社のシンクライアント化を一気に推進せよとの結論が出た」という。

仮想化技術を三つ組み合わせる

 構築プロジェクトがスタートしたのは、2010年5月だった。当初は数人の体制で情報収集を始めた。そして、国内外の大規模な事例などを参考に、200人のユーザーを1台の物理サーバーでまかなうとの方針を立てた。それにより、投資の回収期間が3年弱に短縮される。

 同社は当時、大規模なシンクライアントシステムの構築経験を持っていなかった。そこで、実践的なノウハウを持つ日立製作所に、システムの設計と構築を依頼した。そして2010年7月に、日立製作所のメンバー数人がプロジェクトに加わって、設計作業がスタートした。

 設計では集約率を高めることに加え、Internet Explorer(IE)の複数バージョンの同時利用を可能にすることや、運用作業の自動化率を高めることなどがポイントになった。それらを考慮し、仮想化技術を三つ組み合わせたアーキテクチャーが導き出された。設計や構築を主導した日立製作所の加藤雄一朗氏(プラットフォームソリューション事業部 プラットフォームSI第1本部 産業・流通PSI部 主任技師)は、「サーバー仮想化でサーバーハードウエアとOSが分離され、アプリケーションストリーミング機能を用いたアプリケーション仮想化でOSとアプリケーションが分離される。さらに、画面転送によるデスクトップ仮想化でクライアントハードウエアとOSやアプリケーションが分離される」と説明する。

 具体的には、物理サーバー1台当たり、XenAppサーバーを四つ動かす。アプリケーションストリーミング機能を用いることで、多数存在するXenAppサーバーにアプリケーションを効率よく配信できる。XenAppサーバーからシンクライアントへは、ICA(Independent Computing Architecture)と呼ぶプロトコルでアプリケーションを画面転送する。