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写真●フレックスジャパンの徳武初男取締役FS事業部担当役員
写真●フレックスジャパンの徳武初男取締役FS事業部担当役員
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 ワイシャツ製造大手のフレックスジャパン(長野県千曲市)が、フリーミアムと呼ばれる販売手法を応用し、シャツのインターネット通販で売り上げを伸ばしている。フリーミアムとは基本的なサービスまたは商品を無償で提供して顧客を集めつつ、より質の高いサービスや商品は有償提供するビジネスモデルのことだ。SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)などインターネットを利用した情報系サービスでは一般的な手法だが、フレックスジャパンは新品のシャツを1枚無償で提供している。現物のアパレル商品によるフリーミアムの取り組みはまだ珍しい。

 フレックスジャパンはシャツのアウトレット販売サイト「プラトウ」を、2010年6月から運営している。フリーミアムを開始したのは同8月からで、1年間に6070枚のシャツを無償で提供した。この期間に有償のシャツ販売で、約2100万円の売り上げを稼ぎ出した。徳武初男取締役FS事業部担当役員は「販売単価も当初の1300円前後から1600~2000円程度まで上向いている」と語る(写真)。フリーミアムを取り入れた販売活動に手応えを感じているという。

 フリーミアムを採用した理由は無償による集客効果に加えて、「試着してもらうことで寸法が合わないことに対する顧客の不安感を払拭できることだ」(徳武取締役)。アパレル商品のネット通販でネックになりがちなことの筆頭に挙げられるのがサイズ確認だが、先に試着用のシャツを送付して顧客に確認してもらえれば、この問題を解消できると考えた。一度袖を通したシャツは「送り返してもらっても、改めて販売するのは難しい」(同)。そこで販促の一環と割り切り、顧客に試着品を無償提供することにした。

 フリーミアムは、同社の強みを顧客に理解してもらううえでも有効だという。プラトウでは商品サイズが豊富にそろっていることをアピールしており、競合他社の多くが首回りは2cm間隔、袖丈は4cm間隔で商品を用意しているのに対し、プラトウは首回りで1cm間隔、袖丈2cm間隔ときめ細かい品ぞろえになっている。それだけ体型に合うサイズを見つけやすい。だからこそ、先に試着品を提供してサイズを実物で確かめてもらい、「ピタリと合うサイズがある」というプラトウの特徴を顧客に印象付けようとしている。

生産設備を持つから無償提供可能

 フレックスジャパンが無償提供するシャツは柄やデザインこそ顧客側で指定できないものの、商品として市場に出回っている品質の新品そのものである。このようなサンプルを配布しても事業が成り立つのは、「生産ラインを自前で保有するメーカーだからだ」と徳武取締役は明かす。

 同社は製造原価が通常よりも大幅に安いシャツの在庫を一定量抱えている。これらはOEM(相手先ブランドによる生産)供給している大手取引先からの大量発注で生産したシャツの余剰分などである。こうしたシャツの原価は「無償で提供しても販促費として割り切れる程度の金額だ」(徳武取締役)。顧客の自宅への配送料も宅配便の割安メニューを利用することで数十円程度に抑えた。

 サイズの選択肢を広げると余剰在庫を抱えるリスクが高まりそうに思えるが、ここも問題にならないように工夫した。売れにくいサイズへの対応は受注生産を採用。既製品などの生産が一段落した時間帯を使って生産している。その分、納期は10日から2週間程度と長くなるが、体のサイズに合わせて作るオーダーメード感覚のものづくりを評価する顧客には納得してもらえると判断した。