ローソンは2011年中にも、社内のポータルサイト「ローソンスクエア」で、約3500人いる社員向けに感動ムービーの上映を開始する。感動ムービーとは、現場のエピソードを写真や音声とともに短い文章だけで伝えるスライドショーのことだ(関連記事)。社員同士でその企業が大切にしている価値観や経営理念を共有する時に使う。
CVSグループ支社サポート本部運営共育研修部の清水とみか部長(ES担当)は、「どの企業にもある経営理念の言葉は頭で理解するものだが、現場のエピソードをつづった感動ムービーは経営理念を心で理解するものだととらえている」と話す。ローソンは経営理念を社員に再確認してもらうため、6話8分から成る感動ムービーにまとめた。
ローソンの感動ムービーの一例を挙げよう。右上の写真を見ながら、実際にムービーを見るつもりで読み進めてほしい。内容は全社員の約3分の1を占めるスーパーバイザー(SV、店舗指導員)との仕事のつながりに関するものだ。
「エリアMD(マーチャンダイザー、地域の商品担当)時代の話です。SVさんの質問や依頼には、できるだけ早く!遅くとも当日中に応えようと心がけていました。当時の私にとって、SVさんはお客様だと思っていたから。『SVさん→オーナーさん→お客様』。間接的につながっているからです。その頃は、特に『ありがとう!』など言われませんでした。でも、私が東京へ転勤後、顔なじみのSVさんと会った時のこと。「○○さんの回答の速さは商品部イチだったよ!」。笑顔で言ってくれました。とても嬉しかったです。信頼を築くことの大切さを学んだ瞬間でした。」
清水部長は、人材育成や起業家支援を手がけるアントレプレナーセンター(東京都中央区)が主催する感動ムービーの作成セミナー「ビジョナリー経営創造研修」に参加。異業種の企業と共に研修を受講し、今回の感動ムービーを制作してきた経緯がある。2011年7月にはローソン社員への公開に先駆けて、研修参加者らに向けての感動ムービーのお披露目会があった。当日は会場入り口でハンカチが配られたが、これは参加者が各社の感動ムービーを見てお互いに涙ぐんだ時のもの。実際、参加者がハンカチで目を覆うシーンが見られた。
清水部長は「全国1万カ所のローソン店舗から、うちでも感動ムービーを作りたいと声がかかることを期待したい。現場には店舗の数だけ感動的なエピソードがあり、その事実を従業員が共有することで経営理念や価値観が現場に伝わっていくはずだ」と大きな目標を語る。