豊島区は2012年1月、同自治体が進めている基幹システムのオープン化によって新たに可能になった新システムとして、職員のノートPCから基幹システムを安全に利用するためのVDI(仮想デスクトップ)環境と、基幹システムで管理している住民情報を職員みずから分析できるようにするBI(ビジネスインテリジェンス)環境を、ともにカットオーバーさせた。
二つの新システムの前提となった基幹システムのオープン化プロジェクトは、2014年度に工事が完了する新庁舎に合わせたもの。新庁舎での業務開始をメドに、現在はメインフレーム上で稼働している既存の基幹システムのすべてを、オープン環境に移行させる。基幹システムをオープン環境で提供することで、これまでできなかったことができるようになる。
システム化を推進した政策経営部情報管理課課長の高橋邦夫氏(写真1)は、システムのオープン化によって大きく二つのことが可能になったと説明する。一つは、VDI環境への移行による職場の省スペース化。具体的には、約350台のパソコンを撤去できる見込みだ。もう一つは、基幹データを職員みずから分析できるBI環境が整ったことである。
基幹系の専用端末をVDIに移行、オフィスの省スペース化を図る
従来、豊島区では、住民情報などの重要なデータを扱う基幹系システムと、電子メールや日常の事務に使う情報系システムが、それぞれ独立していた。このため、業務ごとに異なるパソコンを用意し、基幹系システムを利用するためのパソコンと、情報系システムを利用するためのパソコンを、それぞれ職員に割り当てていた。一人2台体制となり、職場のスペース効率は悪かった。
こうした中、基幹システムのオープン化プロジェクトが始まった。ここで、一つのアイデアが出てきた。オープン化が完了したシステムに関しては、従来の基幹システム専用パソコンではなく、情報系システムのパソコンから操作できるようにしよう、という案である。情報系のパソコンを使いつつ、安全に基幹系システムを利用する方法としてVDIの利用が浮上した。
豊島区が採用したVDIシステムは、情報システムを置いているデータセンター側に、職員の仮想デスクトップ機を配置し、基幹系システムへはこれを介して接続するというもの。情報系のパソコンを端末として利用するものの、情報系のパソコンから基幹系システムに直接アクセスするわけではないため、パソコンを1台に集約しながら安全性を確保できる。VDIを実現するミドルウエアとしては、Windows Serverの仮想マシン環境(Hyper-V)とVDIシステムを、そのまま使っている。
2012年1月時点では、まだ一部のシステム(一部のユーザー)だけがVDI環境を利用している。オープン化が完了していない基幹システムについては、依然として基幹システム専用のパソコンを利用する。オープン化が完了した基幹システム(のユーザー)から順次、VDI環境へと移行していく。新庁舎で業務を開始する2014年度には、すべての基幹システムがオープン化され、全職員のパソコンが1台に集約される予定である。
VDIのインパクトは大きい。豊島区の職員は約2000人で、全員が情報系のパソコンを持っている。基幹系システムを利用する職員は500~600人。2012年1月時点では、このうちの100~200人がVDI環境へと移行した。前述のように、最終的には約350台のパソコンを撤去する。350台のパソコンを撤去した場合、80~90平方メートルほどのスペースが空く計算になる。