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写真●アンリツの計測器生産ライン
写真●アンリツの計測器生産ライン
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 計測器大手のアンリツが生産能力を増強する。2013年7月をメドに、福島県郡山市に新工場を建設する。高速携帯電話サービス機能である「LTE(ロングタームエボリューション)」向け計測器の販売が好調なため、国内投資で一気に攻めに転じる。米アップルが2012年9月に発売したスマートフォンのiPhone 5がLTEに対応したことで、LTEの開発用計測器で世界シェア50%以上を握るアンリツに追い風が吹いている。

 工場の投資額は約40億円で、2013年3月期に計上する。現在、24時間フル稼働状態にある4台の生産装置を6台に増設。これらを設置する新工場は基板の自動組み立てに特化し、既存工場には人手の組み立てや調整・検査、梱包工程を集約する。前後で大きく異なる2つの工程別に工場を分け、それぞれで生産効率を追求する。アンリツはトヨタ生産方式の発想も取り入れている。

 アンリツが日本での生産にこだわるのは、「基幹技術を手元に蓄積しておくためだ」(服部司執行役員SCM本部長)。工場が日本にあれば、国内はより短納期に対応できるため、特に日本の通信会社からの即納要求には応えやすくなる。

 アンリツは福島県郡山市の工場に、100人以上いるSCM(サプライチェーンマネジメント)部隊のほとんどを集結させている。ただ、SCMの精度を高めるため、開発などがいる神奈川県厚木市の本社や各営業拠点と工場をテレビ会議やウェブ会議で随時結び、在庫管理を徹底している。アンリツの計測器は1台が数百万円する高価な製品が主流になる。そのため、1台の在庫管理が経営を大きく左右することになる。

 なお、アンリツは2013年3月期からIFRS(国際会計基準)を採用している。グローバルの通信関連市場を見据え、世界標準の財務会計に基づく経営システムの構築も急いでいる。