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 「私物のスマートフォンを業務で利用できるようにするには、セキュリティの確保などクリアすべきハードルが少なくなく大変だった。しかしそれらをクリアした今、『仕事の普段使い』というスマートフォンの新たな用途が開けてきた」。

 こう語るのは、三菱商事の情報システム会社、アイ・ティ・フロンティア(東京・港区)の安達英之 MC連結IT企画本部 ITF情報システムユニット ユニット長だ。安達ユニット長らアイ・ティ・フロンティアの情報システム部門のメンバーは2012年12月、社員向けにBYOD(私物デバイス活用)ができる環境を整備し運用を開始した。

 運用を始めた12月以降、社員の日常業務で必要なものを中心に、スマートフォンから利用できるサービスを徐々に増やしている。12月にはメールの送受信、スケジュール管理、社内ファイルサーバーへのアクセスという三つのサービスを、2013年1月にはイントラネットの社内通知を、それぞれ利用できるようにした。2月末までには勤怠管理などができるようにする。

 同社の社員は顧客企業の開発・運用現場に常駐していることが少なくない。週1回、会社に戻ってからでないと勤怠の処理ができないといったことが解消できる。社内で勤務する社員も「終業間際にPCの電源を落とした後、勤怠管理のし忘れに気付いても、PCの再立ち上げという手間をかけずにスマートフォンから行える」と安達ユニット長はメリットを語る。

 BYOD環境で利用できるサービスは、事前に実施した社員向けアンケートの結果を加味して、展開している。BYOD環境の企画に携わった吉村万砂子MC連結IT企画本部 ITF IT企画ユニット ユニット長は 「社内のファイルサーバーで管理している業務に必要な資料を閲覧したい、という要望が強かったので、12月の運用開始段階で応えた」と話す。

ハードルはセキュリティと業務電話の課金

 同社の情報システム部門がスマートフォンの業務利用の有効性を検証し始めたのは、2012年4月から。経営層や管理職を対象にスマートフォンを業務で試用してもらったところ「メールやスケジュールが従来の携帯電話に比べて見やすい」といった評価が得られた。

 ただしスマートフォンの業務利用の有効性は認められたものの「業務用として支給されると私用のものと複数持つことになって煩雑だ」といった指摘も受けた。モデルチェンジや性能向上が著しいスマートフォンを会社で支給すると機種指定もしづらい。そこで、情報システム部門のメンバーは、私物スマートフォンを利用できるBYOD環境の実現可能性を探った。

 BYOD環境の実現性を見極めるため社員を対象にアンケートを実施した。その結果、「社員の多くが私用のスマートフォンを持っていると分かったが、セキュリティ面での不安や運用面で課題を感じる社員が少なくないこともつかめた」と吉村ユニット長は振り返る。

 そのセキュリティ面の不安とは、紛失時に遠隔操作で業務データを消去できるようにするスマートフォン管理ソフトの導入を前提にしたものだった。「その管理ソフトで私用のデータも取得されてしまうのではないか」というものだった。また「スマートフォンの自分の電話番号を知られるのに抵抗を感じる」という社員もいたという。一方の運用面では「業務で必要な電話を私物でかけるとなると、私用とは別に業務の通話料金を精算するが面倒になる」という指摘があった。

 そこで同社の情報システム部門は、セキュリティ面での不安を解消するため、管理ソフトの導入は見合わせる一方で、業務データを閲覧してもスマートフォン上に残らない仕組みを採用することにした。具体的には、e-Janネットワークスが提供するサービス「CACHATTO」を採用した

 このサービスは、業務用のデータをスマートデバイス上の専用ブラウザに表示させるだけで、スマートフォンにデータは保存されない。「万が一、スマートフォンを紛失しても、業務上のデータの漏えいは防げる」と、BYOD環境の整備プロジェクトを担当した、MC連結IT企画本部 ITF情報システムユニットの竹内真由美氏は話す。