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単一の商品ではなく、それに関連する別の商品やサービスを薦めるというように、複数の商品を同時に販売する取り組みを指す。購買単価を上げることが可能になる。

 現在放映中のキリンビールのテレビCMは、俳優の佐藤浩市さんが料理を次から次へとおいしそうに食べるシーンが印象的です。宇都宮餃子、フカヒレ、ちゃんぽん——47都道府県ごとに選ばれた名物料理を矢継ぎ早に食べていく、このCMは全部で10パターンもあり、1パターンごとに5種類の料理を食べるシーンが流れます。どの映像からも「ビールと一緒においしい食べ物を食べましょうよ」という作り手のメッセージが伝わってくるようです。

 ところで、なぜ、ビールのコマーシャルなのに、キリンビールは食べ物の映像ばかり流しているのでしょうか。この映像の裏には、消費者にビールと食品の同時購入を提案する周到な戦略が隠されています。このように、関連する商品・サービスの購入を併せて提案する取り組みが「クロスセリング」です。

◆効果
購買単価を向上させる

 クロスセリングは、消費者の購買単価を上げるための施策の1つです。例えば、洋服を買ってくれた顧客に装身具を併せて薦めるといった施策もクロスセリングの具体例です。

 クロスセリングの成否のカギは、顧客ニーズの見極めや、需要を喚起する販促の組み合わせです。売れる商品に、売れない商品を抱き合わせて販売するようなやり方では、空振りに終わります。

 キリンビールの場合は、小売店にどのような売り場作りを働きかければ、陳列スペースを広げてもらえるのかが大きな課題でした。

 小売店が望んでいることは、まさに消費者の購買単価の向上でした。食品の粗利に貢献できる提案こそが、実は小売店には魅力的だったのです。そんな状況で単に「ビールをたくさん並べてください」と提案しても、小売店はなかなかメリットを感じてくれないのです。

◆事例
うなぎとビールを併売

 そこでキリンビールがつかんだ答えが食品とのクロスセリングでした。おいしい料理とビールを同時に味わうイメージを宣伝で消費者にアピールしつつ、小売店に「ビールと食品を併売する売り場を作ってみましょう」と提案することにしたのです。

 既に、2003年には中部地方のうなぎ料理である「ひつまぶし」をCMで取り上げ、地方料理だったひつまぶしを全国的に有名にした実績があります。この時には、ビールとうなぎを併売する売り場作りを推進して小売店から好評を得ることに成功しました。

 今回のCMに当たっても、キリンは量販店本部と話し合い、各種料理の食材とビールをセットにした特設売り場のスペース確保を働きかけています。

(井上健太郎)