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品質や機能といった商品・サービスそのものの価値ではなく、購入したり使用する過程の“経験”から得られる価値。商品の付加的魅力として差異化要因になる。

 私たちは車を買うときに、どのように選ぶでしょうか。もちろん、燃費や室内の広さといった性能面や、価格は大きな判断材料になるでしょう。しかしそれ以上に、見た目の雰囲気や、試乗したときの乗り心地といった要素が重要です。販売店でくつろいで選べるかどうか、営業担当者が親切かどうかなども考慮に入れるかもしれません。買った後に、周りから「センスがいい」「社会的地位がある」と思われるかどうかまで考える人もいるでしょう。

 このように、車を買うときには、単に物を買うのではなく、車を選ぶ喜びや、その車を保有すると名声を得られるという優越感を買っていると考えたほうが適切です。

 このような、商品・サービスを消費する過程における“経験”が持つ価値を「顧客経験価値」といいます。米国の経営学者であるバーンド・H・シュミット氏の著書(日本語訳はダイヤモンド社『経験価値マーケティング』)などを通じて広まりました。

◆効果
品質以外の要素で差異化

 そこでしか得られない経験や感動を提供できれば、顧客に「多めにお金を払ってでも買いたい」と感じてもらえる強烈な差異化要因になります。特に、価格や品質の競争が行き着くところまで行った成熟市場で効力を発揮します。

 シュミット氏は、顧客経験価値を「SENSE」「FEEL」「THINK」「ACT」「RELATE」という5種類に分けて説明しています。SENSE(感覚的経験)は、「見た目が超薄型で格好いいノートパソコン」など五感に訴える価値のこと。RELATE(準拠集団との関連による経験)は、その商品を持つ人が互いに結び付きを感じ、ほかの人とは違うという感覚を持つことによる価値です。

 顧客経験価値(CE)と似た言葉に「顧客満足(CS)」があります。多くの場合、CSは商品・サービスを購入した直後に満足したかどうかという結果を指す概念です。一方でCEは、意思決定から購入・使用を含めたより広いプロセス全体に焦点を当てています。

◆事例
販売店まで見直す

 V字回復を果たした日産自動車は、経営再建に当たりブランドの再構築を重要課題に掲げました。日産が提供する価値を、車の機能である「装備価値」だけではなく、デザインや運転しやすさといった「非装備価値」、販売員の能力といった「販売価値」まで含めて定義。車体デザインを改良するだけではなく、ショールームや販売店を改装したり、販売店チラシのイメージを全国で統一するなどの施策を実行し、成果を上げました。

(清嶋 直樹)