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電力線を使って、データを送受信する技術。PLC(Power Line Communication)の日本語訳である。特に、コンピュータ間通信などで使えるよう、数Mビット/秒以上の通信速度を実現したものを「高速電力線通信(高速PLC)」と呼ぶ。現時点の高速PLCの通信速度は、最大200Mビット/秒である。

 高速PLCの用途は、大きく二つに分けられる。一つは、屋外の送電線を使い、ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)などと家庭を結ぶもの。ADSLの電話線やFTTHの光ファイバの代わりに、電力線を使うわけだ。もう一つの用途は、屋内の電気配線をLANの代わりに使うもの。LANケーブルの配線が必要なくなる。

 ただし、いずれの用途とも国内ではまだ実用化されていない。高速PLCを利用した際に漏洩する電磁波が短波放送やアマチュア無線と混信し、通信の妨げになってしまうからだ。高速PLCは、2M~30MHzという高い周波数を利用して電力線にデータを流す。すると電力線がアンテナの役割をし、電磁波が漏れてしまうのである。

 総務省の電力線通信技術研究会が2002年8月に実施した大規模なフィールド実験では、漏洩電磁波が大きく、既存の無線通信に悪影響を与えることが報告された。その結果、総務省は実用化を先送りするどころか、メーカーが実験をすることすら許可しないという結論を出した。

 ほとんどの送電線が地中に埋まっている欧州では無線通信に与える影響が少ないとして、高速PLCがコンシューマ向けブロードバンド回線として実用化されている。しかし、送電線の多くが高架で張られている日本では、ADSLやFTTHの代わりに高速PLCを使えるようになる見込みは小さい。

 その一方で、屋内での利用に関しては、状況が変わりつつある。配線が建物の壁のなかにあることから、屋外に比べて漏洩する電磁波を低減できる可能性があることと、情報家電メーカーなどが、高速PLCを新たなビジネスの種として本気で考え始めたからである。

 2003年3月に発足した高速電力線通信推進協議会(PLC-J)の働きかけなどもあり、昨年1月、総務省は漏洩電磁波の低減を目的とした実証実験を許可。それに応じてメーカーや通信キャリアが、漏洩電磁波を低減する技術の効果検証に乗り出した。そして2005年1月25日、総務省は実証実験のデータを基に、周波数拡張を検討する研究会を発足させた。今後、高速PLCが既存の無線通信に与える影響を討論し、2M~30MHzの周波数の利用を許可するかどうかを決める。

 将来的な利用許可をにらみ、メーカー側も製品化に向けた動きを早めている。2005年1月6日には、松下電器産業、三菱電機、ソニーの3社が、高速PLCで相互接続するための仕様を策定する団体の設立を発表した。

(安藤)



本記事は日経コンピュータ2005年2月7日号に掲載したものです。

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