パッケージソフトを導入する際に、装備する機能が自社の業務プロセスとシステムが機能にどれだけ適合し、どれだけズレがあるのかを分析・評価する手法。
ERP(統合基幹業務)システムなどの業務システムを市販のパッケージソフトを使って構築する際、パッケージが持つ機能と自社の業務プロセスが完全に合致するとは限りません。業務改革を行ってシステムに業務を合わせるのか、あるいは自社の業務プロセスに合うように追加開発して対応するかを検討しなければならないのです。
あまりにも追加開発が増えると、ソフトウエアのバージョンアップの際に多額のコストがかかってしまうなどパッケージ製品のメリットが薄れてしまいます。
自社の業務プロセスと導入を検討しているパッケージが、どれだけ適合(フィット)していて、どれだけズレ(ギャップ)があるのかを分析することを「フィットギャップ分析」と呼びます。
◆効果
事前に対応策を考える
フィットギャップ分析によって、企業が目指す業務プロセスに対してパッケージ製品の機能が適合しなかったり、不足していることを事前に把握できます。自社の業務プロセスに対して適合率が低ければ、追加開発コストが膨大にかかるので採用せずに独自開発したほうが得策という判断も考えられます。
これまでフィットギャップ分析は、担当するコンサルタントの属人的なノウハウに頼っているのが現実でした。この状況を改善するために、パッケージ製品を販売する企業は、分析手法を体系立てて実施できるような仕組み作りを始めています。SAPジャパン(東京・千代田)では、同社のERPパッケージソフト「R/3」の導入を支援するために「ASAP」とよぶ手法を提供しています。このなかにフィットギャップ分析を支援するツール「Q&Aデータベース」があります。「受注」といった業務プロセスごとの質問に答えていくとギャップのある個所を提示する仕組みです。これによって、経験の浅いコンサルタントでも分析できます。
「Oracle E-Business Suite」を販売する日本オラクルにも同様の仕組みがあります。
◆事例
自社で分析し費用削減
二輪車や四輪車のブレーキ関連部品を製造する日信工業では、ERPパッケージ製品を導入する際にフィットギャップ分析を自社のスタッフが実施しました。約100の業務プロセスにおいて、パッケージ製品の機能と合わないことが判明しました。大半が、取引先に提示する内示を決定する仕組みに関するものでした。重要なプロセスであったため、自社の複雑な内示方法に合うプログラムを追加開発しました。正確な見積もりは取っていませんが、システム会社にフィットギャップ分析を依頼すると数千万円はかかっていたと見込んでいます。