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人件費などの間接費を正確に把握するためのコスト計算手法。各種業務を工程別に細かく分類し、工程別・製品別・顧客別に配賦して、正確なコストを把握する。

 利益貢献度の大きい取引先は、どうしたら把握できるのでしょうか。

 例えば、ある卸会社が小売業A社と小売業B社の2社に対する取引の利益を比較するとします。ここで、売り上げから販売原価を差し引いて粗利を比較すると、A社もB社も同額だったとします。ところが、営業現場からは「B社は要求が多くて大変。手間の割にはもうからない」という意見が寄せられたとしたらどうでしょう。B社は、緊急の配送手配のほか、プレゼンテーションや教育サポートを頻繁に要求してくるというのです。

 そこで、こうした活動時間に人件費の時間単価をかけ合わせて、間接的な費用までも正確に配賦すれば、本当の利益貢献度を把握できます。

 このように活動時間をベースに間接コストを正確に割り出すのが「ABC(活動基準原価計算)」です。また、ABCのデータに基づいて業務管理を行うことを「ABM(活動基準管理)」と呼びます。

◆効果
本当のコストと利益が分かる

 ABCでは、業務を工程別に、目的によっては顧客や商品別に分解して、正確な原価を求めます。活動時間や回数は、業務日報の時間記録や、実際の活動を観察するなどして割り出します。

 こうした情報は、業務改善に役立てることができます。

 例えば、B社には確かに多くの活動時間が割かれ、実はA社に比べてもうかっていないことが判明したとします。実質赤字なら、B社との取引を縮小する方策もあり得ます。もしくは、B社向けの活動時間のうち、多くを占めるのが緊急配送だとすれば、ABCの数字を基にそれらの頻度を減らすように交渉するといった方策も立てられるわけです。

 ただしABC/ABMの数字を頻繁に算出することは、大きな手間がかかります。1年に1回、あるいは数年に1回といった間隔で、調査を実施するケースが一般的です。

◆事例
見えにくいコストを把握

 ABC/ABMは、流通業で早くから導入されています。例えば、1998~1999年に雑貨・衣料品卸のドウシシャや雑貨品卸の中央物産が相次ぎ導入しました。返品や検品といった業務別のコストを把握することで、従業員に返品業務を防ぐよう意識改革を迫ったり、取引先に対して業務省力化に理解を求めることに活用しています。

 資生堂も2003年にABC/ABMを導入しました。小売店への商品配送にかかわる物流業務を入荷や保管、こん包、発送など3000以上の工程に分類。工程別コストの数値を業務改善に活用しています。

井上健太郎 kinoue@nikkeibp.co.jp