通信回線経由で音声や映像などをやり取りして遠隔地間で会議を行う仕組み。音質・画質の向上や、安価な通信サービスの普及で従来に比べ使い勝手が良くなった。
昨年は、新型肺炎(SARS)やイラク戦争などで国際情勢が不安定な1年でした。海外出張に危険が伴う状況のなか、これまで以上に大活躍したのが「テレビ会議システム」です。
これ自体は古くからありますが、技術の進歩によって、一昔前とは一線を画するようになっています。会議室に据え付けて使う従来の機器に比べ、持ち運べるほど小型になりました。音質や画質も向上し、「CDに迫る音質」をうたう製品も出ています。
通信回線についても、従来は専用回線を予約するなど手間と費用がかかりましたが、今はADSL(非対称デジタル加入者線)といった安価な回線が使えます。多くの機器はIP(インターネット・プロトコル)に対応しており、一般的な社内ネットワークをテレビ会議と併用できます。
テレビ会議システムには大きく分けて、(1)カメラや通信機能を備えた専用機器、(2)パソコン上で動作する会議ソフト——の2通りがあります。前者は1台数十万円と高価ですが、音質や画質などの面で優れています。後者の場合、数千円で買えるカメラや安価なソフトも出回っています。
◆効果
出張費用を削減
テレビ会議の導入による最大の効果は、出張にかかわる費用の削減です。例えば10人が全国から集まって毎月会議を開く場合、往復の交通費が1人2万円だとすれば、年間では240万円にもなります。加えて出張手当や移動時間分の人件費もかかります。
もちろん、顔を合わせての会議のほうが相手に感情を伝えやすいことでしょう。イトーヨーカ堂のように、毎週、全国約180店の店長を東京に集めて店長会議を開く企業もあります。しかし、多数の店舗が全国に点在する小売業や飲食業では、責任者が頻繁に集まるのは困難です。
◆事例
50店で店長会議
家電量販大手のコジマは、昨年2月に約250ある全店舗と本社を結ぶ大規模なテレビ会議システムを導入。従来は年に数回程度しか店長会議を実施できていませんでしたが、現在はテレビ会議を使って週3回、全店長が出席する会議を開いています。各店舗に引き込む回線には安価なADSLなどを活用しています。
社内の会議だけではなく、顧客へのサービス提供にシステムを活用することも考えられます。昨年8月にドン・キホーテが深夜時間帯にテレビ会議システムを使い、離れた場所にいる薬剤師が医薬品を販売する取り組みを始めて物議を醸しました。それ以前から、語学学校はテレビ会議を使った授業に積極的。「お茶の間留学」を掲げるNOVAの受講者数は延べ10万人に上ります。